やまとごころ.jp

第87回

観光客誘致にSNS活用 国や自治体で取り組み加速

2018.04.11

近年、インバウンドを含む観光客誘致を進める上で重要視されているSNS。自治体でもFacebookやツイッター、インスタグラムなどの公式アカウントを開設し、インバウンド戦略に取り組んでいるところを多く見かける。中でも、風景やグルメなどをビジュアルで表現できるインスタグラムは言葉の壁もなく、外国人を対象としたインバウンド誘致において欠かせない存在となっているようだ。

3eb073671fd7f2d39590934348dd54e9_s

 

岡山県倉敷市、「インスタ映え」スイーツ企画でフォロワー獲得

岡山県では、自治体や観光団体が、インスタグラムを活用した観光客誘致に取り組んでいる。
倉敷市や倉敷観光コンベンションビューローなどで構成する倉敷市観光客誘致協議会は、倉敷国際ホテルのカフェラウンジをはじめ、市内の22店が参加するイベント「倉敷アフタヌーンティー」を実施。1月15日から3月15日までの2ヶ月間で「県産いちごと温かいメニュー」を共通テーマに、各店が趣向を凝らしたオリジナルメニューを提供した。この企画は2015年にスタートし、年2回開催。「kurashiki_afternoon_tea」のアカウントに、インスタ映えする色とりどりのスイーツを投稿するごとにフォロワーが増え、現在は1800人を超えている。

岡山県内有数の観光資源を持つ倉敷市は、2016年の11月にインスタグラムのアカウント「kurashiki_city」を開設した。有名な観光名所の写真やイベント情報を発信し、フォロワーは1000人を超えているが、Facebookのフォロワーが開設1年で約4000人になったのに対し、伸び悩む。単に定番の観光地を紹介するだけではフォロワーがつかないという課題が見えてくる中、旬で話題になりやすそうなネタを探すなど、試行錯誤でインスタ対策を進めている。

岡山県では、2016年度の外国人宿泊者数が前年比137.4%の22万3000人と急増しており、インバウンド誘致においてもインスタグラムをはじめとしたSNSの活用が必須となる。


京都府京丹後市は、SNSを活用したキャンペーンで「海の京都」をPR

日本海に面した京都府の丹後市では、「京丹後『旬の逸品』宿泊キャンペーン」を3月1日から6月30日まで実施している。「海の京都」京丹後市実践会議が企画したこのキャンペーンでは、対象となる市内21ヶ所の宿に宿泊すると、温泉の入浴料などが無料になるクーポン券がプレゼントされる。そのほかにも、SNSで京丹後の魅力をPRした宿泊客には京丹後米が贈呈される。15ヶ所の温泉や観光、飲食、物販施設が参画したクーポン券を活用してもらうことで、宿泊客の市内周遊を促し、SNSで市内の情報を発信してもらうことが狙いだ。春と秋の観光誘客が課題となっている同市では、閑散期の宿泊客増加や観光消費額につなげるために、SNSを活用した戦略が進められている。


長野県木曽地域、景観づくりとインスタ企画で観光客誘致

長野県木曽地域では「木曽路の眺望景観整備基本方針」を定め、地域ぐるみで眺望景観づくりに取り組むとともに、インスタグラム等のSNSを活用した情報発信を始めた。宿場町などの町並みだけではなく木曽路全体の眺望をよくすることで、観光客誘致につなげる狙いだ。木曽地域振興局は「歩ける中山道」整備事業を開始し、公式インスタグラム「歩こう中山道木曽路(WALK NAKASENDO KISOJI)」をスタートさせ、アカウント「Kisochi_offical」を開設。ハッシュタグ「#walk_nakasendokisoji」をつけて投稿することを呼びかけている。昨年にはフォトコンテストや、観光ガイドと共に中山道・木曽路を歩く「フォトウォーク」企画が開催された。フォトウォークでは、カメラマンが同行してインスタ映えするスポットをレクチャーするなど、SNSでの魅力発信に取り組んでいる。

一方で、すでに訪日外国人の投稿の多い「#nakasendo」や「#nakasendotrail」などのハッシュタグを、行政がスタートさせたアカウントにどう取り込んでいくかの課題もある。


政府は、若い世代の視点を取り入れたインスタグラムセミナーを開催

国土交通省は6日、インスタグラムによって半島地域の魅力を発信するセミナー「半島のじかん2018 in Tokyo」を開催した。地域資源を活用した半島振興を目的に、今年1月から2月にかけて、観光を専攻する大学生とインスタグラマーの2チームに分かれ、房総半島と伊豆半島の魅力をインスタグラムで発信。今回のセミナーではその成果発表やトークセッションが行われた。学生は「カラフル」「美味しそうな食べ物」「楽しそうにしている人が映っている」などの要素がキーポイントになるとして、これらを意識して撮影を進めた。若い世代の視点から切り出された新鮮なビジュアル表現は、セミナーに参加した自治体関係者にも刺激を与えたようだ。

 

これらの例を見ていると、SNSの中でもビジュアルがメインのインスタグラムは、インバウンドを含む観光誘致において、非常に有効なツールとなっているようだ。今後はただ単にSNSの公式アカウントを開設して観光情報の発信をするだけではなく、人目を引く方法や工夫が必要とされる。また、最終的に消費へと結びつけるためには、ハッシュタグや位置情報の活用も考慮に入れるなど、より高度な発信力が求められていきそうだ。