第38回 中国人はなぜ海外ショッピングが好きなのか
2016.04.14
中国の個人消費、特にハイエンド消費が海外流出しているのは、近年の消費市場における大きな特徴だ。中国人観光客の海外消費額は数年間連続で世界一をキープしているだけでなく、クロスボーダーECや海外からの代理購入といった消費形式の増加も注目を集めている。目次: 品質を買う 目新しさを買う ブランドを買う
なぜ人々は、わざわざ海外を訪れて買い物をするのだろう? 国内市場の商品供給と消費者の期待には、どのような「ずれ」が生じているのだろうか。供給側の構造改革と組み合わせ、海外に流出した購買力を呼び戻すにはどうすべきか。
目新しさを買う 中国の消費財市場は供給が十分だが、個性的なニーズを満たすという面では、多くの細分化された産業が先進国に大きく遅れている。 瀋陽のある留学仲介サービス企業で働く劉慧さんは日本を何度か旅行で訪れているが、出国前には友人が詳細な買い物リストを送りつけてくるという。その内容は、目薬、軟膏、サプリメント、シャンプー・リンス、ヘアカラーなど様々。 「日本の商品は種類が本当に多い」と劉さんは語る。ドラッグストアのマツモトキヨシはほとんどが2階建てで、1階はスキンケア用品や薬品、入り口付近の商品は売れ筋商品だ。2階は健康食品やコスメ、美容器具などが置いてあり、本当に数えきれない。 劉さんは「ここ数年、4~5回東京を訪れているが、ドラッグストアに行くたびに新しい発見がある。軟膏一つをとっても、腰痛、足の痛み、肩こり、ひざの痛みに効く異なる商品があり、特徴がはっきりしている。ここまで高い革新力と細分化された市場、豊富な商品は中国では見ることができない」と語る。 日本旅行業協会の統計によると、昨年の10月1日からのメーデー休暇には約40万人の中国大陸部の観光客が日本を訪れ、消費額は1000億円に達した。中でも、日用品の消費が明らかに増加した。 中国の消費財市場を国外と比べてみると、携帯電話や家電などの差は縮まったが、製品の革新力や更新のペースを見ると、化粧品、家庭用品、医療・ケアなど多くの細分化市場において、その供給能力は先進国にまだ後れを取っている。 調査によると、中国は米国と日本に続く世界第3の化粧品市場だ。中国には正式に登録された化粧品メーカーが3000社以上あり、ブランドは1万以上ある。ところが、グローバルブランドが80%のシェアを占めており、中国の化粧品メーカーはミドル・ローエンドに位置している。海外で化粧品を購入すれば価格や商品の種類などで強みがあるため、中国人観光客の海外ショッピングの重点となりがちだ。 観光シーズン、東京や韓国ソウルなどの大型免税店では、フェイスパックやアイクリーム、化粧水などが中国人観光客によって爆買いされ、売り切れになってしまう。中国から殺到するショッピング客に対応するため、東京の一部店舗では中国人観光客に対して、フェイスパックは1人2つまでなどの購入制限を設けているほどだ。 荆林波氏は「中国は消費のニーズが旺盛だが、消費者を引き留める力に欠けている。中国企業は消費のトレンド、消費ニーズの変化に素早く注目し、製品の革新・アップグレード・モデルチェンジを加速し、より人にやさしい、効能が多い商品を生み出し、人々の多様な生活スタイルに適応していくべき」と語る。 ブランドを買う 北京の銀行職員、王洋さんは少し前に英国を旅行で訪れ、プラダショップで約2万元(約36万円)でバッグを2つ買った。 王さんは「中国人観光客が欧米で有名ブランド品を買うのは、価格が相対的に安いからだけでなく、ブランドの背後にある文化的な積み重ねを重視しているから。 例えば、スワロフスキーのクリスタルが有名なのは、材質に特別な違いがあるからではなく、このブランドが創立120年来、独自のカット技術とファッショナブルなデザイン、マーケティング・宣伝を通じて一種の文化的シンボルとなったからだ。このような文化的積み重ねは中国の企業とは比べ物にならない」と語る。 荆林波氏は「消費者が買うのは商品の品質であり、ブランドの背後にある文化。市場のニーズが社会の生産を決定付け、社会の生産は市場のニーズを志向としなければならない。ますます多くの中国人消費者が、センスがあり格調高い生活を求め始めた。彼らは人気のある商品に『財布で投票』している」としたほか、「中国の企業が海外消費ブームの裏にある市場情報に目を向けず、我が道を進み続ければ、最終的には製品が売れ残り、経営が困難になるだろう。 中国企業がニーズの変化を正視し、品質を第一と考え、革新と変化を加速することを望む。政府も体制を完備し、企業が技術に磨きをかけ、丹念に市場を開拓し、100年続くブランドを育成できるよう後押しするべき」とした。