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九州のインバウンドの鍵を握る「福岡空港」の現在とこれから

2026.08.31

国を挙げて、「都市から地方へ」とインバウンドの流れを広げようとしている。その状況で直行便の就航は、インバウンド集客の大きな鍵となる。九州への外国人入国者数の65%を占める福岡空港は、東アジア、特に韓国、台湾、香港と地理的に近いこともあり、コロナ禍以降、国際線旅客が大きく回復している。リニューアルを続けながら、「東アジアトップクラスの国際空港」の実現を目指す福岡空港。九州・山口各県のインバウンド集客に直結する福岡空港の戦略、現在と今後の目標をレポートする。

 

地方空港最大級の国際線

福岡空港といえば、都心部へのアクセスが非常に便利な空港として知られている。福岡市地下鉄を利用すれば、交通拠点の博多駅へは約5分、中心部の天神へは約11分という利便性を誇る。

以前は滑走路1本で過密な離発着をさばく、日本で最も混雑する空港だった。しかし、2025年3月に第2滑走路の供用が始まり、航空機の発着能力が向上。さらに、2025年12月には国際線ターミナルの一連の増改築工事が完了し、より快適で機能的な施設へと生まれ変わった。現時点(2026年8月)で、国際線は24路線(うち運休7路線)に就航している。

▲20路線以上が運航されている(2025年12月時点)

2025年度の総旅客数は全国4位(約2883万人)、国際線旅客数も全国4位(約939万人)となった。国内の主要5国際空港をコロナ禍前と比較すると、福岡空港国際線の旅客数の伸び率は第1位となり、地方空港として大きな存在感を持っている。

注目したいのは、旅客数の伸びだけではない。空港そのものの快適性や利便性も向上している。出発エリアの保安検査場は移転・拡張され、面積は従来の約5倍に。スマートレーンを7台導入し、処理能力はこれまでの約2倍となった。免税店エリアもウォークスルー型となり、今までの4倍の面積を誇る。福岡・九州の食を楽しめるフードコートも人気を博している。

こうしたリニューアルは国際的にも認められている。英国の航空・空港評価の専門機関SKYTRAXが実施する空港格付制度では、世界最高評価となる「5スターエアポート」を獲得。さらに、世界三大デザイン賞の一つである「iF Design Award 2026」を受賞し、機能性とデザイン性についても高く評価されている。

 

東アジアトップクラスの国際空港を目指して

福岡空港を運営する福岡国際空港株式会社(以下FIAC)は、将来のイメージとして「比類なき東・東南アジアの航空ネットワークを有する、東アジアトップクラスの国際空港」と掲げる。

▲九州・日本らしさを演出する免税店のロビー中央。九州産の日本酒の試飲もできる

2048年には総旅客数3500万人(国内線1900万人、国際線1600万人)を目標としている。2027年度には、国際線ターミナル南側コンコースの延伸と、ビジネスジェット専用施設の完成が予定されるなど、さらなる受け入れ体制の強化が進められている状況だ。

また、航空旅客の更なる利便性向上のみならず、地域経済の活性化や福岡・九州の街の魅力向上・賑わい創出を目標に、2027年夏頃の開業を目指し、商業施設やホテルなどを備えた複合施設の整備も進められている。

筆者自身、日本人向けの福岡空港発海外旅行サイト「Fly from Fukuoka」を運営しているため、これまで度々福岡空港を取材してきた。旅や出張での利用には、「便利で快適。グルメやショッピングも楽しいので、2、3時間前に入って楽しもう」と伝えている。地域住民にも、「食事をしたり、のんびり飛行機を観ながら過ごしたり、旅気分を味わえる場所」として紹介している。
Fly from Fukuoka 

 


さらに外国人旅客数、海外路線を伸ばすために

空港機能の拡張、拡充は着々と進んでいる福岡空港。では今後、外国人旅客数をさらに伸ばし、アジア以外の地域、特に欧米豪路線の就航を獲得し、利用者の満足度をあげ、収益性を高めていくには何が必要なのか。


福岡国際空港(株)空港営業本部長の安藤 愛介氏(上写真)に、今後の戦略について伺った。

1. 韓国観光公社との業務提携
2026年4月7日、韓国観光公社と福岡国際空港株式会社は、九州地域における海外旅行需要の活性化と、訪韓日本人観光客の拡大を目的とした業務協定を締結した。

福岡空港からの2025年の日本人出国者は82万人で、コロナ禍前の約8割にとどまっているが、そのうち渡航先は韓国が約50%を占めるという。福岡空港とソウル、釜山を中心とした韓国路線は、搭乗率も高く、搭乗者は韓国人8、日本人2の割合で推移しているとのこと。今後は、日本人、特に若い層の韓国渡航をさらに促進しようという狙いがある。

安藤氏はこう語る。
「韓国はフライト時間が短く、隣の国、一番近い海外で、歴史的なつながりも強く、特別な関係です。福岡には韓国観光公社があり、パスポート取得キャンペーンなども協力して行っています。航空会社・旅行会社と連携した共同プロモーションなども、将来への投資と考えて推進しています」

2. 欧米豪路線の誘致
一方で、福岡空港にとって今後の大きな課題の一つが欧米豪路線である。

唯一の欧州路線であった夏期のフィンエアーの福岡-ヘルシンキ路線は、コロナ禍やウクライナ紛争の影響もあり、現在も運休状態が続く。また、福岡からのアウトバウンドでも目玉だったハワイアン航空のホノルル直行便が、2025年11月をもって運休した。

東アジア、東南アジアからの旅行者は多いが、欧米豪の路線がないことは、福岡空港だけでなく九州のインバウンド全体にとっても課題となっている。欧米豪からの旅行者は、消費額、特に宿泊費が高く、訪問エリアでの滞在日数も長い傾向にある。福岡市内の高級ホテルにヒアリングした際に「平均で3連泊程度、ホテルを起点に九州各地に専用車、ガイド付きで九州各地、例えば宮崎の高千穂にも日帰りで足をのばすお客様も多いです」という話をきいた。福岡へ直行便が就航すると、福岡から九州各地へ旅する人が飛躍的に増えると考えられる。

安藤氏は、「今、北米を発着する路線を誘致しています。九州はビジネスクラスの需要が少ないと言われることもネックになっていましたが、その需要を見込めることも含めて交渉しています」と語る。路線誘致に一定の手応えを感じているようだ。

3. ビジネスジェット専用施設
2027年度内の完成を目指すビジネスジェット専用施設は、「発表と同時に注目を集め、問合せも多かった」と安藤氏はいう。利用者にとってどこまでシームレスな環境を実現できるかが今後のポイントとなる。

 


インバウンドを伸ばすなら、アウトバウンドも伸ばす

筆者が福岡のタウン情報誌の付録で海外渡航を中心とした旅行情報誌の編集をしていた1990年代後半は、国際線ターミナルも地下鉄「福岡空港駅」に直結していたため、地下鉄沿線にあった自宅からリアルに30分でチェックインカウンターに立つことができた。

今は地下鉄駅がある国内線ターミナルからシャトルバスで国際線に移動が必要だが、それでも都心に近い利便性を十分に感じることができる。

▲日本の四季を感じさせる搭乗待合室。博多織を使った椅子に加え、充電用電源も充実

当時は円高で、バブル経済の名残もあり、日本人が旺盛に旅に出ていた。また、今のようにインターネットで情報を得られるわけではなく、ガイドブックや情報誌で旅の情報を得ていた時代。福岡都市圏というマーケットに向け紙媒体で情報を発信する立場として、マニュアルカメラと三脚を持って、1カ月半に1回は世界各地の取材へ旅立っていった。そこで現地の流行や嗜好性をみて、日本へのインバウンド、特に九州への個人旅行を伸ばしたいと思ったのが2001年で、そこからインバウンドビジネスをスタートした。ちなみに、日本へのインバウンドが、アウトバウンドを上回ったのは、2015年のこと。つい10年前である。

筆者も常々、研修や講義で「インバウンドを増やしたいならアウトバウンドを拡充、日本人が海外へ行くことが重要」と説いている。ターゲットのトレンドや傾向を理解できることはもちろん、「海外からの旅行者は何に困って、何を欲しているのか」を体感できるからだ。

また、航空路線の多くは外資系の航空会社が運営し、少しでも収益性が悪いと撤退の判断も素早く行う。今まで航空会社や旅行代理店との業務の中で、インとアウトのバランスについて下記のような共通の認識がある。 

航空会社全体でみれば搭乗率が高いほどよいが、航空券やパッケージは発地側での売上となるので、日本側が利益を得るには日本発の旅行を販売することが必要になる。インバウンド50:アウトバウンド50の両思いが理想的であるのはいうまでもないが、今はインバウンドの乗客が9割以上を占める路線も多い。インバウンドが多いからと言って手放しでは喜ぶことはできない。経済や政治的状況でインバウンドが激減するとすぐに撤退されてしまう。最低でも1割〜3割は日本人が乗って路線運航を下支えする必要があるし、今までお話したように、福岡空港もアウトバウンドを促進するキャンペーンやプロモーションを様々に行っている。

福岡空港の魅力の一つに、コンパクトでありながら機能が充実し、乗り継ぎの移動距離も短くて便利という点が挙げられる。バンコクのスワンナプーム空港や韓国の仁川空港を利用して思うが、移動や乗り継ぎに大変時間がかかることも多い。広くて路線が多い大規模空港だからといって使いやすいわけではない。

福岡空港からは仁川や香港を経由した乗り継ぎもしやすく、空間も快適、都心部に近い。こうした唯一無二の魅力をさらに磨き、インバウンドもアウトバウンドも伸ばし、福岡・九州と世界をつなぐ拠点になるよう期待したいし、筆者も双方向のプロモーションに努めたい。