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中国清明節のトレンドはオンライン墓参りと近距離旅行、上海などで感染続く

2022.04.06

「ゼロコロナ」政策を貫き、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込んできた中国では、現在、上海市を中心に感染が拡大している。4月2日に確認された全土の新規感染者は1万3146人に上り、第1波以来の最多を記録した。また、ロックダウン措置がとられている上海市では同日、過去最多となる8226人の感染者が確認され、全住民を対象にした大規模なPCR検査が行われている。

[caption id="attachment_46030" align="alignnone" width="600"] ▲上海でPCR検査に並ぶ人々[/caption]

感染拡大が止まらない中、4月5日には先祖を祭る伝統的な祭日「清明節」を迎え、4月3日〜5日の3連休に入った。海外旅行に行けない状況下で、中国国内の旅行需要はどのように変化しているのか、清明節の状況を交えてお伝えする。

 

近距離旅行が人気、「中国のハワイ」にはマリンスポーツをする若者が殺到

中国の文化観光省は3月30日、2022年第1四半期の定例会見を開き、海外への団体旅行や「航空券+ホテル」の事業は当面再開されないと発表した。海外旅行に行けない状況が続く中、国内で人気を集めている観光地が「中国のハワイ」と称される中国南部の海南島だ。年間平均気温が24度という温暖な気候の中、マリンスポーツが楽しめる観光地として人気が高まっている。プレジャーボートやサーフィン、ダイビングを楽しんだり、ヨットで航海したりする人が増加しているという。海南島では、中国の市民も年間10万元(約190万円)まで免税商品を購入できるため、「コト消費」のみならず「モノ消費」も楽しめる点が魅力となっているようだ。

中国の航空会社はコロナ禍で苦戦を強いられている。中国の3大航空会社が3月30日に発表した2021年の第4四半期と通期の決算によると、第4四半期の決算は赤字幅が拡大し、通年では2年連続の赤字となった。各社の通年の赤字幅は、中国東方航空が122億元(約2350億円)、中国国際航空が166億元(約3200億円)、中国南方航空は121億元(約2300億円)だった。

 

清明節連休の旅行需要は回復傾向

中国の旅行メディア「Travel Daily」によると、今年の清明節旅行の需要は、回復に向かいつつあるという。中国南東に位置し、中国の本土と香港を結ぶ都市である深セン市では、3月20日に市全域のロックダウンの解除が発表された。その後3月21日〜27日の1週間で、深センユーザーが中国大手OTAの携程(Ctrip)で予約した旅行商品の数は前週比で718%増加したという。清明節に向けた近距離の「リバウンド旅行」の需要増で、広州、マカオなどへの周辺ツアーの受注も前週比48%増となっている。

中国のメディア「人民網」によると、清明節連休にもかかわらず、中国国内の航空券の価格は急落している。3月28日付けの旅行サイト、フリギー(Fliggy)では、4月10日までの広州から上海に向かう航空券の最安値は67元(約1300円)だったという。その後の3日間はやや高くなり、120元(約2300円)となっていたものの、5月1日(メーデー)の前日でも最安値は283元(約5440円)だった。このほか、北京から他地域へ向かう航空券も4月中はずっと安値が続いているという。新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの航空会社が欠航を強いられる中、人気路線のチケットまでもが捨て値になる現象が生じているようだ。

 

ロックダウンの上海回避で西側都市の人気が上昇

旅行予約サイト、Qunar.Comが3月28日に発表した清明節連休の旅行報告によると、清明節の旅行市場は引き続き近距離旅行が中心で、居住地の都市内にあるホテルの予約が半数を占め、居住地の都市内の旅行の予約件数が6割以上を占めているという。同サイトの3月末時点のホテル予約件数を見ると、清明節連休中の旅行先で人気の高い都市は、成都、広州、北京、重慶、杭州、長沙、昆明、海口、貴陽、三亜だった。現在新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化している上海は初めてベスト10から外れ、観光資源が豊富な都市「貴陽」が初のベスト10入りを果たした。

Ctripが3月30日に発表した「2022年清明節休暇旅行動向」の報告書によると、今年の清明節連休中の旅行先で人気の高い都市トップ10は、北京、広州、杭州、重慶、深セン、武漢、西安、長沙、三亜、南京だった。こちらも上海はランクインしておらず、一方で中国西部への観光に人気が高まっていることがわかった。同じく清明節連休中の宿泊予約人気上昇ランキングでも、トップ10に西部8都市がランクインしている。また、今年の清明節では花見やキャンプ旅行の人気が高く、キャンプ用品の予約数は前年比で3倍以上に増加したという。

中国では、日本のお彼岸にあたる清明節に帰省し、墓地に出向いて墓参りをする習慣があるが、新型コロナウイルス感染防止策として、昨年からオンライン方式での墓参りが普及している。今年は墓参りを禁止した地域もあったことから、清明節連休の初日となった4月3日には、中国全土でオンライン墓参りをした人は前年同期比で275.7%増の延べ695万人に上った。