第36回
動物がキラーコンテンツになる? 外国人が押しかけてくる理由(後編)
2017.01.26
前編に引き続き、観光コンテンツとして注目されている動物で訪日客が訪れている事例を紹介していこう。動物園にいるような珍しい動物ではない身近な生き物を求めて、はるばる世界中から人々が集まってくる場所がある。 瀬戸内の小さな島が、ウサギの島として動画で話題に! 広島県の竹原市にある瀬戸内の島、大久野島では、ウサギを目的に外国人が増えているという。地元の竹原市観光協会に、どのような外国人が島を訪ねているかをうかがったところ、世界中の多くの国々からで、中国、台湾、香港、韓国の方が団体旅行、欧米系の方が個人旅行という傾向があるという。ほとんどが日帰り旅行で、ウサギとのふれあいと遺跡巡りが目的だ。 ところで、この島には、なぜウサギが多いのか? それは、1971年に近所の小学校で飼っていたウサギ(8羽)が飼えなくなって、大久野島に放したのがはじまりと言われている。外敵となるトビ、カラス、蛇が少なく、繁殖力があるために700羽にもなったのだ。 海外の方が、大久野島のウサギについてブログやYouTubeなどで情報発信をしたことで、海外のメディアに「ウサギだらけの島が日本にある」として話題となった。その後、日本や海外のマスコミも後追いで、多く取材に来られるようになった。広島県の観光連盟や竹原市も、積極的に海外のメディアに広報活動を行っている。 昨年から外国人対応を意識した受入整備も進めている。人と野生動物が大久野島で仲良く過ごせるように「ウサギからみんなへおねがい」というウサギとのふれあい方を記したチラシを、島内に掲示している。当初は、日本語だけだったが、外国人旅行者の増加に伴い英語も併記した。 また、島にある宿泊施設では、英語が分からないスタッフが、海外から来られた方とコミュニケ-ションがとれるよう各セクションに指さしで意思が通じるようなツ-ルを用意した。喫茶メニュ-は、英語表記のものを別に作成し、外国人旅行者が注文しやすいように配慮をしている。宿泊部門で、海外からの予約に対応すべく、新たにアゴダとエクスペディアの予約サイトを開設したのだ。 外国人が増えたことで、地域でも変化が起きたという。同協会の担当者によると、例えば、おもてなしの気持ちが大きくなったという声を聞くそうだ。さらに島内に英語表記が増えた。 また、以前は、海外の方が大きいバッグを持って来られて、置き場所に困っていた。大きな荷物を預かる場所がなかったからだが、そこで忠海の船着き場にある回漕店で荷物を預かるシステムができたのだ。 現在、島のレストランでは、新しく進めている取り組みもある。 昼食に多く利用されるレストランは、タコや魚料理がメインであったものを、海外の方のニーズにあわせて新たに肉料理をメニュ-に追加するようにした。現在は、メニュ-表から選ぶが、今後はメニュ-を画像と番号で表示し、券売機にも同じ番号を記すなど、簡単に注文できるシステムに移行する予定だ。さらにベジタリアン料理の開発・販売も検討している。 ウサギの島として、ピンポイントのニーズを捉えた好事例だろう。増加する外国人向けに地域も新しい工夫を施している。