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東南アジアで進むワクチン接種者への入国規制緩和、タイは感染拡大より「経済活動」優先

2021.10.21

世界中でワクチン接種が進むなか、ワクチン接種完了を条件に外国人の入国を認める国が増えている。米国はこれまで、相手国の感染状況に応じて入国禁止措置を講じてきたが、11月8日からは入国禁止措置を撤廃し、ワクチン接種完了を条件に一律で外国人の受け入れを開始するという。今回は、7月から段階的に外国人観光客の受け入れを開始しているタイを筆頭に、東南アジア諸国の入国規制緩和について紹介する。

 

タイ、11月からワクチン接種完了を条件に、隔離なしで外国人受け入れへ

タイのプラユット首相は10月11日、11月1日以降に感染リスクの低い国(10カ国程度)から空路でタイを訪れる人々について、ワクチン接種完了を条件に、入国時の強制隔離を免除すると発表した。この措置は、首都バンコクを含む15都県が対象となる。同国の経済を支える観光業を早期に回復させることが狙いだ。プラユット首相はテレビ演説で、「感染者が増加するかもしれないが、国民の生活を立て直す」と経済回復を優先する意向を示した。

入国者は入国時に陰性証明書を提示した上で、もう一度タイの到着空港でPCR検査を受ける必要があり、再び陰性反応が出れば隔離が免除される。現在は、入国後最低でも7日間はホテルでの隔離が必要だが、11月から大幅に規制が緩和される見通しだ。首相は、「低リスク国」の例として、シンガポール、ドイツ、中国、米国、英国の5カ国を挙げたが、日本がこのリストに入るかどうかは明らかになっていない。しかし、12月1日、1月1日にもさらに低リスク国のリストを増やす方針だ。

タイでは7月1日より、主要観光地のプーケットなどで、ワクチン接種を完了した外国人観光客を隔離なしで受け入れる「サンドボックス」制度をいち早く導入している。11月1日から入国規制を緩和するという発表があった後、スラタニ県のサムイ島では、ホテルの宿泊予約が急増したという。

一方、国内の1日の新規感染者は東南アジア最多の1万人前後で推移しており、国民の間では外国人観光客受け入れによる、感染拡大の懸念も広がっている。同政府はサンドボックス制度を導入する地域を優先し、住民のワクチン接種を進めてきたが、必要回数のワクチン接種を完了した人は、依然として人口の約35%にとどまっている。

 

インドネシア、バリ島で外国人観光客の受け入れを開始

インドネシア政府は10月14日より、バリ島とリアウ諸島で、中国、インド、日本、韓国、ニュージーランド、西ヨーロッパの一部など、19カ国から入国する外国人観光客の受け入れを開始した。ワクチン接種完了証明書(ワクチンパスポート)および出国前に受けたPCR検査の陰性証明書を提示すれば、入国後の政府指定ホテルでの隔離期間が8日間から5日間に短縮される。入国後のPCR検査は、空港到着時と隔離4日目に行われる。

インドネシア国内のワクチン接種完了率は、総人口の約23%にとどまっているが、優先的に接種を行なってきたバリ島では、住民の約80%が接種を完了している。

観光業の回復に向けて舵を切った形となるが、インドネシアでは今年6〜7月に感染が爆発し、7月には1日の新規感染者数が5万人、死者数が2000人を超える事態が続いた。その後、新規感染者数は減少し、現在は1000人を下回っているが、サンディアガ・ウノ観光・創造経済相は「最悪の事態が起こった場合は、特定の地域の観光制限や国境閉鎖も検討する」と説明している。

 

ベトナム、フーコック島で外国人観光客の受け入れ検討も「時期は未定」

ベトナム政府は、観光地のフーコック島で、10月から外国人観光客を受け入れる方針を示していたが、ワクチン接種の遅れにより延期された。その後11月中に外国人観光客の受け入れを開始する予定だったが、まだ具体的なスケジュールは発表されていない。

同島では、ワクチン接種を完了した外国人を対象に、「ワクチンパスポートプログラム」の試験運用を10月から6カ月間にわたって実施する予定となっていた。同島では18歳以上の全ての住民が1回目のワクチン接種を終了し、11月上旬に2回目の接種が行われる予定だ。その後は、南中部沿岸地方のカインホア省が外国人観光客の受け入れを再開する予定で、同省の18歳以上のワクチン接種完了率は11月末までに100%に達する見通しだ。このほかにも、ダナン市などが、11月中に海外からの観光客受け入れを再開する可能性を示唆している。

ベトナムでは今年8月から9月にかけて感染が拡大し、1日の新規感染者が1万人を超える日が続いた。現在は減少傾向にあり、10月18日の新規感染者は3159人と発表されている。同国で1回目のワクチン接種を終えた人は総人口の46.5&、必要回数のワクチン接種を完了した人は18.6%となっている(10月17日時点)。

 

シンガポール、隔離なしで入国できる「ワクチントラベルレーン」の対象国を拡大

シンガポール政府では10月19日より、カナダ、デンマーク、フランス、イタリア、オランダ、スペイン、英国、米国の8カ国から入国するワクチン接種完了者に対し、検査で陰性反応が出た場合に隔離を免除する「ワクチントラベルレーン(VTL)」を適用した。同政府は9月にドイツとブルネイを対象にVTLを開始しており、両国から入国するワクチン接種完了者を対象に隔離を免除していた。そのため、今回の緩和措置でVTLの対象国が計11カ国に拡大した。

VTLの対象国から入国する際は、出発48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書を提示し、空港到着時のPCR検査で陰性結果が出るまで宿泊先で待機することが求められる。

香港、マカオ、中国本土、台湾からの渡航者は、観光を含めた短期滞在の訪問の場合、シンガポールへの入国が可能だが、アジアの大半の国に対しては依然として入国制限が敷かれたままだ。ただし、来月15日以降は韓国がVTLの対象国に加わる予定となっている。

シンガポールでは10月に入って、1日の新規感染者が3000人を超える日が続き、過去最多を更新したが、ほぼ全員が無症状もしくは軽症だという。同国のワクチン接種完了率は総人口の83%で、世界で最も接種率が高い国のひとつとなっている。また、10月4日からブースター接種の対象を50歳以上へ、10月9日からは30歳以上へと拡大している。