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10月1日免税販売手続が完全電子化へ コロナ禍の今こそ万全の準備を

2021.08.12

2020年4月から免税販売手続の電子化が始まった。2021年9月末までは経過措置として従来の書面による免税手続も可能だが、完全電子化となる2021年10月1日からは電子化に対応していないと免税販売そのものができなくなる。まだ電子化に対応していない店舗は、管轄の税務署からの識別符号の取得に約2週間~1カ月要するため、コロナ禍で接客時間に余裕がある今のうちに、ぜひ免税手続の電子化を進めておこう。実際の手順について参考になるのが、公益財団法人東京観光財団の東京都免税店支援公式サイトだ。必要な届出や申請書の記入例など役立つ情報がまとめて掲載されているので、ぜひ一度チェックしてみよう。

 

将来のインバウンド需要に向けて今、備えておこう

コロナ禍でインバウンド客がいない今、免税手続の電子化をしても活用できないのではと懸念する事業者もいるかもしれない。しかし、電子化することによって紙にかかるコストを削減し、免税対応できる人材をしっかり育成しておくことは、販売事業を継続する上でも有効だ。ワクチンが普及し、国境の行き来が再開されれば、東京にもいずれインバウンド客は戻ってくる。コロナ禍で外出を自粛していた分、次の旅行には高額な旅行を計画している人が多く、公衆衛生面において清潔なイメージが強い日本は、アフターコロナの旅行先として有力な候補となっている。インバウンド客が一気に戻ってきた時に、感染予防対策も講じながら接客するのは、これまで以上に時間も手間もかかる。電子化しておけば、手渡しの接触を最小限にとどめることができ、手続による行列などの密も避けられる。コロナ禍でインバウンド客が少ない今こそ、ぜひ電子化対応に取り組んでおこう。

 

電子化導入までの手順~4STEP~

国税庁へ購入記録情報をデータで送る電子化。導入までの手順を大まかに分けると4つある。

STEP1. 自社送信か他社送信(承認送信事業者経由)か決める 

免税店自らが国税庁にデータを送信する自社送信と、事前に契約した承認送信事業者を使ってデータを提供する他社送信の2つがある。

STEP2. 管轄の税務署へ届出 

データの送信方法を自社か他社か明記した上で申請する。他社送信の場合には、契約した承認送信事業者の番号も必要となる。届出書類の記入例は東京都免税店支援公式サイトにある。

STEP3. 識別符号の取得 

税務署から店舗ごとに個別の識別符号が通知される。取得までに2週間~1カ月かかることがあるので、早めの申請が必要だ。

STEP4. 国税庁へ送信するシステムの導入

承認送信事業者によっては、既存のPOSレジと連動できる方法や手持ちのスマートフォンやタブレットなどにアプリを入れて使える方法などもある。承認送信事業者と相談して自分のお店に一番合った方法を導入しよう。

 

[caption id="attachment_43811" align="aligncenter" width="600"]   (出所:東京都免税店支援公式サイト)[/caption]

システム導入に当たっては、国税庁が持つデータベースに合わせた規格で、また個人情報が含まれるためセキュリティ対策も必須となる。こうした技術を持ち合わせていない中小規模の小売店では自前でシステムを準備するのは時間もコストもかかる。そんな時は、免税店に代わって購入記録情報をデータで国税庁に送信する「承認送信事業者」を利用することが認められている。承認送信事業者については観光庁の免税手続電子化特設サイトに一覧があるので、確認できる。

 

電子化によりペーパーレスと時間短縮を実現

電子化することのメリットの一つが、紙とプリント代の削減だ。これまでは購入者のパスポート情報と商品情報を伝票に起こし、パスポートに貼付・割印が必要だったが、今後はデータで送信するだけなので、紙に出力する必要がなくなる。また、7年間の保管義務がある購入者誓約書もデータでの保管が可能となるため、紙での保管スペースの削減につながる。

もう一つは手続時間の短縮だ。従来の紙ベースの手続の場合、購入量が多い時や混雑時には行列ができ、お客様を待たせてしまうことが多々あった。電子化することで紙の記入やプリントアウトが不要となり、手続にかかる時間を大幅に短縮できる。その分、客はショッピングそのものを楽しむ時間が増えるし、店側も本来の接客に時間を割ける。手続時間の短縮は客と店双方にとってメリットがある。

また、コロナ禍においては電子化によって紙の手渡しなどの接触を極力少なくすることができるため、感染予防の面でもメリットがある。

一方、免税店に義務付けられている購入者への必要事項説明については口頭以外にも掲示しておいたり、書面で渡す方法が認められている。国税庁のHPでは英語、中国語、韓国語など多言語化した説明シートが用意されており、必要に応じて自由にダウンロード可能だ。外国語での対応に不安を感じる中小店舗においては、こうした免税に関する国税庁や観光庁のHPにある各種ツールを活用すれば十分対応できる。

 

いざ、電子化! 導入の際、活用できる補助金や相談窓口

免税システムを導入する際に活用できる補助金がインバウンド対応力強化支援補助金だ。東京都内の宿泊施設や飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設を対象に、訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性を向上させる取組について支援する補助制度だ。免税システム等の導入や免税処理の簡素化を図るパスポートリーダー等端末機器の購入も対象となっており、経費の2分の1まで補助される。ただし、業種や対象事業ごとに上限がある。一例として宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設、観光バス事業者向けには1施設/店舗あたり上限300万円、中小企業団体等、観光関連事業者グループ向けには1団体/グループあたり上限1000万円となっている。応募締切は2022年3月31日。詳しくは、インバウンド対応力強化支援補助金のサイトで確認できる。

また、東京都免税店支援公式サイトでは、免税店についての一般的な質問から電子化にあたっての様々な悩みに対応する相談窓口を開設しており、電話やメールで気軽に相談できる。詳しくは東京都免税店支援公式サイトまで。

東京都でもインバウンド対応を推進する店舗を対象に、オーダーメイド型セミナーに対する講師派遣やアドバイザーを派遣する支援策がある。店舗それぞれの課題に合わせた専門家を無料で派遣してもらえるので、まずはホームページでチェックしてみることをお勧めする。

コロナ禍でインバウンド客が少ないこの時期は、免税販売手続の電子化についてじっくり習熟できるチャンスとも言える。免税担当のスタッフだけでなく、例えばお店の従業員全員が電子化のオンライン講習を受けたり、手続対応レジやシステムの操作に慣れる時間が取れる。インバウンド客が戻ってくる将来を見据えて、今のうちに受け入れ体制を整えておくことが重要だ。

Sponsored by 公益財団法人東京観光財団