やまとごころ.jp

サステナブル・トラベル 7割以上が重要視も、実際の行動は限定的 ---ブッキング・ドットコム調査

2022.06.27

世界最大級の宿泊予約サイトを運営するブッキング・ドットコム(Booking.com)はこのほど、2022年度版の「サステナブル・トラベル」に関する調査レポートの結果を発表した。日常生活のなかでは環境に配慮した持続可能な商品であることが重要視されるようになってきたが、旅のシーンでも同様の傾向は出ているだろうか。対象は、過去1年間に1回以上旅行を経験し、2022年に旅行する予定がある、日本人の旅行者1003名を含む、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリアなど世界32の国や地域の3万314名で、2021年2月にオンラインでアンケートを実施した。

 

日本人の7割がサステナブルな旅を重要視

まず、サステナブルな旅が自分自身にとって重要であると回答した人は世界では81%、日本の旅行者では73%にのぼった。もはやサステナブル・トラベルは一部の感度の高い旅行者のトレンドにとどまらず、大多数が重要視していることが分かった。

ただし、「今後12カ月間において、よりサステナブルな旅を心がけたいか」と聞いたところ、世界では71%が「はい」と答えたのに対して、日本では46%にとどまった。この46%という数値は2021年の調査と比べると4%増加したものの、世界の旅行者平均と比べると、25ポイントも低い結果となった。

 

旅行中の移動手段、日本と世界で意識に差

世界と比較すると、まだまだ日本におけるサステナブルへの意識の低さが際立つ項目があった。それが交通・移動手段だ。実際に「宿泊施設と旅先までの交通手段を選ぶ際に、提供会社のサステナブルな取組が選択に大きな影響を与える」と回答した世界の旅行者が35%に対し、日本の旅行者は13%しかいなかった。

また、「旅先での公共交通機関やレンタサイクルの選択肢を調べた」と回答した世界の旅行者は22%に対し、日本の旅行者は12%、「二酸化炭素の排出量を削減するためにより近場の旅先に出かけることを選ぶ」と回答した世界の旅行者が23%に対し、日本の旅行者はわずか9%だった。

さらに「積極的にサステナブルな移動手段を探していない」と回答した日本の旅行者は59%にのぼり、31%は「サステナビリティへの取組は移動手段の選択において何の役割も果たさない」と回答している。

 

旅行者は予約前にサステナブルな宿かチェック

過去1年間に「実際にサステナブルな宿泊施設に滞在した」と回答した日本の旅行者は25%と、4人に1人はすでにサステナブルな宿泊を経験済みであることがわかった。そうした施設を選んだ理由をみると、環境負荷低減に貢献するため、地域に密着した体験を楽しむため、コミュニティへの配慮が優れているためといった理由が挙がった。実際に、日本の旅行者の28%は予約前にその宿泊施設が行っているサステナブルな取組を積極的に確認したと回答している。

一方、過去1年間でサステナブルな宿泊施設に滞在しなかった世界の旅行者のうち、31%は「サステナブルな宿泊施設の存在を知らなかった」と回答。さらに29%の旅行者が現在も「サステナブルな宿泊施設を見つける方法がわからない」と答えており、サステナブルな宿かどうか一目でわかる認証バッジの認知度向上や普及も今後の課題となりそうだ。

 

オーバーツーリズムを避ける傾向が顕著に

新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、密な旅行を避ける傾向は継続している。過去1年間の旅行で世界の旅行者の33%は「ピークシーズン以外の時期に旅行することを選んだ」と回答。また、観光客の過密を避けるため、「知名度が比較的低い旅先を選択した」という旅行者も27%にのぼり、世界の旅行者は大型連休や人気の観光地を避けて、より安全に旅行することに意識を向けていることがわかった。

 

機会損失をしないために、情報発信はわかりやすく

今回の調査では、サステナブル・トラベルをしたくても、その情報にたどり着けていない旅行者の姿も見えてきた。例えば、「旅先の地域社会へ確実に還元するため、旅行中は普段より多くのお金をかけても良い」と考えている世界の旅行者が25%いるにも関わらず、34%の旅行者は、「実際に地域社会に良い影響を与え、還元をするための活動やツアーをどこでどのように探せばよいのかわからない」と回答している。旅行者の関心を逃さないためにも、具体的な行動につながりやすい情報の発信を観光事業者側がもっと工夫する余地がありそうだ。

今回の調査を行ったBooking.comのCEO、グレン・フォーゲル氏は「サステナブル・トラベルは単なるトレンドではなく、確実に業界標準になる」との見通しを示した。交通手段や宿泊施設、現地での体験など旅程のあらゆるシーンにおいて、サステナブルな選択肢を誰もが気軽に簡単に選ぶことができるように旅行業界全体で取り組む必要がありそうだ。