【海外メディアななめ読み】海外メディアが紹介する日本の「Sakura」報道からわかる、変化する訪日客の花見へのイメージ
2019.04.24
今年も桜の開花時期にはハラハラさせられました。
私は、訪日スイス人向けの旅行会社(ツアーオペレーター)として、毎年2−3週間の訪日桜ツアーを企画しているので、桜の開花・満開予想は非常に気になるところです。東京では例年よりも早く桜が開花したものの、その後の冷え込みでなかなか咲き進まず、4月初めの京都や、数日後の姫路にお客様をご案内した際も開花状況は今一歩。「満開の桜を見ずに帰ってしまうことになるだろうか」と、桜情報と睨めっこした日々でした。
その後なんとか広島で満開を迎え、宮島では、てんてんと桜色に化粧を施した様子を五重塔との共演で楽しんでもらうことができました。
私は「風情があって綺麗だった」と大満足でしたが「そんなに本数が多くないんだね」という感想に、ハッとしました。外国人の方は「満開の桜」というと、むせるように咲き誇る風景を期待されるのでしょう。
英の「インデペンデント紙(The Independent)」では4月初旬、「日本の桜シーズン満開–壮観な写真と共に」という記事で、目黒川を覆うように咲く桜の風景写真が何点も発信されました。この記事では、日本ではお馴染みの桜前線を示した日本地図も掲載されています。
昨年末に「デスティネーション・オブ・ザ・イヤー」に日本を選んだ、米有力旅行雑誌「Travel+Leisure(トラベル・アンド・レジャー)」では、昨年の12月に「2019年に桜を見るベストプレイス-いつ旅行の計画を立てるべきか」という記事が掲載されました。ワシントンD.Cの桜祭りの情報と合わせて、日本列島の見頃の時期の基本情報が書かれています。年が明けた3月には、2019年の日本の桜の開花・満開予想を伝えました。
米富裕層向け旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)」も3月に、「日本で桜を見る12のベストスポット」という記事を掲載しています。奈良の吉野山、京都の哲学の道、秋田の角館、山梨県の河口湖、東京の代々木公園に、青森の弘前公園など、日本全国の桜の名所が、見頃の時期と合わせて紹介されています。
「海外メディアななめ読み」は、ちょうど2年前の4月「Sakura の世界進出」というタイトルのコラムからスタートしました。当時、日本への桜旅行は、地理的に日本に近いアジアやオーストラリアを中心に人気を集めており、欧米では、写真家などの一部の人々が足を運ぶに留まっていたように感じます。今では欧米でも日本の花見の認知度はぐっと上がり、日本人と同じような情報が求められているようです。海外メディアの記事ももはや「日本人は“Hanami”ということをするらしい」という記事ではなく、「日本で“Hanami”をするには、いつ、どこへ行けばいいのか」「今年のSakuraはいつ開花していつ満開なのか」を盛り込んだ内容へと変化しています。
とはいえ、Sakuraが世界進出を始めて数年です。桜を目指してやってくる訪日客は、いわば花見のビギナーです。それゆえ、旅行雑誌で見た風景そのままを期待し「桜の名所」と呼ばれる場所に集中してしまっています。今年日本で桜を見た人たちが、何気ない日常の場面に溶け込む桜や、ひっそりと佇む一本の桜など、Sakuraの様々な表情を目にし「来年はまた日本の別の場所、いわゆる名所以外で桜を見てみようか」と思ってくれることを願う2019年の春でした。