緊急事態宣言解除を受け 消費者の旅行再開への意識は? 観光協会による支援の動きも
2020.05.29
5月25日、日本国内全ての地域で緊急事態宣言が解除された。人々の生活は徐々に日常に戻りはじめ、店舗再開の動きもみられている。そのような状況下での観光に関わる業界の1週間の動きをお届けする。
ニーズに対応したプランへの改革が進む宿泊業
宿泊業では、テレワークなど働き方の変化に対応し、ニーズに対応した改革が進む。佐賀県嬉野市の「和多屋別荘」が、従業員温泉入り放題の特典を売りに、オフィス誘致に乗り出した。H.I.S.ホテルホールディングスが運営する「変なホテル」では、親がホテルでテレワークをする間に、ロボットが子供の相手をしてくれるプランが始まった。民泊においては、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により時間貸しはできないとの解釈が一般的で、施行から来月で2年を迎える「新法」の見直しを求める声が出ている。
お土産の宅配などで再起をかける小売業
小売業では、沖縄県の「道の駅かでな」がお土産を海外に宅配する仕組み作りに乗り出したり、金沢駅構内の土産物を中心に販売していた店舗が地元客向けの品揃えに変更したり、東京のサンシャインシティが中止予定だったイベントをオンライン開催に切り替えたりと、各地で試行錯誤が続く。世界的には、米不動産仲介大手CBREによると、ベトナムで倉庫などの需要が高まっているという。コロナの影響でECの利用が拡大した為とみられる。
飲食業界の苦境が浮き彫りに、デリバリーや手作りキット販売など飲食業も多様化
飲食業では、大手居酒屋チェーンのワタミが国内の65店舗を今年度中に閉店すると発表し、飲食業界の苦境が改めて浮き彫りになった。一方函館では、20年前から移動を辞めていた「函館元祖バスラーメン」が再び、チャルメラのメロディとともに住宅地にラーメンを届け、山形のアメリカンレストラン「TEXAS COWBOY」は、自宅で手軽に出来立てのバーガーを楽しめる手作りバーガーキットの販売を始めた。東京豊洲の市場でも一般消費者向けのネット販売に力を入れるなど、事業者が新たなニーズを捉えて知恵を絞る。
タクシーによる食品宅配解禁の検討開始、交通業の事業継続に新たな一手
交通業では、アメリカの大手レンタカー会社ハーツの破綻のニュースが入ってきた。日本では国土交通省が、現在特例として認めているタクシーによる食品宅配の解禁を検討し始めた。全日空が衛生的で安心・快適な空の旅のための基本方針をまとめ、乗客にもマスクの着用を促すなど、新基準での旅客輸送に向けて歩みを進める中、成田国際空港会社が運行状況を発表した。4月の国際線旅客数は開港以来最低の数字で、2021年3月期には巨額の赤字になる見通しだという。
6月から旅行店舗再開、旅行再開に関する消費者心理も明らかに
旅行業では、JTB、近畿日本ツーリストが6月1日から店舗営業を再開することを決めた。営業時間の短縮や「旅行業における新型コロナウイルス対応ガイドライン」に沿った感染防止対策がとられる。旅行比較サービスの「スカイスキャナー」が新型コロナウイルスと旅行に関する意識調査」を実施し、旅行再開のカギは不安解消と払い戻し可能な航空券にあると分析した。JTB総合研究所も「新型コロナウイルス感染拡大による、 暮らしや心の変化および旅行再開に向けての意識調査(2020)」の結果を公表した。旅行の計画を阻む理由として、「世間体が悪い」が増加している。
観光協会など行政による旅行業支援の動きも
観光協会なども努力を続けている。京都市観光協会はデジタル活用を支援するオンライン研修などを含む「デジタル活用支援パッケージ」を開始した。福島市の土湯温泉観光協会は、段階的に組まれた独自の観光プランで、観光業を盛り立てる。第一段は県内の医療従事者などが対象で、第4段ではインバウンドを目指す。
世界で注目を集めた旅行代金半額キャッシュバックのGo Toトラベルキャンペーン
海外メディアでは今週、日本の観光庁のキャンペーンにより「日本への旅行が半額になるかもしれない」というニュースが流れ、一時訪日旅行への期待が高まった。その後、観光庁が「Go Toトラベル事業」は国内居住者を想定していることを改めて強調する事態となった。スペインやギリシャが7月からの外国からの観光客受け入れに積極的であることも多く伝えられた。
(やまとごころ編集部 ニュース担当 清水陽子)