インバウンド拡大に向けた新計画発表、「ビジネス」「教育研究」「文化芸術」など新分野を柱に
2023.06.01
岸田文雄首相は5月30日、観光立国推進閣僚会議を開催し、「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を決定した。
これは、政府が3月末に発表した「観光立国推進基本計画」のなかで掲げた、2025年までに訪日外国人旅行消費額の5兆円早期達成と、訪日外国人旅行者数を2019年水準の3200万人超えの実現に向けた具体的な施策を示したもの。このアクションプランで掲げられた施策を着実に実行し、持続可能な形で観光立国の復活を実現していく。
今回発表されたアクションプランは、これまでの「外国人観光客を呼び込む」という観点からさらに視野を広げ、インバウンド需要をより大きく効果的に根付かせる方策を取りまとめたもの。従来は必ずしも「観光」の観点からは重視されていなかった「ビジネス」「教育・研究」「文化芸術・スポーツ・自然」という3つの新しい分野を柱とした。合計約80の施策を通して、国際的な人的交流を伴う取り組みの掘り起こしと深化により、インバウンドの着実な拡大を目指す。
ビジネス分野:人の動き促進、人的交流とネットワーク拡大で消費単価増へ
ビジネス分野では、モノの流れのみならず、ヒトの動き促進に注力する。日本を舞台とするビジネス交流を拡大させ、日本を国際的なビジネスネットワークのハブとすべく、新たな価値の創造と発信を通じて、世界経済におけるプレゼンス向上を図る。
具体的には、「投資拡大の機会を捉えたビジネス交流の促進」「国際金融センターとしての日本の地位向上」「外国人への医療提供」「ビジネスマッチングによる海外企業との交流拡大」「国際会議・国際見本市の開催・誘致」「産業資源の活用による新たなビジネス交流需要の獲得」「世界のリモートワーカー誘致を含む人的交流促進」など40の施策を掲げた。ビジネス交流はより高い経済効果も見込める上に、ビジネス客は消費単価の高いリピーター客ともなりうるとして、以下の3つを目標に掲げている。
・ビジネス目的の訪日外国人旅行消費額、2025年までに8600億円(2019年比2割増)
・展示会や見本市への外国人参加者数を、2025年までに16万7000人(2019年比2割増)
・2030年までに国際会議開催国としてアジアNo.1の不動の地位を築き、世界5位以内に押し上げる
教育・研究分野:国際会議の誘致及び、研究者や留学生の受け入れ強化
教育・研究分野では、大学等の研究力を強化し、海外の研究拠点呼び込みや、国際学会の積極的な開催・誘致を通じて、日本の大学や研究機関のレベルアップや、外国で得た技能や知識を母国へ還元させるような取り組みを推進する。また、留学生の受入れ促進や教育の国際化に取り組み、教育分野の人的交流も促進する。
具体的には、「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の推進」「世界トップレベルの研究人材の交流促進」「留学生等の積極的な受入れ」「国際学会の積極的な開催・誘致」など13の施策を掲げ、以下の2つを目標に掲げた。
・海外からの研究者の受入れ数、2025年まで1万6千人(2019年比2割増)
・科学技術・自然・医療・社会分野等に係る国際会議への外国人参加者数、2025年までに18万6千人(2019年比2割増)
文化芸術、自然、スポーツ:戦略的な展開、世界的に訴求できるコンテンツ造成
3つ目の文化芸術・自然・スポーツ分野に関しては、まず、日本の文化芸術の国際発信強化とグローバル展開には、ビジネスの考え方を採り入れることが欠かせない。そのためには世界的に訴求できるコンテンツを創造し、グローバルかつ戦略的に展開していくとともに、海外に開かれた国際的な文化芸術拠点となるための環境づくりが必要となる。具体的には、「海外向けコンテンツビジネスの育成・発展」「スポーツコンテンツビジネスの国際展開とスポーツツーリズムの推進」「ナイトタイム等におけるコンテンツの充実」「少人数限定の宿泊体験・体験型コンテンツの提供」など25の施策を掲げ、以下の2つの目標達成に向けて取り組む。
・世界のアート市場における日本の売上額シェア、2025年に7位(現在ランク外)
・スポーツを目的とした訪日外国人旅行者数、2025年に270万人(2019年比2割増)