デルタ株感染拡大でマスクやワクチン証明を義務化する米国、EU側も米からの入国に渡航制限
2021.09.08
米国、デルタ株の感染拡大、重症患者の多くがワクチン未接種
新型コロナウイルスワクチン接種が進む米国では、総人口の63%が1回目のワクチン接種を終え、53.6%が必要回数のワクチン接種を完了している(9月4日時点)。しかし、感染力の強いデルタ株の蔓延により、一時期は1万人前半で推移していた1日の新規感染者数が、再び増加傾向に転じている。9月3日の新規感染者は約19万1298人で、死者が1978人だった。
8月30日付の『ニューヨークタイムズ』紙によると、全米で新型コロナウイルスに感染した入院患者数は、約2カ月前から500%増加、29日時点の7日間平均は一日あたり10万人を上回り、2月の水準に逆戻りしていると報じた。また、2割の病院でICUの95%が埋まり、ICUに入る重症患者の多くがワクチン未接種だったことも明らかになった。
マスク着用やワクチン接種証明の提示を義務化する動きが活発に
米疾病対策センター(CDC)は5月中旬に、ワクチン接種完了者は「マスク不要」との指針を打ち出し、この発表を受けたバイデン大統領も「アメリカにとって素晴らしい」とたたえたが、デルタ株の蔓延に伴う感染者の急増を受け、米国では再びマスク着用を推奨する動きなどが活発化している。
カリフォルニア州の小学校では5月下旬、デルタ株に感染した1人の教師から、児童やその家族の計26人に感染が広がった。校内ではマスクの着用が義務付けられていたが、この教師はワクチン未接種で、症状が出てからも2日間勤務し、本の読み聞かせの際にマスクを外すことがあったという。CDCは、ワクチンを接種できる年齢に達していない子供への感染を防ぐために、周囲の大人がワクチン接種やマスク、換気などの感染対策を徹底することが重要だと発表している。
カリフォルニア州は8月20日、一時緩和していた大規模イベントでのマスク着用を再び義務化し、9月下旬からは屋内イベントでワクチン接種証明の提示を求めるという。西部のオレゴン州も8月27日、屋外のイベント会場などでのマスク着用を義務付けた。ニューヨーク市は、8月17日から屋内飲食や、屋内ジム、屋内の娯楽施設(劇場、美術館等)におけるワクチン接種証明の提示を義務化した。9月13日から本格的に開始し、従わない事業者には罰金が科せられるという。
ハワイ州ホノルル市では、屋内施設でワクチン接種証明の提示を義務付けへ
観光業が主産業である米ハワイ州では、国内外からの旅行者に対する様々な緩和策を講じてきた。しかし、本土同様に8月からデルタ株の感染が拡大し、新規感染者が爆発的に増えてきている。ハワイ州のイゲ知事は、1年前に行われたロックダウンのような措置はできるだけ避けたいとした上で、このまま感染者が減少しない場合は再検討すると述べている。また、医療がひっ迫する中、「ハワイを旅行するには危険な時期だ」と訴えてハワイへの観光旅行の自粛を求めるなど、苦渋の決断を強いられている。
感染拡大を受け、ハワイ州の州都であるホノルル市は8月30日、新たな対策として「セーフ・アクセス・オハフ」を発表した。9月13日にスタートするこのプログラムは、レストランやバー、ジムなどの屋内施設の従業員と利用者にワクチン接種証明の提示が義務付けられるというものだ。ただし、接種証明の代わりに、検査の陰性証明書を提示することも可能としている。
ハワイでは1回目のワクチン接種が終わった人は人口の74.7%、2回目の接種も終了した人は55.7%(9月4日時点)となっているが、現在新型コロナウイルスに感染して入院している人の90%以上は、ワクチン未接種だったというデータが発表されている。
EU、米国からの旅行者に対し再び規制強化
米国での感染拡大を受けEU理事会は8月30日、米国からの旅行者に対する渡航制限を再導入するよう勧告した。加盟27カ国が対象となるが、ワクチン接種を完了した米国からの旅行者の入国を認めるかどうかは、各国の判断に委ねるという。この勧告で不要不急の入域制限解除国リストから除外されたのは、米国、イスラエル、レバノン、モンテネグロ、北マケドニア、コソボだった。
勧告に伴い、オランダでは、米国からのワクチン未接種旅行者の入国を停止し、接種済みの旅行者でも到着時に10日間の隔離が必要となった。さらに、出発から48時間以内に受けたPCR検査による陰性証明書を提示する必要がある。ただし、5日目に検査を受けて陰性であれば、隔離期間を短縮できる場合もあるという。
イタリアでも同じような措置が講じられ、米国からのワクチン接種済みの旅行者は、接種証明書と出発から72時間以内に受けたPCR検査または抗原検査の陰性証明書の提示が必要となった。また、到着時に5日間の隔離が必要となる。
EUではこのような動きが見られるが、一方のアメリカ側も、現在はEU加盟国からの旅行者の入国を受け入れていない。