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新型コロナウイルス:各国の対応まとめ---感染リスクの高い日本からの旅行者へ厳しい措置

2020.02.26

世界的に感染が広がる新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)。日本は感染リスクの高い国として、各国が措置を取る動きがある。2月24日現在わかっている訪日旅行に対する動きをまとめた前編に続き、後編では日本からの入国に対する動きをお届けする。(やまとごころ編集部:外島美紀子)

 

世界のメディアも注目したクルーズ船での隔離策

日本のメディアばかりでなく、ダイヤモンド・プリンセス号での14日間の隔離は世界のメディアも注目し、連日トップニュースでの報道が続いていた。25日、韓国やイタリアでの感染拡大が大きく取り上げられるようになり、やっと彼らの関心が日本から少し離れたように見える。

ダイヤモンド・プリンセス号は英国船籍であるため、旗国主義に基づき英国の法律が原則適用されるため、WHOが1月30日に緊急事態を宣言した後も、日本政府はダイヤモンド・プリンセス号が日本の領海に入るまでは措置を取ることができなかった。国際法上の制約があることや、明確な規定が存在しないことも対応を難しくさせ、何より、これまで世界でも例のない大型クルーズ船での感染拡大防止のための対応にあたることは困難を極めていたことは間違いない。

ダイヤモンド・プリンセス号からオーストラリア政府が用意したチャーター便で退避した乗客のうち、2人にウイルス感染が確認されたことを、オーストラリア当局が21日明らかにした。また、ロシアの非常事態省の飛行機で帰国した8人のロシア人の3人や、イスラエルに帰国した人にも、新型コロナウイルスの感染が確認されている。いずれも日本で行われた検査では陰性だったとのことだ。

国際世論はダイヤモンド・プリンセス号で感染が拡大したことで、日本政府がクルーズ船での感染防止に失敗したばかりか、ウイルスを培養させ封鎖したことで感染者を広げる措置をとっていると批判。各国がチャーター機などで退避させた自国民を、そのまま帰宅させずさらなる隔離措置をとっていうなかで、陰性判定を受け下船した乗客を、公共交通機関を使い自由に移動させた日本の対応に対しても、大きな疑問を投げ掛けていた。

 

【イギリス】英国籍ダイヤモンド・プリンセス号

妻と共に乗船していたイギリス人のDavid Abel氏は、FacebookやYoutubeを通じて、船内の様子を発信。狭い船内から配信される彼のYoutubeは世界中から多くの人が視聴し、自国の言葉で十分な情報が与えられないことや、配られる日本食に偏りがちな食事が続き、イギリス人の多くが朝食時に食べる「シリアルが欲しいだけなんだ」と訴える姿は人々の同情を集めた。
イギリスでは「ダイヤモンド・プリンセス号での隔離は失敗だった」とする専門家らの意見をメディアが連日報じる中、政府がチャーター機を出したが、船内から情報を発信していたDavid Abel氏は夫婦ともにコロナウイルスに感染してしまい、現在日本で治療を受けている。

そんなイギリスでは、日本を含むアジアの9つの国と地域(中国本土、タイ、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、香港、マカオ)からの帰国者に対し、帰国後14日以内に咳や発熱、息切れなどの症状がある人は外出を控え、直ちに医療機関に連絡するようアドバイス。学校によっては、これらアジアの国へ渡航した生徒はもちろん、家族が空港トランジットも含めこれらのエリアを訪問した場合、さらにこれらのエリアからの渡航者の訪問を受けた・接触した家族がいる場合も14日間学校に来てはいけないという通達を出している所もある。

一方、イギリスを代表する新聞の一つデイリー・テレグラフは、日本でコロナウイルス発症例が増加するにつれ「日本へ旅行することは大丈夫だろうか?」と尋ねる旅行者が増えてきていることを伝えると共に、いつもは多くの人でごった返している京都の人気スポット嵐山の竹林も今はガランとしており、「京都を訪れるなら今がチャンス。 “empty tourism(人がいない旅)”を味わえる」と紹介している。

 

【イスラエル】入国を禁ずる国に日本を追加

イスラエル政府は、日本と韓国での新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、両国を出国してイスラエルに到着まで14日たっていない外国人渡航者の入国を24日以降認めないことを発表した。両国から帰国したイスラエル人に対しては14日間の自宅待機を義務付けた。

イスラエルの聖地エルサレムを団体旅行で訪れた韓国人旅行者18人が帰国後の検査で新型コロナに感染していたことを重視。22日韓国から到着した韓航空機に搭乗していた188人のうちイスラエル国籍者11人だけが入国を許され、その他の外国人は入国を拒否されている。

また、ダイヤモンド・プリンセスから下船し、イスラエル政府が用意したチャーター機で帰国したイスラエル人の女性の感染が21日になって確認されたことなども今回の措置に影響しているとみられる。

イスラエルでは既に中国、香港、マカオ、タイ、シンガポールからの外国人の入国を禁止している。

 

【イラク、クェート、サウジアラビア】日本からの入国を当面禁止

イラク保健省は25日、新型コロナウイルス対策として中国、イランからのイラク入国の禁止を当面の間延長するとともに、日本、韓国、タイ、イタリア及びシンガポールからの外国人の入国も当面の間禁止することを発表した。

クェートも新型コロナウイルス対策として、過去2週間に滞在歴がある者に、査証ないし滞在許可証を取得していたとしても,国籍を問わずクウェートへの入国を禁止する対象国に日本を加えた。

サウジアラビアも新型コロナウイルス拡散のおそれがある国として、中国、イラン、イタリア、韓国、日本、シンガポールからの観光ビザによるサウジ入国を一時停止している。

 

【その他の国々】日本からの入国者に厳しい対応

太平洋の島国ミクロネシア連邦、キリバス、サモア、ツバル、ソロモン諸島、コロモでは、日本を「高リスク国」と認定。感染の危険の少ない国に一定期間滞在してからでないと入国を認めないことを発表した。サモアでは、さらにウイルス検査の結果の提示も求めるという。

ブラジル保健省も、日中韓などアジアからの渡航者について、発熱やせきの症状がみられる人で重症の場合は強制的に隔離する対応を取るという。

インドネシア保健省は21日までに、発熱やせきの症状のあった、日本人を含む118人の入国を拒否したことを発表している。

サウジアラビアの疾病予防管理センター(CDC)は25日、自国に住むサウジアラビア国籍の者、およびサウジアラビアの居住外国人に対して、新型コロナウイルス拡大期にあると見込まれる日本とイタリアへの不要不急の渡航については延期を推奨する旨を発表した。

 

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