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2023年の旅行トレンド予測、数カ月先の旅を検討する割合増加。旅への意欲と確信戻る

2023.03.13

世界最大級のオンライン旅行会社、エクスペディア・グループでは、独自データと調査に基づく旅行者のインサイトを年4回発表している。今年の最初のレポートでは、2022年10~12月期(第4四半期)で得られたデータをもとに分析し、2023年の旅行トレンドを予測している。「検索数の増加」「検索期間の増加」「人気の旅行先」「リモートワークと休暇の融合スタイル」「価格と価値の重要性」という5つのポイントについて詳しく見ていこう。
(図出典:expedia group, Q4 Traveler Insights Report)

 

検索数は、アジアで前年同期比50%以上増加

エクスペディア・グループのサイトで、2022年10~12月期に世界全体で検索された件数は、対前年同期比で10%増加した。特に、アジア太平洋では、中国、香港、日本、韓国、台湾、タイなど多くの国で旅行規制が緩和されたことを受けて、50%以上増えている。

10月3日の週は、カナダ、韓国、タイで規制が緩和されたタイミングと重なり、対前週比の検索数が国内外とも大きく増加。また、年末にあたる12月26日の週も、世界的に対前週比で30%増加。ホリデーシーズンということで旅行への意欲が戻ってきた感がある。

各地域の検索数の推移(対前週比)

NORAM:北米 APAC:アジア太平洋 EMEA:欧州・中東・アフリカ LATAM:中南米 

 

数カ月先の旅行を検討する割合増加

旅行を検索する期間について見ると、今でもまだ旅行者の半分以上が21日以下となっており依然として検索期間は短いが、2022年10~12月期には、2023年の旅行を見据えて旅行開始のだいぶ前から検索する割合も増加した。それだけ旅行に対する確信が増したといえる。コロナ禍では急な変更を余儀なくされる可能性もあり、数カ月以上先の旅行の検索をする余裕がなかったが、規制緩和とともに、少し先の旅行を考える余裕が出てきたのだろう。180日以上の検索は、7~9月期に比べて20%増加した。これは6つある検索期間(0〜21日、22〜30日、31〜60日、61〜90日、91〜180日、180日以上)の中でも最も増加率が高く、中でも欧州・中東・アフリカは60%増加している。

61~90日での検索も世界全体で15%、31~60日は5%増加。いずれも、アジア太平洋と北米での増加が目立った。

また海外旅行の検索でも検索期間を長めにとる傾向は増え、61~90日、180日以上の検索期間は7~9月期より10%増えている。

各地域の検索期間の割合(左:国内 / 右:海外)

   APAC:アジア太平洋 EMEA:欧州・中東・アフリカ LATAM:中南米 NORAM:北米

 

人気の旅行先はビーチと都市部、東京は世界7位に浮上

人気の旅行先ランキングの顔ぶれは、これまでと同様、ビーチと都市部に集中した。世界全体のトップ3は、ニューヨーク、ラスベガス、ロンドンで、さらに米オーランドとメキシコのカンクン、ホノルルがそれぞれ順位を上げ、マイアミ、ドバイも新たにトップ10に入った。北半球の旅行者が暖かな土地を旅行先に選ぶ傾向は、2021年から変わっていない。東京も新しく全体のトップ10入りを果たし、7位につけた。また、日本は国別でも、韓国から日本への検索が40%増加したことで、35位から25位へと順位を上げている。

各地域の予約先トップ10ではアジア太平洋地域で東京、ソウルに続き、大阪が新たにランクイン。その後、シンガポール、バンコクとアジア圏が入り、ついでロンドン、シドニー、パリ、メルボルンと長距離の行き先が並び、最後に台北が新たにランクインした。欧州・中東・アフリカ地域ではローマ、中南米地域ではメキシコのプラヤ・デル・カルメン、北米地域ではホノルルが新たにトップ10に加わった。

各地域における旅行者の予約先トップ10

 APAC:アジア太平洋 EMEA:欧州・中東・アフリカ LATAM:中南米 NORAM:北米

 

リモートワークと休暇の融合スタイルへの需要が高まる

世界中の企業で、flexible(柔軟な)働き方が広がる中、flexible+vacation(休暇)を合わせたflexcation「フレックスケーション」、もしくはblended travel「ブレンデッド・トラベル」と呼ばれる旅行スタイルが増加中だ。これは、リモートワークと休暇をミックスした長期滞在を意味するが、エクスペディア・グループが発行する「Travel Value Index 2023」によると、28%の消費者は、これから12カ月の間にフレックスケーションを検討したいと回答している。

この傾向は、エクスペディア・グループのフライトデータでも見られ、2021年と比べて旅行期間は平均的に長くなっている。北米の旅行者にとくに顕著で、2022年10~12月期の旅行期間は、前年同期に比べて10%長かった。

また、エクスペディアのサイトや、ホテルズドットコムでは、「ビジネスフレンドリー」という検索フィルターが使われる割合が大幅に増加。Wi-Fiや朝食付き施設の検索が増え、2022年10~12月期にはこの検索フィルターの利用が3桁の伸びを見せた。

 

優良顧客への特別価格や価値の提供がますます重要に

経済的な逆風の中、2022年7~9月期のレポートでは価格に敏感な旅行者が増えていると報告されたが、その傾向は10~12月期も同様だ。旅行への意欲は高いものの、旅行者はより、価格と価値を重要視すると思われる。先ほども引用した「Travel Value Index 2023」によれば、旅行のあらゆる場面で低価格が最も重要と答えた旅行者は3人に1人。特に優良顧客に対しては、特別割引価格を設定するだけでなく、限定特典や特別な体験を提供することで価値を示すことが、ますます重要になっていくだろう。

 

2023年6月以降は東京、ニューヨークなど文化豊かな大都市が人気に

2022年第4四半期は、半年以上先にあたる2023年第3四半期(6月~9月)の旅行検索で前年同期を大きく上回り、旅行者が強い旅行意欲を持ち、事前の準備期間が長くなっている可能性を示した。ロンドン、シカゴ、サンフランシスコ、ボストンといった都市滞在型休暇の目的地は2022年第3四半期に予約された目的地の世界トップ10リストに登場したが、2023年第3四半期でも目的地トレンドの指標となる可能性がある。

また、エクスペディア・グループの2023年の旅行者動向では、大都市や文化の中心地が旅行の目的地として人気を回復していることも指摘されており、2023年に芸術や音楽、文化のイベントが復活した場合、ダブリン、ニューヨーク、東京、シドニーなどの都市が人気を集めると予想されるとレポートは結んでいる。