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熊本豪雨災害をきっかけに地域が連携 AR技術を活用したポスターで観光復興を目指す

2021.02.05

熊本県の人吉市、小国町、南小国町は、2020年7月に発生した豪雨で甚大な被害を受けた。復旧を果たした地域、復旧の道半ばの地域それぞれあるが、観光地は一様に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、先行きへの不安が募っている。そんななか、3市町の観光関連団体が連携し、観光に来られなくても、地域の風景をみてほしいという願いをこめて、AR技術を活用したポスター「ともに見よう。」を作成した。ARとは、画像や映像とCGを合成する技術で、主にスマホのアプリを使って仮想現実を体験できるもの。アプリを使ってスマートフォンをポスターにかざすと、3市町の風景が動き出す。

人吉市では、人吉城跡で実施される花火大会をARで再現し、復興のシンボルとして人吉の夜空を明るく照らしてくれるよう期待を込めた。人吉では、2月13日から3月20日まで希望の「ひかり」としてひとよしまち燈り「採光」を、2月23日には復興祈願祭を実施予定としており、少しずつではあるものの日常を取り戻しつつある。

小国町の杖立温泉では例年「鯉のぼりまつり」が実施されており、地域の皆で作業をする様子が春の風物詩となっていたが、豪雨の影響で鯉のぼりポール用の基礎部分が無くなり、開催が困難な状況に追い込まれていた。様々な支援を受け、現在は、4月1日から5月6日までの日程で「鯉のぼりまつり」の開催を予定している。ポスターはたくさんの鯉のぼりが映った白黒写真で、アプリを使うと鯉が一匹ずつ色を取り戻し、風に泳ぎ始めるというもの。7月の豪雨で止まった時が再び進み出し、復興していく様子を表現している。

南小国町の黒川温泉では、毎年冬に「湯あかり」が実施され、来年10周年を迎える予定だ。令和2年度は復興の灯りとして、黒川温泉だけでなく、南小国町全体の温泉地で湯あかりの点灯が行われ、町内を周遊できる分散型の湯あかりが始まった。ポスターでは、毬灯籠が少しずつ点灯していく様子と、空に星が出てくる様子が表現されている。

豪雨災害をきっかけに連携の基礎が出来た3市町は、今後も市町村の枠組みを超え、観光地同士、温泉地同士の繋がりを活かした取り組みを進めていくという。