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【海外メディアななめ読み】こたつが冬のニューヨークレストランで活躍

2021.01.04

明けましておめでとうございます。全国的に寒波が襲った年末年始、いかが過ごされましたか。私は子供と近所の公園で凧揚げばかりしていました。青い空に高く上がっていく凧に、2021年はまた全てが上向くようにと願いをかけつつ。ところで今年の冬、私は「こたつ」というワードをよく耳にしました。「ステイホームを『こたつでみかん』で過ごす」とか、「帰省はできないから、こたつを買って食料を備蓄して、とことん寝正月で過ごす準備を整えた」とか。私自身は、こたつが家にある生活から遠のいて久しいのですが、また恋しくなってきているところです。

暖房が内蔵された心地良すぎる屋外テーブル

そんな時、海外メディアでもこたつという言葉を目にしました。ニューヨークのレストランの屋外席で、こたつが話題を呼んでいるようなのです。「Kotatsu」席に座れるのは、日本人が経営する「Dr. Clark」という北海道料理のお店で、公式サイトを見ると現在、こたつ席は予約のみで、80分の時間制限付きになっているところから、その人気ぶりが伺えます。『ニューヨークのこのレストランには、暖房が内蔵された心地良すぎる屋外テーブルがある』という記事によると、このこたつはニューヨークの屋外席のために特別に輸入されたもので、それぞれのこたつにリモコンがついていて、客が好きな温度に設定できるとのこと。また、日本政府観光局のサイトのこたつの説明が引用され、「ヒーターがついている低いテーブルで、布団ブランケットで覆われている」という基本知識から「床に直接座り足を布団ブランケットの中に入れる」という使い方、「14世紀に始まった歴史ある暖房器具であり現在の電気式は1960代頃に登場した」という豆知識まで掲載されています。

コロナにより生まれたニューヨークの新しいガストロノミーの風景

ニューヨークのレストランの屋外席は、コロナによってもたらされ、今後、文化として定着して行くであろう、2020年のニューヨーク飲食業界を象徴するアイコンです。『ニューヨークのレストランが受けたコロナの影響のタイムライン』という記事では、怒涛の2020年の動きがわかりやすく整理されていました。それによると、コロナの影響は去年の1月に既に始まっていたといいます。中国人観光客の減少の影響で、ニューヨークにある中華街では、売り上げが減少していたのです。その後、コロナウイルスは着々と国境を超え、3月1日にニューヨーク州で最初の感染者が確認されると、8日までにその数は105人に達し、15日には学校と飲食店の閉鎖が発表されました。翌16日、ニューヨーク市でのレストラン営業が、テイクアウトとデリバリーに限られると、飲食業界の厳しい戦いが始まります。注目すべきは、屋外へのテーブル設置への動きと、集団訴訟です。5月の終わりには、レストランオーナーなどから、屋外席の拡大を求める声が上がり、6月22日、ニューヨーク市から正式に、歩道や駐車スペース、裏庭などにテーブルを設置する許可が出されます。これにより、密を避けながらレストランでの食事を楽しむ、ニューヨークの新しいガストロノミーの風景が生まれました。当初10月31日で一旦終了するはずだったこの屋外飲食プログラム「オープン・レストラン・イニシアティブ」は、9月25日に無期限へと延長されています。9月1日にニューヨーク市内のレストランオーナーたちが、ニューヨーク市を相手に起こした集団訴訟の圧力を受けて9月30日から屋内飲食の再開が発表されましたが、収容人数を25%に制限するという厳しい条件付きだったため、屋外席は飲食店の唯一の希望となっています。冬がやってくると、風よけの壁やヒーターを設置して、屋外ダイニングを少しでも長く続ける工夫をそれぞれのレストランが行っていますが、ニューヨークの厳しい寒さに苦戦する店が多いのも事実です。そんな中、ニューヨーク飲食業界に突如現れた「Kotatsu」は、業界の救世主となるかもしれません。実際、「Dr. Clark」チームには、他の飲食店からこたつ設置の依頼が入っているといいます。

外国人も憧れる「こたつでみかん」

コロナが訪れる前の冬、スイスからのお客さんとの旅行中に、屋外こたつから富士山を見ました。絶景ポイントにこたつが設置されていて、100円を払うとみかんを1個もらえてこたつに入れるのですが、寒い中、ぬくぬくとみかんを食べながら眺める富士は格別で、外国人観光客で賑わっていました。アニメや漫画でこたつを知って、憧れていたという外国人も多いようです。寒い部屋で、こたつに温められたほかほかの体で、冷えたみかんを食べる「こたつでみかん」文化を知らずに育っては、日本人として海外で恥をかくかもしれないと、子供の日本文化教育の一環としてこたつ購入を真剣に考えています。