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持続可能な地域づくりを皆で考え行動の契機に。ビジネスカードゲーム「SDGs×観光まちづくり」とは?

2023.05.12

人口減少をはじめとする諸課題で地域の活力の維持が危ぶまれるような地方部では、昨今、特に関係人口づくりに向けた施策が講じられている。その一方で、自然環境保全やツーリズム産業における雇用の安定化の視点からも、観光を通じた「持続可能」なまちづくりの重要性は高まるばかりだ。

他方、その実現には、観光客を受け入れる事業者に加え、DMOや観光まちづくり会社などの支援組織、1次産業や基幹産業の従事者、住民、自治体など、多様な関係者と共通の認識を持つことが欠かせない。とはいうものの、異なる利害関係を持つ人たちと合意形成を得るのは非常に難しい。

そこで、持続可能な観光地域づくりを疑似体験できるビジネスカードゲーム「SDGs×観光まちづくり」が開発された。今回は開発に携わった株式会社J&J事業創造 開発本部副本部長の野口優史氏に、カードゲームの全容や魅力、今回の取り組みが「持続可能な観光地域づくり」にどのように生かせるかを伺った。

 

持続可能な観光まちづくりを楽しみながら体験するビジネスカードゲーム

このビジネスカードゲームは、ある地域・まちで「観光を手段として持続可能なまちづくりを実践する」をテーマに、参加者が地域のプレイヤーとなり、「地域の魅力を高める」という共通のゴールに向かって、他のプレイヤーと協力しながら事業を展開していく。一言で表せば、魅力的な地域づくり・まちづくりシミュレーションゲームだ。

ゲームのタイトルにもなっている『観光まちづくり』とは、地域が主体となり、地域の観光資源を利活用しながら、地域外からの関係人口を拡大するためのさまざまな取り組みを行うことで、地域を活性化させ、持続可能な魅力ある地域を実現することを指す。

野口氏「ビジネスカードゲームでは、『観光地』を作るのではなく、観光を手段にした『まちづくり』をテーマに展開していきます。人口減少や高齢化などの課題を抱える地域が、将来にわたり持続する方法を考えていきます。官民の様々なセクターの人たちと連携しながら、地域の魅力を高めていくためにさまざまな事業を展開していく。そういったことを疑似体験できるゲームです」


▲ビジネスカードゲーム「SDGsx観光まちづくり」でつかうカード(イメージ)

 

12のプレイヤーに扮し、10年後の魅力的な地域を作り上げる

プログラムは、ゲームでの体験を実際の観光まちづくりにつなげるためにも、前半の「ビジネスカードゲーム体験(約3時間)」と後半の「ゲームで得た気づきを具体的なアイデアや行動につなげるワークショップ(約3時間)」の二部構成となっている。

前半のビジネスカードゲームは、「地域・まちの10年後を作る」をテーマに、12人以上の参加者が、立場や役割の異なる12のプレイヤーに扮する。参加者は、自身に与えられた役割やミッションを果たしながら、地域の魅力を高めるために他のプレイヤーと協力・相談し、事業を展開していく。

12のプレイヤーは、観光客を受け入れる「交通事業者」「宿泊事業者」「旅行会社」「観光施設」「小売店」「飲食店」、地域の基幹産業となる「メーカー」「1次産業従事者」、地域づくりの旗振り役である「行政」「観光まちづくり会社」、それに「大学」「地域住民」が設定されている。現実世界と同じく、多くの異なる立場の人々がゲームに登場するが、それぞれが抱く志や達成すべきゴールは異なる。 と同時に、全てのプレイヤーは「10年後の地域の魅力を高めること」という共通の目標を持つ。具体的には、4つの地域の魅力メーターである『自然・文化・歴史』『食と買い物』『観光施設』『顧客体験』が、ゲーム終了時点で極大化できれば、それが最良の結果といえる。


▲12のプレイヤーと協力しながら、4種類の「地域の魅力度」を高めていく

そして後半のワークショップでは、ゲームで得た気づきや学びをもとに「わが地域・わがまちの未来をどうしていくか?」をグループごとに話し合う。ここでは、10年先の未来の「ありたい姿」を起点に、そこから逆算して「今、何をすべきかを」考えるバックキャスティングの思考法を用いて、参加者に考えてもらう。

 

「まちづくり」に必要なことを学べる3つの仕掛け

このビジネスカードゲームでは、まちづくりに必要な要素を体験できるよう、いくつかの工夫がなされている。

1つ目は、各プレイヤーに “自分の目標を達成する”と “地域の魅力を上げる” という2種類のゴールが与えられる点だ。自身の目標だけを達成しても、地域全体の魅力が低い状態でゲームが終わってしまうこともある。そうならないよう、個人の目標と地域の目標の整合性をとりながら、活動することが求められる。

2つ目に、各プレイヤーにはあらかじめプロジェクト推進に必要となるお金が一定額渡される。ただし、与えられた金額は、自身のプロジェクトを推進するには十分ではないことも多い。必要に応じて、資金を調達する方法を考えたり、他のプレイヤーと協力することが必要となる。

3つ目に、各プレイヤーは、どの事業を実施するか、複数ある事業カードから選択するのだが、「どのタイミングで事業を実施するか」によって、地域の魅力メーターの上がり下がりが変動する。そのため、参加者全員で事業を行う内容やタイミングも相談しながら進める必要がある。


▲説明資料片手に、カードを広げながらゲームが進んでいく

野口氏「ゲームを進めるには『協力』無しには進められない設計となっています。必然的にコミュニケーションが増え、チームワークを高めるきっかけとなります。持続可能な観光まちづくりを実践するうえでも必要なことを体験できるようにしています」

 

プレイヤーになりきり、まちづくりに必要なプロセスや難しさを体感

地方創生やまちづくりを進めるにあたり、「いかにして、関係者が地域のためという共通の認識を持てるようにし、まちづくりのプロセスに巻き込んでいくか」「いかに熱量を持って地域づくりに関わる人を増やすか」といったことは、重要な要素として挙げられる。ただし、異なる利害関係者が同じ方向を向き、共にプロジェクトを進めることは、時間もかかる上に、非常に難易度も高い。それ故、多くの地域が共通して抱える課題として挙げられるが、ビジネスカードゲームがそうした課題解決の糸口となる可能性もある。

野口氏「ゲームを通じて、コミュニケーションをとる中で、各プレイヤーの役割やミッション、想いを知ることになり、立場の異なるプレイヤーの相互理解を進めるきっかけになります」

▲参加者は皆真剣そのもの

 

ビジネスカードゲームの体験を「わがまち」に置き換え、行動を促す

地域の課題解決には、地域への想いなどの熱量を高め、連携することも重要となる。そのため、前半戦のカードゲームで、全員で地域の魅力アップに取り組み参加者の熱量が高まったところで、後半のワークショップに入る。

前半のビジネスカードゲームでは、全員が全く同じように行動すれば、いつどこでやっても同じ結果になる。大切なのは、前半のゲームで得た気づき学びをシェアし、最終的には『自分たちの地域ではどう取り組めばよいのか』を考え、参加者1人1人の具体的な行動につなげることだ。

野口氏「『自分自身の目標は達成できたけど、地域の魅力は低いままに終わってしまったのはなぜか』『どうすれば、地域全体の魅力を高められたのか』といったことを話し合うなかで、様々なプレイヤーと密にコミュニケーションをとり、連携することの重要性に気付くこともできます」
「最終的には、『地域の事業者の方とこんなことができそう』『あの人に、相談してみよう』など、具体的なアクションプランを頭の中にもって、実際に行動に移そうという意欲をもって参加者が会場をあとにする、そうなることを目標に取り組んでいます」

 

持続可能な観光まちづくりに対する意識醸成への仕掛け

2023年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画でも「持続可能な観光地域づくり」が掲げられるなど、SDGsに基づき持続可能性に配慮した観光まちづくりをすることが求められている。

そのため、このビジネスカードゲームでも、SDGsとの関連性も学べるようになっている。カードにはSDGsのゴールが書かれており、事業やまちづくりとSDGsのつながりがわかるようになっている。

さらには、5年後、10年後、その先を見据えて、観光地としての魅力を磨き続けられるように、地域の皆が一緒に計画的に取り組んでいった結果が、地域の宝となり観光資源となる。そして、その観光資源の保全と活用の両輪で取り組むことで、まち全体が、SDGsのゴールにも到達する。それが、体感できるようになっている。

野口氏「後半のワークショップで、ファシリテーターが『お子さん、お孫さん世代のためにどんな地域を残したいですか』と参加者に問いかけます。そうした問いを通じて、『なぜ持続可能な観光まちづくりが必要なのか』『SDGsと観光まちづくりがどう繋がっているのか』『そのために、わたしたちはどう行動すればよいのか?』といった気づきも、得てもらいたいと思っています」


▲プログラム全体を進行するファシリテーターの存在が欠かせない

 

自治体・DMOはじめ、まちづくりに関わる全ての人が参加できるプログラム

ゲームは、地域観光に携わる自治体、DMOの担当をはじめ、まちづくりに関わるすべての人を対象としており、高校生以上であれば、誰でも参加できる。

野口氏「ビジネスカードゲームが、より多くの人が観光まちづくりに関わるきっかけにしたいです。また、このゲームを「地域・まち単位」で実践すれば、より一層、関係者間のコミュニケーションや熱量を増やしたり、チームビルディングにも役立てることができます」

今後、東京・名古屋をはじめ、全国各地でビジネスカードゲームの体験会を開催する。また、このプログラムを通して日本全国で観光まちづくりをともに啓発していく仲間として、公認ファシリテーターを担う人材育成の事業も並行して実施する予定だ。

あなたのまちでも、ビジネスカードゲームを使ってSDGsや観光まちづくりを楽しく学ぶ機会をつくってみてはどうだろう。

 

▶ビジネスカードゲーム・体験会の問い合わせはこちら

株式会社J&J事業創造 遊佐(ゆさ)
連絡先:tomohiro_yusa@jjbd.jp

 

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