やまとごころ.jp

【世界の動き】コロナ変異種拡大のイギリスへの警戒強める欧州各国。「通常の生活に戻れるのは来年秋以降」フランス科学評議会議長

2020.12.21

UNWTO、全世界で海外旅行者数が72%減少したことを発表

国連世界観光機関(UNWTO)が発表したデータによると、2020年1月〜10月の10カ月間における海外旅行者数が、前年同期比で72%減少したことがわかった。これは1990年の水準と同レベルで、UNWTOは前年同期比で海外旅行者数が9億人減少し、国際観光収入で9350億ドル(約96兆6000億円)の損失が出たという試算を出している。リーマンショック時の2009年と比較しても10倍以上の損失で、現在のエビデンスに基づくと、2020年全体では海外旅行者数が70〜75%減少し、国際観光収入は約113兆円の損失が出る可能性があるという。

 

イギリス、最大で70%感染しやすいコロナ変異種拡大

ハンコック英保健相は14日、ロンドンを中心に急速なペースで感染が拡大する中、イングランド南東部を中心に1000人件を超える変異種の感染例があったことを明らかにした。変異種は従来のウイルスよりも最大で70%感染しやすい可能性があるが、重症化率や死亡率が高くなったり、ワクチンが効きにくくなったりするというデータは確認されていないという。

これを受け、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギーは、イギリスからの旅客機や列車の到着を一時的に禁止するなど、入国規制を強化して警戒を強めている。

 

ロンドンなど再びロックダウン。突然の発表に動揺する市民

また、同保健相は17日、新型コロナウイルスの感染を抑制する対策として、最も厳格な制限措置をより広い地域で講じると発表。この措置は19日から施行されており、イングランドの人口の約68%が厳格な制限下に置かれることになる。クリスマス休暇にあたる23日からの5日間においては緩和される見通しだったが、ジョンソン首相は方針を転換し、「ウイルスが攻撃の手法を変えるなら、私たちも防御手段を変えねばならない」と理解を求めた。

再びロックダウンするとの突然の発表を受け、ロンドンの主要駅から地方へ向かうオンラインチケットは完売。「責任ある行動」を呼びかけたハンコック英保健相の声は届かず、各駅には大勢のロンドン市民が詰めかけた。

 

コロナに加え、大きな打撃となる「合意なき離脱」が濃厚に

イギリスのEU離脱「ブレグジット」の移行期間の期限が12月31日と迫るなか、イギリスとEUの間では離脱後の自由貿易協定(FTA)締結交渉に向けた協議が続けられているが、いまだ双方とも妥協に応じる兆しがみられない。フォンデアライエン欧州委員長は17日にジョンソン首相と電話で協議したが、「大幅な進展が見られた」としながらも、漁業権をめぐる「大きな隔たり」を埋めるのは「とても困難」との見解を示した。一方、ジョンソン首相は「期限は迫っている」とし、「EUが大胆な路線変更をしない限り、合意には至らないだろう」との認識を示した。協議はその後も継続されているが、未だ合意に至っていない。

コロナ感染拡大で打撃を受けるイギリスにとって、合意なき離脱は大きな打撃となるのは間違いない。EUとの国境などでは、すでに合意なき離脱を見越し、関税のかからぬ今のうちにできるだけ輸出入をしておこうとする業者の長い列が始まっている。

 

イタリアでもコロナ変異種、再び制限措置を強化へ

変異種が確認されたのはイギリスだけではない。イタリア政府は20日、英国で確認された新型コロナの変異種が同国でも見つかったことを発表した。また、この変異種はオーストラリアやデンマークでも確認されていることが判明している。

イタリアのコンテ首相は15日、新型コロナの第3波を回避するため、クリスマス休暇中に新たな制限措置を導入する必要があるとの見解を示した。クリスマスから年末にかけて、新型コロナ感染抑制に向けた全国的な制限措置の強化を検討しているという。

 

オランダ、5週間のロックダウンに突入 

オランダも15日、全国的な再ロックダウンを発表し、学校や商店を少なくとも5週間閉鎖すると発表した。この制限下では、人との集会は自宅のみで2人までに限定され、クリスマス前後の3日間だけは、大人3人を招くことが許可される。

 

オーストリア、3回目のロックダウンを発表

オーストリア政府は12月18日、クリスマス後となる26日より3回目のロックダウンに入ると発表した。店舗、レストラン、劇場、博物館、学校は来年1月18日の週まで閉鎖されるが、国内のスキー場は12月24日から再開する。オーストリアでは2回目のロックダウンが12月11日に解除されたばかり。

 

スペイン、抗体調査で人口の10%感染が判明

スペインで11月末に実施された新型コロナの抗体調査によると、人口の10%が感染歴を持っていることがわかった。これは、約470万人に相当し、国内で確認された感染者数(約175万人)を大幅に上回る結果となった。また、7月の前回調査からほぼ倍化したことも明らかになった。調査は5万1400人を対象に行われ、中でもマドリードの有病率は全地域で最も高く、人口の18.6%が抗体検査で陽性反応を示したという。

 

ドイツ、新型コロナによる死者数が過去最多の952人

ドイツでは新型コロナウイルスによる1日あたりの死者数が、過去最多の952人に達したことが明らかになった。これまでで最も多かったのは12月11日の598人。ドイツでは11月に部分的なロックダウン措置を講じていたが感染拡大に歯止めがかからず、16日から大半の店舗の営業を禁止する措置を講じている。

 

フランス大統領、スロバキア首相も陽性

フランス大統領府は17日、マクロン大統領が新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表した。体調に問題はないが7日間隔離し、快方に向かう間は穏やかなペースで職務を続けるという。マクロン大統領は感染前の数日、EU首脳と多くの会合を行っていたため、その際に感染した可能性があるとした。同じくブリュッセルで開かれたEU首脳会議に出席していたスロバキアのマトビッチ首相も18日に感染を発表している。

 

ワクチン接種に時間がかかる可能性を示唆

フランスのカステックス首相は16日、12月最終週にもコロナワクチンの接種を開始できるとの見通しを示した。しかし、仏政府に助言する科学評議会の議長を務めるジャンフランソワ・デルフレシは18日、ワクチン接種には予想以上に時間がかかる可能性があるとし、国民の生活が通常に戻るのは来年秋以降になると述べた。

 

アメリカ、新型コロナによる1日の死者が3000人超え

アメリカでは18日、1日の死者が3日間連続で3000人を超え、新規感染者も過去最多を更新した。同国の累計死者数は31万8000人を超え、感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。

 

 

やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
詳細はダウンロードしてご覧ください。

各国・地域の入国規制まとめ