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11月11日、世界最大級のECショッピングイベント「独身の日」、2023年中国EC大手の動きは?

2023.10.31

中国で毎年11月11日に祝われる「独身の日」。ネットショッピングセールが全土で繰り広げられ、その規模や世界最大級とあって世界での注目度も高い。昨年はゼロコロナ政策で個人消費が低迷する中、例年発表されていた取引成立額が発表されず、これまでの熱狂ぶりにもやや陰りが見られたが、今年も11月11日を前に、すでにキャンペーンが始まっている。今年で15年目を迎えるこのイベントの成り立ちを振り返りながら、ECサイト大手各社から発表されている、今年のセール動向をお伝えする。

 

「独身の日」とは?

中国で「W11(ダブルイレブン)」「双11」「双十一」などと呼ばれるこのショッピングイベント。そもそも11月11日が独身の日と呼ばれるようになったのは1990年代のこと。シングルを意味する「1」が並ぶことからこう呼ばれ、この日に大学生が独身者同士集まってパーティーや独身者向けのイベントを行うようになったことに端を発する。やがて独身者たちがお互いに贈り物をしあうになると、それに目をつけたのが、中国のEC市場を牽引する最大手、アリババグループ。独身者をターゲットに、大規模なネットショッピングセールを行い、予想を上回る売り上げを記録した。その後、ほかのネット通販各社も参入し、さらにデパート、スーパーの小売業界全体が大々的にセールキャンペーンを繰り広げる一大商業イベントへと発展した。

 

「天猫」「淘宝」、PR用動画に前年比4倍の制作費投入、10億人の参加を見込む

2009年、独身の日に初めて行われたネットショッピングセールは、1日限りの24時間オンラインセールだった。現在では10月下旬から11月中旬の数週間にわたって開催される。中国最大手で、ブランドや大企業が出店するECサイト「天猫(Tmall)」と、小規模小売業者向けのECサイト「淘宝(タオバオ)」を運営するアリババグループでは、10月24日にキャンペーンが始まった。11月11日まで19日間にわたってセールを展開する。10月24日から31日に予約販売を行い、消費者はほしい商品の手付金を払い、商品を買い物カゴに入れる。この時点ではまだ購入は成立しない。購入期間は10月31日夜から11月3日と、11月10日から11日。2段階に分けることで、スムーズな配送管理につなげようとの狙いだ。

このセールでPRされるのは、過去最大の100万を超えるブランドの商品。宣伝用のショート動画の制作費用は前年の4倍にのぼる。世界的な経済不安に見舞われる中、多くの消費者はお買い得品を求めているが、天猫(Tmall)と淘宝(タオバオ)には、消費者がとっておきのお買い得品を見つける手助けをしてくれるAI機能もある。アリババでは、約10億人がこのセールに参加をし、8000万点以上の商品が今年最安値で販売されると見込む。

 

中国2番手のECサイト「京東」、目標は8億点の最安値販売

天猫(Tmall)、淘宝(タオバオ)と並び、中国のEC市場で大きなシェアを占めるのが、「京東(JD.com)」。市場シェアでは、天猫に次ぐ2番手で、家電・デジタル製品などの販売に比較的強い。独身の日に向けて、京東でも10月23日から大販促キャンペーンをスタートした。キャンペーン期間は11月13日まで。こちらは予約販売でなく、在庫を直接販売するという。

各大手ECプラットフォームでは、独身の日のイベントでの「ネット最低価格」を続々と打ち出しているが、京東でも、このセール期間中、「商品8億点を『最低価格保証』適用対象にする」としている。

価格競争のほか、独身の日のイベントに合わせ、各社では物流面でも工夫を行っている。京東では、3-5キロメートル以内の消費者が商品を購入した際、発送から商品到着まで1時間以内という「クイックコマース」サービスを始めた。

天猫(Tmall)や淘宝(タオバオ)、京東(JD.com)のほか、ショート動画プラットフォーム「快手(クアイショウ)」や、SNS、ECプラットフォームとして知られる「小紅書(RED)」も独身の日のイベントへの参入を表明している。

 

インバウンド旅行業界でも「独身の日」イベント

中国本土で始まった独身の日のネットショッピングイベントだが、今では台湾、そして、中華系住民が多く住むタイ、マレーシアを中心とした東南アジアにも拡大している。

旅行業界でも、独身の日にちなんだ企画が予定されている。アジア最大級のオプショナルツアー予約サイトを運営するKKdayでは、台湾人の旅行者をおもなターゲットに、独身の日の企画として、長野県軽井沢の観光スポットを巡る、新宿発の日帰り婚活バスツアーを実施するという。

独身の日イベントがピークとなる11月11日、オンライン上でも、またリアルでも、今年はどんな盛り上がりの歓声が上がるのか、引き続き注目したい。