中国最大のEC商戦が繰り広げられる「独身の日」まであとわずか。昨年はEC上位2社で6兆円を売り上げた11月11日に、今年も注目!
2019.10.15
中国では11月11日を「独身の日」と呼び、毎年一斉にセールが行われています。中でもアリババグループ(以下アリババ)は、独身の日を一大商戦日に昇華させたことで知られ、前日には世界的な有名人を招いた「天猫双11狂歓夜」という盛大な音楽イベントを開催するなど、話題を呼んでいます。昨年は1日で6兆円を売り上げたという「独身の日」について、昨年の数字をもとに解説します。
中国最大の販促イベントに発展した「独身の日」
独身の日とは、中国で「光棍節(こうこんせつ)」と呼ばれており、11月11日にお祝いをする日のことを指します。独身者を連想させる「1」が4つ並ぶことから、1993年に南京大学の学生たちがこの日を独身者の記念日としたことが始まりで、その後一般の人々にも広まっていきました。当初は独身の若者たちが集ってパーティーを開いたり、プレゼントを渡したりする日となっていましたが、2009年に中国のEC最大手のアリババが大規模なセールを始めたことから、今では中国最大のEC商戦の日となっています。中国ではこの日に行われる販促イベントを「双十一」「双11」や「W11(ダブルイレブン)」などと表記しています。
中国EC大手2社の独身の日の取引額は、合計で約6兆円!
当初はアリババを筆頭とした大手ECサイトが販促イベントを行う日でしたが、現在では百貨店やスーパーなどでもセールが行われるようになり、年々その規模は拡大しています。中国のECサイト市場では、アリババが運営する中国最大手の天猫(Tmall)と、第2位の京東(シンドン、JD.com)が、シェアの8割を占めています。2018年における独身の日の取引額では、最大手の天猫が前年比27%増で2135億元(約3兆6200億円、1元17円換算)を記録し、伸び率は鈍化したものの、過去最高額に達しました。開始からわずか2分5秒で100億元(約1700億円)を突破したことが話題となり、最終実績はセールを開始した10年前と比べるとおよそ4000倍以上の数字となっています。一方、二番手の京東の総取引額は1598億元(約2兆7100億円)で、こちらも前年比25%増と大きく成長しています。
ちなみに、日本国内における楽天の2018年のEC流通総額は約3兆4000億円です。アリババの独身の日の取引額(約3兆6200億円)が楽天の1年間の数字に匹敵することからも、この1日の取引額の規模を計り知ることができるでしょう。
237のブランドが、独身の日の取引額で1億元(17億円)を達成!
昨年の独身の日に、天猫に出店した18万ブランドのうち、1日の取引額が1億元(約17億円)を達成したのは、ダイソン(Dyson)、エスティ ローダー(ESTÉE LAUDER)、ロレアル パリ(L'Oreal Paris)、ギャップ(Gap)、ナイキ(NIKE)、アディダス(adidas)など、237ブランドありました。こうしたブランドは天猫で「1億元倶楽部」と呼ばれています。そのうち、8ブランド(アップル、小米、華為、美的、ハイアール、ナイキ、アディダス、ユニクロ)は、なんと1日で10億元(約170億円)を達成したそうです。1億元を達成した日本企業はユニクロ、パナソニック、資生堂などです。ユニクロは昨年、開始後35秒で1億元を達成したことや、女性服部門で1位を獲得したことでも話題となりました。アリババでは、オンラインとオフラインを融合した020戦略「ニューリテール」にも力を入れており、ユニクロはこの(ネットで注文した商品を実店舗で引き取ると割引になる)戦略を先駆けて導入したことが、独身の日の売り上げ拡大につながっているようです。
「独身の日」の越境ECサイトでは、国・地域別の流通総額で日本が1位!
独身の日は、越境ECサイトを出店する日本企業にとっても大きなビジネスチャンスとなります。2018年の独身の日には、1万8000ものブランドが天猫の越境ECサイト「天猫国際」に参加し、国・地域別の流通総額で日本が1位を獲得しました。次いで2位アメリカ、3位韓国、4位オーストラリア、5位ドイツの順となっています。また、輸入ブランドの流通総額ランキングでは、1位から順に、「Swisse(サプリメント)」「Moony」「花王」「Aptamil(粉ミルク)」「Bio Island(子供用サプリメント)」の順となっています。商品カテゴリーごとの流通総額は、1位から順に健康食品、粉ミルク、フェイスマスク、紙おむつ、エッセンス、ベビー用食品、乳液、洗顔料、メイク落とし、化粧水となり、美容や健康、乳幼児用品が上位を占めていることがわかります。
まとめ
天猫や京東では近年、独身の日のキャンペーンを前倒しで行なっているそうです。年々盛り上がりを見せる一方で、定番化されたセールに消費者がむやみに動かなくなったことや、中国でのネット人口が頭打ちに近づいているという点でEC市場の成長鈍化が始まっているとされているからです。とはいえ、中国全土で購買意欲が高まる独身の日は、依然として日本製品をアピールする絶好の機会となり、中国からの観光客を誘客するインバウンド関係者にとっても注目すべき日となっています。今年で11年目を迎える独身の日にはどんな話題が飛び出すのか、期待が高まります。