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【コロナに負けない観光地の取り組み】事業者支援や世界の京都ファンに向けた動画配信など様々な取り組みを展開 ---京都DMO

2020.05.01

世界中から観光客が集まり、オーバーツーリズムが問題となっていた京都でも新型コロナウイルスの影響により状況は一変。嵐山や祇園でも観光客の姿が消え、小規模のゲストハウスでは経営の危機に瀕しているところも多い。こうした危機的状況を受け、京都市観光協会(DMO KYOTO)では、国が緊急事態宣言を出す前から、京都市と連携しながらいち早く支援策を開始していた。観光事業者を対象にした補助金の創設をはじめ、市内のすべての観光事業者を対象にした無料のオンラインセミナーの実施、また世界中の京都ファンに向けた動画配信など京都DMOの取り組みを紹介する。

 

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた観光事業者への緊急支援助成金制度を創設

 DMO KYOTOは、(公財)京都市観光協会会員を対象に、施設の消毒や清掃、衛生対策用品の購入などの「感染拡大防止」や、販路開拓、プロモーション・広告などの「回復準備」に要する経費の3分の2以内(1事業者あたり上限20万円)を補助する緊急支援助成金を3月18日に創設した。3月31日までの募集期間に、予想を大きく超える応募があったことからニーズは大きいと判断。京都市と連携して、4月以降に実施する新型コロナウイルス感染症予防のための事業や危機的状況を乗り越えるための事業、回復期を見据えた事業継続に向けた対策等に対し、必要経費の4分の3以内(1事業者あたり上限30万円)を補助する制度を創設した。

なお、京都市では新型コロナウイルスの影響を受ける事業者の方に対する支援制度(融資制度や補助金等)の概要をまとめており、DMO KYOTOのWebサイト上でも周知している。

 

休業中にも取り組める無料オンライン研修を展開

新型コロナウイルスの感染拡大防止期間における緊急支援事業として、DMO KYOTOは京都市と連携して観光関連事業者を対象とするオンライン研修(ウェビナー*)を3月25日から実施している。

動画は1本30分程度で、観光客減少対策や事業継続計画(BCP)などの経営者向けのものから、デジタル活用や京都観光の知識を学べるものまで、5つのテーマ、21のメニューが揃う。3月25日から京都市観光協会ウェブサイトにおいて順次公開されている。京都DMOアドバイザーを務める元JNTO香港事務所上席次長・清水泰正氏による観光客減少期対策研修では、東日本大震災の経験から学ぶ事例や、香港をはじめとした東アジア市場の現状と復活期に向けてのニーズを解説する。

(1)観光客減少期対策研修(2メニュー)
(2)経営コンサルタントによる事業継続計画(BCP)研修(2メニュー)
(3)googleマイビジネスで検索数をアップさせるデジタル活用研修(1メニュー)
(4)世界遺産や仏像など京都観光知識研修(8メニュー)
(5)英語・中国語のネイティブ講師による接客会話研修(8メニュー)

今回のオンライン研修は誰でも無料で受講できる。動画配信によるオンライン研修は場所や時間を問わず、繰り返し何度も見ることができ、テレワークや在宅を余儀なくされている従業員にとっても利用しやすい。今後の回復期における誘客プロモーションに備える意味でもぜひ活用してみたい取組だ。4月末時点ですでに8,000回以上閲覧されており、「仕事がキャンセルになった時間にオンラインで受講出来、有り難いプログラム」「難しすぎず、よく使うフレーズが学べて良かった」と好評を博している。

*ウェビナーとはウェブとセミナーを組み合わせた造語で,オンラインで視聴できるセミナーや研修のことを指す。

 

新型コロナウイルス感染症に対する注意喚起ピクトグラム等の制作

さらに、事業者からの要望を受け、就業前の従業員の健康チェックに使っていただける「従業員向け衛生チェックシート」や、感染症予防のための啓発や注意喚起のために使っていただけるピクトグラムを作成している。

京都市観光協会のウェブサイトから、無料でダウンロードでき、掲示物や印刷物に利用できる。すでに、100件近くダウンロードされており、多くの事業者に利用されている。

[caption id="attachment_38230" align="aligncenter" width="300"] ▲感染症防止シート(日・英・中)[/caption]

 

世界中の京都ファンに、京都を感じられる動画配信 顧客との関係維持に貢献

実際に京都へ足を運ぶことができない京都ファンに向けて、自宅に居ながら京都の美しい風景や歴史、文化の魅力を感じることができる「Stay Home, Feel Kyoto」の取組みを4月28日にwebサイト上で開始した。

国内観光客向けサイト「京都観光Navi」及び外国人観光客向けサイト「Kyoto City Official Travel Guide」に専用ページを開設し、座禅の動画やビデオメッセージを発信する。日本語と英語で発信し、国内のみならず世界の京都ファンの方々に楽しんでもらうコンテンツを用意した。

妙心寺退蔵院 副住職 松山大耕氏による坐禅の解説動画をはじめ、京都の歴史や文化などについて学べる動画、オンライン会議などの背景に使える画像も無料で利用できる。画像は、鴨川や祇園新橋、元離宮二条城など全12種を無料でダウンロードできる。また、京都の老舗料亭や地元の観光ガイドから世界の京都ファンに向けたビデオメッセージも用意されている。コンテンツは、今後も随時追加される予定。なお、画像の配布は5月31日まで。

日本語コンテンツ掲載ページ:https://ja.kyoto.travel/feelkyoto
英語コンテンツ掲載ページ:https://kyoto.travel/en/feelkyoto

政府が発令した緊急事態宣言により、多くの人が移動自粛を余儀なくされ、自粛疲れが蔓延するなか、オンラインで楽しめるコンテンツを配信することで、自宅への滞在を推奨する形だ。

取材協力:(公社)京都市観光協会(DMO KYOTO)

(執筆:高沢由香、編集:堀内祐香)

 


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