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ラグビーW杯に湧く日本列島。海外からのラグビーファンも日本各地へ

2019.10.07

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9月20日に開幕したラグビーワールドカップ。日本も第3戦となるサモア戦を激戦のうえ勝利、念願の決勝トーナメント進出に向け大きく前進し、ますます盛り上りをみせている。

ラグビーワールドカップ日本大会は、日本全国12都市・12会場で48試合が実施されていることもあり、ラグビー観戦をきっかけに日本を訪れているラグビーシャツを着た外国人観光客の姿を、あちらこちらで見かける。

 

イギリスからは7万人、オーストラリアからは4万人が日本へ

開催期間は9月20日~11月2日の44日間。この期間、ラグビー観戦絡みで日本を訪れる海外からの観客数は参加国であるヨーロッパ、オセアニアからの観光客を中心に約41万人、ファン層は富裕層が多いとされている。

[caption id="attachment_34745" align="aligncenter" width="597"]70756311_10218073391657912_2823605100612681728_n ▲ラグビーを放映しているパブは外国人で賑わった[/caption]


開催地となった地方都市の様子はどうなのだろうか。札幌ではラグビーワールドカップ開幕式の翌日9月21日にはオーストラリア対フィジー戦、22日にはイングランド対トンガ戦が札幌ドームで行われたことで、中心市街地は海外からの観光客で溢れかえった。

[caption id="attachment_34746" align="aligncenter" width="573"]71374405_10218073392017921_1373553072659234816_n ▲オーストラリアからのラグビーファンで埋め尽くされた店も[/caption]

大通公園などで開かれている食の祭典『さっぽろオータムフェスト2019』にも大勢の外国人客が訪れ、北海道の味覚を堪能。札幌一の繁華街となるすすきのは、どこのお店に入ろうかと外国人観光客が行き来し、その数は日本人の姿よりも多い程だった。それもそのはず、開催期間中、日本を訪れるイギリス人は7万人(含む北アイルランド、ウェールズ、スコットランドよりの来日)、オーストラリアからは4万人がやってくると、それぞれの政府が発表している。

[caption id="attachment_34740" align="aligncenter" width="414"]70637764_10218077943731711_6039978517993619456_n ▲手作りのコスチュームに身を包み、会場へ向かうイングランドファン[/caption]


札幌ドームの周辺や会場内は、イングランドの国旗などをモチーフした揃いの衣装を着る人々がいたり、お祭りを楽しむかのようなウキウキとした雰囲気に包まれた。イギリスから学生時代の友人ら6人で日本に来たというジョージ・ヒックマンさん(20代、金融)は「前々から来たいと思っていた日本でラグビーワールドカップが開催されるとあって、皆で来ました。開幕して他の人が来て混む前に広島、大阪などを旅行してきました」とコメント。

[caption id="attachment_34738" align="aligncenter" width="630"]71093752_10218077944971742_4214471298111242240_n ▲家族、友人などグルーブで訪日、ラグビー観戦している人達が多い[/caption]


オーストラリアから70代の両親を連れ、夫と4人で訪れていたメリッサ・ロジャーズさん(40代、図書館司書)は「私自身はラグビーにはそこまで興味はありませんが、父親と夫はラグビーファン。私は日本で日本食を食べることが楽しみです」と語った。 

 

滞在期間が長く、富裕層も多いラグビーファン

大会開催前、ラグビー観戦に訪れる人の特徴として、「日本初心者が多く」「アルコールを大量に消費する」「ワールドカップ開催期間が長いため滞在期間も長く、日本ならではの体験を求める」「ベジタリアンやタトゥーがある方もいる」などが挙げられていた。

実際、イングランド戦が行われた会場近くのコンビニや、会場内にはビールを求めるための長い列ができていた。試合翌日の札幌のローカルテレビでは「札幌のビールが足りなくなるのでは」とのコメントがあった程、大量のビールを消費。しかし、フーリガンと呼ばれ大騒ぎをする人もいるサッカーファンに比べ、ラグビーファンは総じてスマート、きれいなクィーンズ・イングリッシュを話している人が多い。ラグビーの発祥がパブリック・スクールと呼ばれる私立学校であり、今でもそうした学校で行われていることがやはり関係しそうだ。

前回のイングランドでの開催の際には、「海外観客1人当たりのチケット購入枚数は平均2~4枚」「平均滞在日数は、遠方からの旅行者が14日間、欧州からの旅行者が3~4日間」であったか、今回はどうなのだろうか。欧州、オーストラリアからの訪日客に10組にきいてみると、12~14日間が3組、3週間が4組、5週間が2組、6週間滞在するという人達も1組いた。そのうち、これまで日本に来たことがあるのはわずかに2人だった。

実際にどんな所を回るのかと尋ねると、よく出てくる地名が欧米人によく知られている広島だった。一般的にインバウンド客に人気の高い京都にも行くのかをイングランドの試合観戦に神戸に行くというイギリス人に訊ねてみると、「京都? そこには何があるのか」と逆に聞き返されることも数回。「ワールドカップラグビーの観戦目的で訪れているので、日本のことはあまり知らない」との事前情報を実感する返答だった。

札幌を皮切りに、広島、長崎、熊本、岡山、横浜、東京を3週間かけて回ったというリチャード・コリンズさんはスコットランド人(50代、システムエンジニア)。「ラグビーの試合は2試合を会場で観戦しました。日本で絶対行きたかったのは広島と長崎。そこは行かねばならないと感じていました。たまたま知り合った日本人から教えてもらった数多くのお祭りが集った熊本でのイベントは本当に面白かった! 日本は電車のシステムもわかりやすく、とても旅がしやすかった」

[caption id="attachment_34753" align="aligncenter" width="565"]DSC04492 ▲日本人が楽しむローカルな店は、外国人観光客からも人気[/caption]


妻や友人と東京、札幌、大阪、京都、神戸、広島を3週間旅したニック・バネットさん(40代・カメラマン)は、「日本はハイテクな技術と、伝統的な文化の両方を楽しめる国。日本のどこを旅していても“安全”であることも本当に素晴らしい。もし私の娘が日本を旅行したいと言っても安心して送り出すことができます」とコメント。

ラグビー観戦をしながら5週間かけて日本を回っているドイツ人のイリオナ・カイザーさん(30代、人材会社勤務)は、「日本人は親切でどこでも誰かが助けてくれます。日本の歴史・文化を感じさせる建物がどこの町にもあるのも魅力です」と語ってくれた。

 

イベントをきっかけに訪日する人々への情報の届け方

今回のラグビーワールドカップで、みえてきた課題もある。
会場内へはドリンクや食べ物は持ち込み禁止であったが、購入する場所は限られており、トイレへの列と合わせ、常に多くの人が待たねばならぬ状態となっていた。札幌ドームへ向かう駅からの道で感じた、和気あいあいとしたお祭りを楽しむ雰囲気は消え、疲れた表情で列に並ぶ人も多かった。

71097881_10218091958282066_5227025029442568192_n▲食べ物やドリンクを買い求める列と、トイレに並ぶ長い列


長いこと待ち、やっとカウンターに到着すると食べ物は売り切れに…。「お腹が空いてるんだけど、どこで食べたらいいか分からず。会場に入ったら食べ物あるよね」と言っていたイギリス人の青年が食べ物にありつけたか、長く渦巻いた列を見ながら気になった。(なお、大会組織委員会は9月23日から全会場で食べ物の持ち込み規制を緩和、この札幌ドームでの試合を最後に、食べ物は持ち込めるようになった)。

会場近く、ほぼ同じロケーションにあった2軒のラーメン店では、1軒には大きなラーメンの写真が看板となっているが店名は日本語のみ、その店に入っていく外国人の姿はほとんどおらず。もう1軒の小さな店構えのラーメン店には店の看板の下に手書きで英語のサインで「ラーメンを食べることができる」ことが書かれており、そちらはラーメンを食べようと並ぶ外国人の姿が外にまで伸びていた。

[caption id="attachment_34744" align="aligncenter" width="630"]70503825_10218073392417931_8428493510147047424_n ▲札幌すすきのラーメン横丁にも外国人客が列をなし、いずれも数十分待ち状態が続いた[/caption]


コンビニでビールを求めるために並んでいる外国人の中には、日本のお酒を試してみたいと話しているものの日本語表記のラベルのため日本酒を見つけられず断念し、結局わりやすいビールを購入している人の姿があったし、来店者の多さを見込んで店舗側が用意した唐揚げはオーダーされることなく並んでいた。手書きの英文ポップで「すっきりと飲みやすい日本酒」「ベストセラーの唐揚げ」などの表記があったら、購入する人も増えていたに違いない。


スポーツイベントをきっかけに来日した彼らは、日本を旅することで日本を知りたいと思っている。そんな彼らにどうやって情報を届けるか。ちょっとした工夫一つでビジネスチャンスは広がる。2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年ワールドマスターゲームズ関西と続くスポーツイベントに向け、しっかりと取り組んでいきたい。

 

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