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8月限定でノービザ入国再開の韓国、インバウンド誘致で観光需要の回復を目指す

2022.08.10

韓国の中央防疫対策本部は8月8日、この日の新型コロナウイルスの新規感染者が5万5292人だったと発表した。月曜発表としては17週間ぶりの5万人超えで、感染者数は増加傾向にあることがうかがえる。一方、夏のインバウンド需要に合わせて入国規制緩和の動きが顕著に見られ、ビザなし入国が許可された国・地域の数は107になっている(8月4日時点)。今回は、国境を越えた観光の回復を見せる韓国のインバウンド、アウトバウンドの動きを紹介する。

 

日本、台湾、マカオからの“ノービザ”入国を8月限定で再開

韓国政府は8月4日から8月末までの期間限定で、日本、台湾、マカオの3カ国・地域からの観光客を対象に、ビザなし(ノービザ)の入国を認める制度を導入した。ただし、搭乗72時間前までに電子渡航認証システム(K-ETA)で旅行許可を取得する必要がある。

日本を含む外国人観光客による訪韓需要は伸びているが、日本は外国人観光客の入国時にビザ取得を求めているため、相互主義の原則から、韓国では日本人の訪韓にもビザを求めていた。ただし、在外公館でビザの発給に3〜4週間ほど時間がかかり、外国人観光客誘致の足かせとなっていた。ソウル市は、「ビザ免除で不便が改善される」として観光需要の回復に期待を示している。

日本、台湾、マカオの3カ国・地域が選ばれた背景には、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の訪韓者数が多かったことと、現地での訪韓ニーズが高まっていることがある。韓国観光公社によると、2019年の訪韓者数は日本が中国に次いで2位、台湾が3位だった。マカオは域内の感染状況が落ち着いているため、選定の対象となったとみられる。

今回の措置により、同市で8月10日〜14日に開催される大規模な観光フェスティバル「ソウルフェスタ2022」の集客にも寄与するものと見られている。

 

6月の訪韓観光客は前年同月比約3倍の22.7万人

韓国観光公社が7月29日に発表した統計によると、今年上半期に韓国を訪れた外国人観光客は81万172人で、昨年比92.8%増だった。今年6月の訪韓外国人観光客は前年同月比195.6%増の22万7713人となり、コロナ前の2019年6月(147万6218人)と比べた回復率は15.4%だった。今年6月の訪韓外国人観光客の国籍別に見ると米国(5万5444人)が最も多く、次いでタイ(1万6822人)、フィリピン(1万5239人)、ベトナム(1万2884人)、中国(1万2741人)の順だった。

昨年6月比で最も増加率が高かったのは、シンガポール、タイ、マレーシア、香港、日本。韓国とシンガポールは新型コロナウイルスワクチンの接種完了者が隔離なしで往来できる「トラベルバブル」を導入しており、団体客が大きく増えているという。一方、中国からの訪韓客は新型コロナウイルス感染拡大の影響で現地の出入国規制が強化されたため、1.6%減少した。

 

行きたい海外旅行先1位に日本が入るも、厳しい入国条件にキャンセル続出

クレジットカード決済大手のビザが7月11日に発表した、韓国人消費者の海外旅行意識に関する調査結果によると、回答者の82%は海外旅行を具体的に計画していると答え、1年以内に海外旅行に行く計画であるとの回答は59%だった。このうち、一番行きたい旅行先は日本(20.5%)で、以下はベトナム(9.7%)、タイ(8.2%)、米国(6.5%)、シンガポール(5.2%)の順に人気だった。

韓国の旅行・余暇プラットフォーム「ヨギオッテ」が7月28日に発表した調査結果でも、新型コロナウイルスがエンデミックへと収束した後、行きたい海外旅行先で日本が1位(21.9%)を獲得した。海外旅行の計画については、夏休み料金が負担になることから、年末ごろに計画するとの回答が多く、海外旅行の予算は1人当たり平均304万ウォン(約31万円)となっている。

しかし、日本への入国条件の厳しさが影響し、韓国からの訪日旅行はキャンセルが相次いでいるという。現在、日本への旅行は添乗員付きの団体ツアーに限られ、個人での自由旅行は認められていない。ビザの取得も必要で、入国前に受検したPCR検査の陰性証明書の提示なども求められるほか、帰国前にも再び検査が必要となる。こうした理由から欧州の主要国や東南アジアと比較した際に、日本旅行が敬遠されがちになっている。

 

日韓の“ドル箱路線”「金浦=羽田」線再開も、利用者はまばら

こうした中、2020年3月から運航が中断されていた「金浦(ソウル)=羽田(東京)」線が7月25日から毎日運航されることとなった。コロナ禍前の2019年には週84往復を運航し、年間約200万人が利用する「ドル箱」と呼ばれていた路線だが、航空券の価格高騰や、ビザ取得などによるハードルの高さなどから、利用者はまばらな状態が続いている。8月4日から月末までの期間限定ノービザ解禁で、どれだけ利用者が増えるか、注目したいところだ。