中秋節の連休を控え中国では旅行再開の兆し、韓国では帰省や旅行の計画「ない」が8割近く
2021.09.15
中華圏(中国、台湾、香港)や韓国では、いずれも9月21日に中秋節を迎える。その前後が連休となり、人々の移動や接触が活発になることが予想されるため、各国・地域では、規制を緩和したり、逆に強化したりする動きがみられる。今年の中秋節における、各国・地域の状況をまとめた。
中国の中秋節、人気の目的地は「ユニバーサルスタジオ北京」「古い街並み」「山」
中国では、9月に入って新型コロナウイルスの感染状況に改善がみられることから、多くの地域では、省をまたぐ旅行を再開してもよいという通知が出された。これを受け、四川省では成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地の予約が殺到するなど、観光業が回復の兆しを見せている。中秋節とその後の国慶節という大型連休を目前に、国内旅行再開への機運が高まっているようだ。
中国のオンライン旅行会社大手の携程旅行網は7日、「秋の旅行及び中秋節の予測データ報告」を発表した。これによると、中秋節の連休(9月19日〜21日)を目前に、省、自治体、管轄市をまたぐツアーが回復しており、9月6日までの予約件数は8月20日に比べて356%増加したという。この連休で人気のある目的地は、北京市と、9月20日に開業が予定されているユニバーサルスタジオ北京だった。
9月6日時点の都市別の人気目的地トップ10は、北京、上海、広州、杭州、成都、三亜、深セン、重慶、珠海、武漢の順で、同社で北京へのツアーを予約した人は、延べ人数で8月20日から約8倍増加したという。また、同日時点の人気観光地トップ10は、ユニバーサルスタジオ北京、広州長隆観光リゾート、上海ディズニーランド、故宮、上海海昌海洋公園、雲台山風景名勝区、古北水鎮、成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地、普陀山風景区、黄山風景区の順で、テーマパーク以外には山の紅葉や古い街並みを楽しむ旅行に注目が集まっている。
例年、中秋節は北京から地方へ旅行に行く人が多くなる。しかし今年は、ユニバーサルスタジオ北京の開業日が発表されてから、3連休中に北京へ向かう航空便の検索回数が11倍に激増したという。
台湾、警戒レベル「第2級」を延長。中秋節期間中のバーベキュー規制も
台湾の中央感染症指揮センター(CECC)は9月6日、全域で「第2級」(4段階中、上から3番目)としていた新型コロナウイルス感染症の警戒レベルを9月20日まで延長すると発表した。台湾では比較的感染が抑え込まれているが、新北市の幼稚園でクラスターが発生したことを受け、同センターの陳指揮官は7日、「再び第3級に引き上げる可能性を排除しない」と述べた。
台湾では中秋節連休中に家族や友人が集まってバーベキューを楽しむ習慣があるが、多くの自治体が、公共スペースなどでのバーベキューや、家族以外の人同士のバーベキューを禁止している。一方で、鉄道では緩和の動きがみられ、台湾鉄路管理局(TRA)は9月18日〜21日の中秋節期間中、座席の販売数を増やすなどして、観光需要を取り込んでいる。豪華観光列車「鳴日号」では、1000台湾元(約4000円)相当の特製弁当が付いた、台湾東部を巡る4日間のプランが発表された。
新型コロナウイルスの影響で低迷している航空業界でも、中秋節に向けて新たな動きが見られた。機内食を中心に手がける、エバー航空とチャイナエアライン傘下のケータリング会社2社は、特製月餅をインターネット上で販売し、EC事業の強化を図っている。中華圏では、中秋節に月餅を食べるのが伝統的な風習となっている。
香港、中秋節に合わせてテーマパークの新エリアをオープン
香港では、8月17日に空港職員の市中感染が確認されて以来、市中感染ゼロが続いている。香港特別行政区の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月7日、中国本土とマカオからの入境者を隔離なしで受け入れる措置を導入すると発表した。入境者は一定の条件を満たす必要があり、入境経路も2カ所に限定され、人数の上限は1日あたり2000人となっている。
香港にあるテーマパーク「オーシャンパーク(香港海洋公園)」では、新テーマエリア「ウォーターランド(水上楽園)」が、中秋節の9月21日にオープンする。それに先駆け、ウォーターランドの主要アトラクションが9月2日、初めて公開された。中秋節に欠かせない月餅商戦も活況を呈し、予約や販売が本格化している。最近では伝統的な月餅にとどまらず、現代風なフレーバーを展開したり、パッケージに趣向を凝らしたりする店が増えているようだ。
香港では、1回目のワクチン接種を終えた人は総人口の64.4%、必要回数の接種を完了した人は56.6%(9月12日時点)となり、当局は9月末までに目標の接種率7割を達成できるとの見通しを示している。
韓国、中秋節連休で規制緩和も、約8割が帰省や旅行の計画なし
韓国では、6月下旬以降感染が急増し、高止まり状態が続いている。9月13日には新規感染者が1433人となり、69日連続で1日の感染者数が1000人を超えた。市中感染の80%は首都圏が占めているという。感染拡大を受け、韓国政府は9月3日、社会的距離を確保するための規制を数週間延長すると発表したが、秋夕(中秋節)を含む9月17日〜23日の1週間は行動制限が一部緩和されることから、感染拡大を懸念する声もあがっている。この期間は、首都圏のレストランやカフェが営業時間を1時間延長するほか、家族間で最大8人の集まりが可能となる。
韓国では、1回目のワクチン接種を終えた人は総人口の64.1%、必要回数の接種を完了した人は38.7%(9月11日時点)となり、秋夕の連休前に国民の70%に1回目の接種を完了するという政府目標が達成される見通しとなりそうだ。
韓国の調査会社が10日発表したデータによると、秋夕連休に1泊以上の帰省や旅行の計画が「ない」と回答した人は77%だったという。一方、秋夕連休に1泊以上の帰省を計画していると回答した人は19%で、1泊以上の旅行を計画していると回答した人は2%にとどまった。