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2024年の中東市場、4月以降の訪日需要増へ期待、スピードと柔軟性が最大のカギに

2023.12.20

本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。

 

2024年インバウンド動向予測 

 

株式会社ジェイ・リンクス 代表取締役 金馬 あゆみ

 

 

ビザ緩和が進む中東市場のいま

中東市場は、一言で言うと「夜明け前」。これから確実に伸びていく市場だと思う。

湾岸諸国(アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタール、クウェート、バーレーン、オマーン)に対するビザ緩和は年々進み、直行便の再開やエティハド航空のアブダビ⇔大阪(関西)新規就航など、アクセスも良くなってきている。JNTOのドバイ事務所も積極的なプロモーションを行っており、2023年の訪日外客数を見ても対2019年比の伸率は全地域で上位に入っている。

2024年3月にはカタール航空のドーハ⇔大阪(関西)線が再開し、JALも日系航空会社として中東との初の直行便であるドーハ⇔東京(羽田)線の運航をデイリーで開始する。また、日本とサウジアラビアの航空会社が、関西空港、中部空港に加え、成田空港とサウジアラビアとの間の運航ができる枠組みが設定されたことが先日国土交通省より発表された。

 

ラマダン明けの4月上旬以降の需要拡大、桜鑑賞目的の東北訪問増にも期待

弊社では2023年5月にドバイで開催された中東最大の国際旅行博アラビアントラベルマーケットに出展し、現地エージェントやお客様と日々やり取りしているが、初来日とリピートの両方で私たちが予想する以上に需要が高まってきていることを感じている。

次のピークは桜のシーズンだが、2024年はラマダン(断食月)の期間がおおよそ3月10日~4月8日のため、関東以西では時期を逃す可能性がある。それでもラマダン明けの休暇のため、弊社でも2023年を上回るペースで訪日旅行のリクエストや予約が入ってきている。桜が見られるということで、2024年は東北などまだあまり訪問されていない地域にも、この機会に目が向いて欲しいと思っている。

 

スピードや柔軟性がカギの高付加価値市場、一歩踏み出す勇気を

一方で、高まる需要に対して国内の受入環境が整っているかというと、決してそうとは言えない。ゴールデンルート以外では、良いところが見つかったとしても、周りに適切な飲食店や宿泊施設、移動手段がなければ諦めざるを得ないことがある。特に高付加価値旅行者の場合は対応のスピードや柔軟性が求められるが、それが叶わず失注に繋がることが多く、長年の悩みの種である。

また、中東市場に興味を持つDMOや観光協会、自治体は増えつつも、「ややこしそう」「面倒くさそう」と思われることも多く、一歩を踏み出すところはまだ限られている。食事を含め宗教の戒律にどう対応すれば良いか、不安を抱えられることも多い。

実は弊社も当初は同じ理由で中東市場どころかイスラム圏を頑なに避けていたのだが、彼らの人となりや具体的な対応方法が分かれば、打ち手は見つかる。2024年はこれまで培った知識や経験を伝えることにも力を入れ、新たに中東市場に参入を希望するところと一緒に取り組んでいきたいと思う。

チャレンジする価値は大いにある市場である。

 

著者プロフィール
アルゼンチンでの日本語教師や帰国後の貿易商社での海外営業を経て、2008年に株式会社ジェイ・リンクスを設立。湾岸諸国を中心とした中東地域を主な対象とし、インバウンド事業、輸出事業、イベント事業などを手掛ける。近年は現地でのプロモーションや、現地ネットワークと現場の一次情報を生かした現地調査サポートおよびアドバイザリー業務なども行っている。