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~人民日報海外版から~

【人民日報】第75回 市場を奪い合う各国の農家 中国で輸入フルーツが大人気

2019.05.28

中国では中産階級が拡大を続け、輸入フルーツ人気が上昇中だ。グルメたちが喜ぶのは、大人気のチェリーだけでなく、変わった見た目のアボカド、強烈なにおいのドリアンなどだ。中国グルメの消費ニーズの拡大にともない、海外の農場主は大忙しだが、得られる利益は大きく、うれしい悲鳴を上げている。中国の輸入フルーツの昨今の事情についてレポートする。

 

チェリーに切り替える農家

サクランボは中国で生産されるのに対して、チェリーは主に米国、カナダ、チリなどの北米・中南米諸国で生産される。そのうち、中国への輸入量が最も多いのはチリ産チェリーだ。税関総署のデータによると、2018年は輸入されたサクランボ類の90%近くがチリ産だった。これは主に南半球のチェリーの収穫期が北半球と異なるためだ。

米国やカナダのチェリーは5〜8月に市場に出回り、ちょうど中国のサクランボと時期が重なってしまう。一方で、チリ産は11〜1月に出回り、中国の春節の時期に当たるとともに、中国国内で果物が品不足になる時期にも当たる。

チリのチェリーが中国で人気があるのは、中国とチリの貿易関係によるところも大きい。17年に両国は自由貿易協定(FTA)の深化協定に調印し、双方の製品の97%以上についてゼロ関税を実現した。チェリーもそのうちの1つだ。関税の減免の結果、チリ産チェリーはより安くなり、中国のチェリーファンもますます増えていった。

英国誌「エコノミスト」の報道によると、中国でチェリー需要が拡大すると、チリのサンフランシスコ・ロ・ガルセス社は世界最大のサクランボ類生産企業になった。生産量は過去15年で25倍増加したという。

また報道によると、中国ニーズの恩恵を被り、チリは18年に11億ドル(約1211億円)相当のチェリーを輸出し、輸出量は2017年の2倍になり、チリワインの輸出量の3分の2に迫ったという。

チェリー栽培の利益が他の果物の何倍にもなることから、違う果物を栽培していたチリの果物農家が次々とチェリー栽培に切り替えている。「中国の潜在的ニーズを受けてチリ産チェリーの輸出は拡大を続ける」と見込んでいる。チリ果物輸出協会(ASOEX)のチリチェリー委員会の報告によると、「2018〜2019年の輸出シーズンの第1週に、チリの極東市場(主に中国)へのチェリー輸出は前年同期比17%増加した」という。

 

アボカド輸入量が1万倍に

 2010年に中国の輸入量がわずか2トンだったアボカドは、2017年には3万トンを超え、注目されていないフルーツから大人気のフルーツへと変身した。海外メディアは、「これは主に中国の新興の中産階級が健康食品を好むことによる。彼らはアボカドの熱心な消費者だ」と伝えている。

経済が相対的に発達した北米、欧州、日本などの市場でアボカド需要が飽和状態に近づく中、世界の主要アボカド関連企業は中国市場の潜在力に次々に目を向けるようになった。

メキシコはアボカド生産量世界一で、世界の総生産量の約3分の1を占める。メキシコ経済省のまとめた統計では、17年にメキシコから中国へのアボカドの輸出額は2554万7000ドル(約28兆円)(1ドルは約110.4円)に上り、中国はメキシコにとって8番目のアボカド輸出先になった。

メキシコ産アボカド生産者・輸出梱包業者協会(APEAM)のラモン・パス顧問は、「中国市場は非常に速いペースで成長している。私たちの達成した数字から非常に大きな成長の様子がうかがえる」と述べた。またパス顧問は、「中国のニーズの大部分が上海、北京、広州などの大都市の消費者によるもので、海外旅行をする中国のミレニアル世代も市場の伸びを後押しする」との見方を示した。

 

タイとマレーシアがドリアン市場を奪い合い

タイはドリアンの重要な産地だ。タイメディアの報道によれば、毎年タイ産ドリアンの60%以上が海外に輸出され、特に中国などの消費者に人気があるという。

2018年4月17日、タイのゴールデンピロー・ドリアンが天猫(Tmall)のスーパーに登場すると、1分間に8万個が売れ、全部で20万キログラム売れたという。タイの人々からは、「中国のグルメのパワーはすごい」と歓声が上がっていた。

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タイのソムキット副首相もセールスマンに変身し、「タイにはバナナもあり、たくさんの農産品もあるし、コメもある」とアピールした。タイ商工会議所国際貿易委員会のバントン副委員長は取材に答える中で、「中国のバイヤーは買い付ける数量が多いだけではなく、価格も引き上げてくれる。果物農家、バイヤー、輸出企業がみんな利益を上げており、中国市場に感謝している」と述べた。

ドリアンは中国のグルメに高い人気があることから、マレーシアもパイを奪いたいと考えるようになった。17年に広西チワン族自治区南寧市でマレーシアドリアン祭が開催され、約16万5000人の来場者が争うようにして列に並び、マレーシア産の質の高いムサンキング(猫山王)ドリアンを味わった。

ドリアンに詳しいリンジー・ガシックさんは米ABCの取材に答える中で、「中国のドリアン需要による影響を自分の目で見た」と言い、次のように話した。

「2012年に初めてドリアンについて取材した時は、ドリアンバブルがはじけたばかりで、ドリアンは儲からないという声をよく聞いた。ドリアン畑をパーム油のためのアブラヤシ畑に切り替える農家もいたくらいだ。今や農家はアブラヤシを切り倒し、ドリアンを植え始めている」。