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日本人シンガーを応援する海外アニメファン。訪日中はライブ鑑賞やアニメ舞台の聖地巡礼も

2020.01.20

私が運営する西荻窪の民泊に、年に数人は必ずと言っていいほどアニメ好きのゲストがやってくる。その理由の一つは、近隣にアニメ関連施設があることではないかと感じている。

例えば、宿泊場所から徒歩で行ける距離の場所に、アニメーションの歴史を知ることができる杉並アニメーションミュージアムがあるが、ここのwebサイトは、英語、中国語、韓国語、フランス語の4カ国後にも対応している。

また、西荻窪の隣の吉祥寺界隈には、アニメ好きには外せないジブリ美術館がある。「千と千尋の神隠し」や「ラピュタの城」など、宮崎駿アニメの殿堂である。ちなみに「ジブリ」は、英語で「ghibli」と書く。イタリア語で「サハラ砂漠に吹く熱風」という意味だ。正確には「ギブリ」と発音する。そのため、海外のゲストに「ジブリ」といっても通じない。不思議に思って調べたところ、宮崎駿監督が、ghibliを間違えて「ジブリ」と発音したのが始まりらしい。外国人にはギブリ・ミュージアムと言ったほうが通じる。

  

海外のアニメファンが注目する日本人女性シンガーがいる?

昨年の秋、アニメ好きのアメリカ人の女の子から、Aimer(エメ)という女性シンガーのライブのチケットをもらった。

Aimerは2011年にデビューした女性シンガー、年齢や誕生日などのプロフィールは公開しておらず謎も多い。2019年1月時点で、シングル17作、オリジナルアルバム4作、ミニアルバム2作、ベストアルバム2作をこれまでリリースしているほか、2019年10月~2020年3月にかけて、北海道から福岡まで全国17カ所で、“rouge de bleu”というホールツアーを開催している。

▲AimerオフィシャルWebサイト

私は、このツアー初日 10/31に市川市文化会館で行われたライブに足を運んだ。ライブではホールに彼女の独特な倍音(バイオン)の声が響き、独特な世界観を醸し出していた。あれほどの声の持ち主は、世界でもそう多くはないだろう。かなりの実力派の若手ボーカリストだ。

[caption id="attachment_36548" align="alignright" width="225"] ▲Aimerのコンサートツアーのポスター[/caption]

ところで、なぜ、私が先述のアメリカ人の女の子からAimerのチケットを譲ってもらったのかというと、彼女は我が家に泊まることになっており、彼女が到着する2週間前にチケットが届いたので預かっていたのだ。

ところがその女の子は、日本を旅行している最中に体調を崩してしまい、ライブを見ることなく、途中で帰国することになったのだ。そこで、是非代わりに見に行ってほしいと譲ってくれたのだ。

実は、Aimerのライブチケットに関して、こんなこともあった。

我が家に宿泊することになっていたアニメ好きのアメリカ人学生のアダム君から、事前にAimerのチケットを購入して欲しいとリクエストがあったのだ。チケットの先行予約など、いろいろと手をつくしたが、一瞬で完売する人気ぶり。結局、リクエストにこたえることはできなかった。

実際に私がAimerのライブ会場に行ったときも、Aimerが歌う曲は日本語の歌中心にもかかわらず、外国人のオーディエンスも少なくなかった。英語、中国語、いろいろな言語の会話が聞こえた。

なぜ、彼女がこんなにも海外から注目されているのだろうか。

 

インターネットの普及により、飛躍的に世界に広がるアニメ

アダム君が日本に来た時に、そもそも日本に来ること自体が初めてなのに、なぜAimerのことを知っているのか聞いてみた。その答えは、アニメだという。

海外では、アニメ番組はもはやテレビで観る時代ではないようだ。インターネットを介して世界中の映像を楽しむ。海賊版なのか正規版なのかは定かではないものの、チャンネルの多様化が進んでいる。さらに、それらを見たいタイミングで観る、まさにオンデマンド化の時代だ。

また、アニメの主題歌として使われると、その曲を通じて歌手の注目度が一気にあがる。そしてそのアーティストの他の曲を聴きたくなり、YouTubeに名前を打ち込めば様々な楽曲を聴け、気に入ればチャンネル登録もできる。

アダム君がAimerの曲を知ったのは、アニメ「機動戦士ガンダム・ユニコーン」だった。それ以降Aimerの曲が気に入り、彼女の曲をYouTubeで聴くようになったそうだ。私はAimerのコンサートに行く前に予習すべくAimerの曲をYouTubeで聞いたのだが、彼女の楽曲に対して英語のレビューがいくつもあった。納得である。

 

アニメが日本文化に興味を持つきっかけに

ところで、実はアダム君からは、Aimer以外のコンサートのチケット入手もお願いされていた。the pillows(ザ・ピロウズ)という3人組のロックバンドだったが、こちらはチケットをゲットすることができた。アダム君は「skech book」というアニメの主題歌を歌っていたことをきっかけに知り、その後好きになっていったようだ。

アニメをきっかけに、聖地巡礼として、ロケ地などを旅する人が増えている。実際にアダム君は、今回の日本の旅の最中に、山登りとともに聖地巡礼を楽しんでおり、アニメ「ガールズ&パンツァー」のロケ地、茨城県の大洗を訪ねていた。このアニメは、女子高校生が戦車を操り、高校対抗戦をするアニメだ。茨城県大洗町も「ガールズ&パンツァー」のロケ地として、外国人に押し出しているほど。

アニメは、インターネットにより国境を越えたことで、外国人向けに、フィギュア、コスプレ、ロケ地、音楽、ゲームなど、クールジャパンのさまざまな「きっかけ」になっているようだ。今後、どんな広がりを見せるのかが楽しみだ。