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2022年第1四半期、欧米市場の力強い旅行回復により、年間の見通し上方修正 ---UNWTO

2022.06.17

UNWTO(国連世界観光機関)が世界の観光動向を伝える「世界観光指標」で、2022年第1四半期(1月~3月)の最新データが報告された。UNWTOが前回の発表より2022年の見通しを上方修正するほど、力強い回復が見られた第1四半期。観光専門家はパンデミック前の水準に戻る見通しをどう考えるのか。UNWTOからの最新報告をお伝えする。

 

欧米市場が国際観光の回復を牽引

2022年第1四半期における世界の旅行者数(国際観光客到着数)は、対前年同期の約3倍(182%増)の推定1億1700万人となった。中でも約4倍(280%増)という最も大きな伸びを示したのが、域内需要に大きな後押しを受けたヨーロッパだ。北中南米も倍を超える117%増で、この両市場が世界での回復をリードしている。とはいえ、旅行者数は2019年同期比でヨーロッパ(43%減)、北中南米(46%減)と、ようやくコロナ前の半分を超える程度まで戻ったという状況だ。

また、中東(132%増)、アフリカ(96%増)といずれも力強い成長ぶりを見せている。アジア・太平洋地域でも増加したが(64%増)、パンデミック前の2019年の水準からは93%減と落ち込みを引きずっている。

 
 

さらに細かい地域別では、カリブ海と南・地中海ヨーロッパでの回復スピードが最も速い。2019年の水準の75%近くまで、国によってはパンデミック前とほぼ同水準かさらに上回る地もある。

 

旅行予算アップが観光収入の回復をけん引

2021年の国際観光による輸出収入(デスティネーションでの観光客の支出+国際旅客運賃)は推定7130億米ドルとなっており、2020年からは微増したものの、2019年との比較では2年連続で約1兆ドルの損失となり、2019年の1.7兆米ドルの半分にも満たない。約半分にまで回復している地域はヨーロッパと中東だ。

国際観光収入の回復に貢献しているのが1回の旅行にかけられる費用だ。2019年の平均は1000ドルだったが、そこから2021年は1400ドルへと上昇。観光収入回復を加速させる後押しとなることを今後も期待したい。

 

8割の観光専門家が2022年を楽観視

今回のレポートで著しく上昇したのが、観光専門家委員会による「信頼指数」だ。観光実績の評価と短期的見通しに基づく調査だが、パンデミック開始以来初めて、2019年のレベルに戻り、世界中の観光専門家には楽観的見方が広まっている。背景には、ヨーロッパ域内旅行とアメリカからヨーロッパへ向かう旅行へのペントアップ需要(先送りされた消費需要)の高まりがある。

2022年について、2021年よりも「よくなる」「ずっとよくなる」と予測する観光専門家は83%にのぼる。あくまで、ウイルスが封じ込められ、渡航制限の緩和や解除が続けば、との条件付きだが。また、気がかりなロシアのウクライナ侵攻については、国際観光全体への直接的な影響はこれまでのところ限定的だ。ただし、間接的には運賃や宿泊費の高騰につながり、先行きがはっきりしない状況ゆえに、国際観光の回復に遅れが生じる可能性もある。

 

専門家が予測する、国際観光が戻る時期

海外旅行が2019年の水準に戻るのはいつか。2023年と見る専門家は1月の調査では32%だったが、5月に行った最新調査では48%と最も多い。2024年と答えた専門家は1月の64%から、今回は44%へと減った。

 

また、北中南米、アフリカ、ヨーロッパ、北大西洋、中東の4月末までの国際線のキャパシティは、パンデミック前の80%程度に達し、需要もそれに追随している。

2022年第1四半期における予想を上回る業績、フライト予約の大幅な増加、信頼指数による見通しから、UNWTOでは2022年の予測を上方修正した。渡航制限の解除、ウクライナ侵攻の行方、あらたなコロナウィルスの発生、インフレとエネルギー価格高騰など、世界を取りまくさまざまな不確定要素の状況次第だが、2022年の国際観光客到着数は、2019年の55~70%に達すると見込んでいる。