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航空路線誘致に欠かせない視点とは? 日本の空をとりまく状況をJNTOデータから読み解く

2020.01.27

インバウンド集客に直結する国際航空ネットワーク拡充。日本政府観光局(JNTO)が実施した「国際航空路線の誘致促進に関する調査結果」を基づき、市場横断プロモーション部の小林大祐氏に国際線誘致に必要な視点についてお話しを伺った。世界と日本における航空市場のトレンド情報やLCC市場の成長などをお伝えした前編に続き、後編では世界のエアポートセールスを成功させるための要因と課題などについて見ていく。

 

世界のLCCトレンドから見る、日本のインバウンドの可能性

先ほど世界のLCC市場の成長について少し触れたが、詳述すると2000年以前には北米でしか見られなかったLCCは2000年以降ヨーロッパで一気に広まり、アジアでも2010年以降急速に広まってきた。日本のインバウンドに大きく影響するアジアのLCCに焦点を当てると、ナローボディ機の航続距離が長くなったことから、東南アジアから東アジアを横断するLCC路線が急速に増えてきている。現在は東南アジアから中国、韓国への就航が多いが、JNTOは今後、東南アジアからのLCCを日本に誘致する動きを推進していくという。

 

[caption id="attachment_36732" align="aligncenter" width="630"]                                                             出典:JNTO「国際航空路線の誘致促進に関する調査結果」[/caption] [caption id="attachment_36733" align="aligncenter" width="630"]                                                             出典:JNTO「国際航空路線の誘致促進に関する調査結果」[/caption]

 

インバウンド誘致に欠かせない「エアポートセールス」の成功要因と課題

「エアポートセールス」とは、空港や自治体によるマーケティングおよびプロモーション活動のことで、インバウンド誘致には欠かせない取り組みとなる。JNTOはインバウンド誘致を積極的に行う空港や自治体に対するアンケートを行い、国際線就航の拡大に成功した要因を調査した。調査結果からは、空港の取り組みによる成功要因が明らかになったと同時に、課題も浮かび上がった。

まず、主な成功事例には(1)長年の信頼関係(2)旅行需要の創出(3)継続的な需要見込みの提示(4)インセンティブ(5)有利な地理的条件、という5つの要因があったと考えている空港関係者が多いことがわかった。

 

[caption id="attachment_36734" align="aligncenter" width="630"]                                                             出典:JNTO「国際航空路線の誘致促進に関する調査結果」[/caption]

 

この中でも特に、長年の信頼関係に基づく誘致活動が奏功したパターンが多く、その他にも現地の旅行会社と密に連携し、商品開発を依頼して需要を創出するなどの取り組みを行っている空港もあった。しかし、こうした信頼関係の構築だけでは十分でなく、データに基づいた継続的な需要予測を分析・提示して初めて実現するということも忘れてはならない。さらに、インバウンドだけでなく、アウトバウンドの需要をアピールすることも重要なポイントとなっているようだ。

一方で、施設・設備の充実、人材の確保、他航空との差別化などが課題として浮かび上がった。国際線誘致と同時にCIQ(税関、出入国管理、検疫所)スタッフの配置や給油設備の充実、グランドハンドリング(空港業務スタッフ)の増員といった受け入れ体制を強化しなければ、いざ就航の見通し立ったとしても見送らざるを得ないという事態が起きかねないということだ。

 

海外の航空会社は日本への就航で何を重視するのか?

海外の航空会社は、日本路線の就航においてどのような点を重視しているのだろうか。JNTOでは海外の航空会社と販売代理店10社にアンケートを行っている。その調査結果によると、日本への国際線就航を検討する際に重視する点についての質問に対し、7社が「航空利用者数」、2社が「インセンティブ・補助金」、1社が「近隣地域の観光地としての魅力」と回答した。この他にJNTO海外事務所が現地の航空会社へヒアリングを行ったところ、アウトバウンドを含む航空需要や空港の発着枠の確保、グランドハンドリング業者の紹介や契約サポート、空港から市街地へのアクセスの良さ、PR活動やマーケティング支援などを重視していることがわかった。

地方自治体や地方の空港が、海外の航空会社の就航や供給拡大が見込めるかどうかを見極めるためには、各航空会社の機材発注状況を見るという手段もある。JNTOは、航空会社別の保有機材と、発注状況のデータをまとめているため、こうした資料をエアポートセールスの交渉材料にすることをおすすめしたい。また、陸路の交通手段が発達している日本では、新幹線やバスで地方をめぐるインバウンド旅行者も多いため、観光庁が発表している都道府県別の宿泊旅行統計で、ターゲットとする国・地域別の宿泊者数を提示することも有効なセールス材料となる。

 

まとめ

JNTOの調査結果を追って見ていくと、需要がないところへ闇雲にセールスをしても国際線誘致の実現は難しいということがわかった。それと同時に、客観的なデータに基づくエアポートセールスがいかに効果的かということが明らかになった。空港の国際線誘致には、独自のマーケティングやPR活動のみならず、JNTOのサポートやネットワーク、資料もフルに活用することもが重要であるということを念頭に入れておきたい。

 

『第3回 日本路線誘致促進フォーラム』

JNTO会員向けに、国際航空ネットワーク拡充を目指す地方空港や自治体、地域観光団体向けのフォーラムが開催されます。詳しくは下記にお問い合せください。

日時:2月10日(月)
会場:ホテルメトロポリタン(池袋)
問い合わせ:第3回 日本路線誘致促進フォーラム 事務局 
Email:sky@jnto.go.jp
Tel:03-6691-3893
担当:石川