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国連 2022年の世界経済見通し発表、経済回復に向け「観光」復活の重要性を強調

2022.01.20

国連は、2022年版報告書「世界経済情勢と展望」を発表した。それによると、国際観光客の到着数と観光収入に関するUNWTOの主要データを用い、パンデミックの影響がいかに観光分野以外にも及んでいるかを示しており、観光が各国の経済回復と世界貿易において重要な役割を果たし、特に開発途上国の経済にとって観光分野は欠かせないと強調している。具体的な中身を見ていく。

世界の経済成長の見通し、2022年は4% 2023年は3.5%と予測

世界の経済成長は2020年に3.4%の縮小、2021年に5.5%の回復を経て、2022年には4%、2023年には3.5%の成長が予測されている。新型コロナ感染症拡大以前は、主要輸出品目として燃料、化学品に次いで世界第3位の規模だった観光が、雇用と経済発展には欠かせないものであり、この分野の回復が世界経済の成長を牽引すると期待される。

UNWTOによると、2020年の国際観光客数は73%減少し、過去30年間見られなかった水準まで落ち込んだ。2021年第3四半期に観光業は小幅な改善を記録したものの、2021年1月から9月までの国際観光客数は2020年の水準を20%、2019年の水準を76%下回った形となった。なお、2021年通年では、2020年比で4%増となったものの、パンデミック前の2019年比では72%減となっている。

国際観光の大幅減が、他産業の雇用などに壊滅的な影響

雇用面では、接客業、旅行サービス業、小売業などに壊滅的な影響を及ぼしている。中でも、若者や移民労働者、教育水準やスキルの低い労働者など、脆弱な集団には特に打撃が大きい。特に発展途上国では男女格差の悪化が顕著であり、女性の方が男性よりも雇用と労働参加において大きな減少を経験している。

報告書では、経済回復における観光産業の役割をさらに分析し、多くの観光地、特に観光に依存する国々が、2022年以降を通じて観光の多様化を図る必要があると指摘。多くの観光地が国内観光や農村観光を開発し、農村部や不況地域の地域経済を支援して多様な雇用創出を促進し、天然資源や文化遺産を保護していく必要がある。さらに、カリブ海地域の観光客が費やした金額の80%が、観光収入が地元地域に落ちずに他地域に漏出してしまう「観光リーケージ」であると推定されることなどから、国際観光がもたらす経済的利益を地元企業や労働者に多く残すためにどのような措置を講じることができるかという課題も提起している。