【コロナ:世界の動きまとめ】世界の75%の国がいまだ鎖国状態。台湾、入国規制緩和対象に加えることを日本政府に打診
2020.06.03
入国規制緩和の動きが出始めているものの、国連世界観光機関(UNWTO)に登録する世界217カ国・地域では、いまだに何かしらの入国制限が実施されていることが明らかになった。アフターコロナの観光客を巡る欧州間の駆け引きが見え隠れするキプロス、ギリシャ、ポルトガルの動き。日本政府が発表した入国規制緩和の対象国に加わりたいと手を挙げた台湾など。世界の動きをお届けする。
世界の75%の国と地域が国境閉鎖を継続中
UNWTOは『COVID-19 Travel Restrictions:A Global Review for Tourism』の第4版で、新型コロナウイルスの影響による世界217カ国・地域の渡航制限に関する概要を発表した。5月18日の時点でUNWTOに加盟している217のすべての国・地域で、新型コロナウイルス感染症拡大抑制のために入国拒否や入国後の行動制限など、なんらかの制限を引き続き実施していると指摘。そのうち7カ国・地域(全体の3%にあたる)が国際観光への渡航制限を緩和し、数カ国・地域では国境再開に向けた動きもあるという。
さらに217の国と地域のうち75%はいまだ国境を閉鎖しており、そのうち37%は10週間、24%は14週間以上にわたって、その状況が続いていると報告している。また、アメリカ大陸86%、アフリカ大陸74%、ヨーロッパ74%、中東69%、アジア太平洋67%が外国人に対して、国境を閉ざしているという。
レポートによると、その地域の経済にとって観光の重要度が高いほど、国境を完全に閉鎖して対応していると指摘。発展途上国の85%が観光客に対して国境を完全に閉鎖しているという。
ポロリカシュヴィリUNWTO事務局長は、「渡航制限の緩和は状況を見ながら行うべきだが、持続可能な観光業が再スタートされることは、社会的・経済的利益をもたらし、世界の数百万人の雇用も守るものになるだろう」と、観光再開の必要性を各国にアピールした。
キプロス:新型コロナ発症の場合は、国が費用を負担
キプロス政府は、経済の15%を占めている観光産業を軌道に戻すために思い切った策を打ち出した。旅行者が同国滞在中に新型コロナウイルスに感染した場合、その宿泊費と飲食費、医療費を政府が負担することを明らかにした。感染が確認された旅行者に同行する家族の費用も同様に政府が負担するという。
旅行者が支払うのは、空港までの交通費と帰国のための航空運賃だけとなる。この施策により、キプロスの観光業者は万が一、旅行者が新型コロナウイルスに罹患した場合の負担を心配することなく、受け入れをスタートすることができるようになる。
一方、キプロスに入国する旅行者は、旅行開始前の72時間内に新型コロナの事前検査を受けることが義務付けられ、陰性証明書を提供する必要がある。また、到着時に体温チェックや、無作為な検査に応じる義務がある。
ホテルの従業員がマスクや手袋を着用したり、定期的にサンベッドを消毒したり、レストラン、バー、カフェ、パブで少なくとも2メートル離れた場所にテーブルを置いたりするなど、旅行者や居住者を保護する対策はすでに実施されている。
同国では、6月1日からホテルなどのサービス業も営業を再開させており、6月9日より国際航空路線の運航も再開させる。国境が再開されれば、指定された国から順次入国できるようになる。
ギリシャ:6月15日から外国人観光客の受け入れ開始
ギリシャ政府観光局は、6月15日からドイツ、オーストリア、デンマーク、フィンランドなどEU加盟16カ国から観光客の受け入れを開始することを発表。日本は対象国に加えられる見込みとなっている。観光客受け入れ再開に前向きなギリシャは、当初予定していた7月1日を前倒ししての再開となる。ただし、欧州圏内でも新型コロナウイルス感染者数が多いとされるイギリス、フランス、イタリア、スペインは受け入れ対象国に含まれていない。
ポルトガル:いきなり欧州からの観光客受け入れ再開
これまで入国規制緩和に関して、何の発表もしていなかったポルトガルが、いきなり欧州からの観光客の受け入れ再開を発表した。ポルトガル政府は、観光客が安心して選択できるように衛生基準を満たした宿泊施設やレストランに、国として「Clean&Safe」証明書を発行する方針は発表したものの、これまで入国規制緩和には触れてこなかったが、状況は一転。5月末にはすでにポルトガルの主要3空港へ、ヨーロッパ各地のフライトが運航されるようになった。
キプロス、ギリシャ、ポルトガルなどのこのような動きには、パイの限られる欧州からの観光客の受け入れを巡る欧州各国間の思惑が見え隠れする。
ニュージーランド:首相、観光促進のため週休3日制導入に意欲
ニュージーランドのアーダーン首相は、新型コロナウイルスのパンデミックで打撃を受けた観光業を救う手段として、「週4日勤務(週休3日制)」の導入に意欲を示している。同国の観光業は60%が国内の観光客により成り立っていることを挙げ、国内の観光地を多くの人に訪れてもらうために働く時間を減らすべきだと企業に呼びかけている。
台湾:入国規制緩和、ニュージーランドとパラオからの見通し
台湾の中央感染症指揮センターは6月1日に会見を開き、新型コロナウイルスによる入境制限の緩和について、渡航再開を認める第1弾の対象国にニュージーランドとパラオが入る可能性が最も高いとの見解を示した。台湾は世界各国を感染状況などに応じて4つのカテゴリーに分類しており、現時点では最もリスクが低いとされる第1カテゴリーにニュージーランドとパラオ、続く第2カテゴリーにベトナム、ブルネイ、第3カテゴリーに日本、オーストラリア、タイ、その他の国は第4カテゴリーに分類されている。台湾政府は10月1日をめどに国際観光への規制を緩和する方向で検討しており、感染が抑制できている国から徐々に入境を許可していくという。
また台湾政府は、日本政府が現在実施している入国制限の緩和対象の第1弾としてタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国と交渉に入る方針を固めたとの報道を受け、対象に台湾を加えるよう日本側に打診したことを外交部(外務省)の欧江安報道官が明らかにした。
香港:ロボットを導入し空港や車内を殺菌
5月14日より連続で域内での新型コロナウイルス発症者0人の状況が続いている香港。それまで禁止されていた香港でのトランジットが、6月1日より認められるようになった。ただし、同じ航空会社同士のトランジットが条件となる。
その香港国際空港では、これまで医療現場で導入されていた「インテリジェント殺菌マシン(ISR)」を世界で初めて空港に導入。紫外線技術、360度スプレーノズル、エアフィルターを組み合わせて細菌やウイルスを除去する。
[caption id="attachment_38665" align="alignnone" width="643"] ▲非臨床現場としては、世界で初めて空港に導入された「インテリジェント殺菌ロボット」[/caption]香港の鉄道MTRにおいては、「過酸化水素(VHP)ガスロボット」を活用し、車両や駅を除菌。券売機やエレベーターのボタン、手すりなど接触頻度の高い箇所は2時間毎に消毒するなど、公共交通を安心して利用してもらうため、徹底した除菌をしながらのサービス提供が行われている。
[caption id="attachment_38666" align="alignnone" width="566"] ▲列車内や駅の除菌に導入された「過酸化水素(VHP)ガスロボット」[/caption]香港経済日報の報道によると、香港の政府観光局はMICE関連のビジネスや国際イベントの誘致に8800万HKドル(約12億3000万円)を投じる。MICEを誘致したホテルに助成金を給付するほか、MICE事業を手がける旅行会社には補助金の支給条件を緩和するという。香港におけるMICE客1人あたりの消費額は、個人・団体客の消費額を2割上回っているため、まずはMICEに照準を当てて施策を進め、観光産業の活性化を図る。
ベトナム:全世界80カ国から電子ビザ承認へ
ベトナム政府は5月26日、7月1日から全世界80カ国から電子ビザの申請を受けて承認するという方針を発表した。80カ国の中には、日本、韓国、米国、ドイツ、フランス、イギリス、ロシア、中国などの主要国が含まれている。これまで同政府は新型コロナウイルスの水際対策として外国人の入国制限を実施していたが、夏のホリデーシーズンに向けて外国人観光客の需要回復を目指す考えだ。
タイ:独自の認証制度で安心安全な国をアピール
タイの観光および公衆衛生当局は、観光産業の回復期に備え、国内外の観光客の信頼を高めることを目的とした独自の認証制度「SHA(Amazing Thailand Safety and Health Administration)プロジェクト」を立ち上げた。同プロジェクトは、観光を国全体の予防策の一環とし、タイ人と外国人観光客の両方がポジティブな体験をし、タイの観光製品および観光サービスの衛生と安全に満足してもらえるよう保証することを目的としている。
レストラン、宿泊施設、旅行代理店、観光輸送業、土産店など、10種類のビジネスがSHA認証を申請することができ、各施設は厳格な審査を受けた上で、サービス基準の品質認証の印として「SHA」のロゴが割り当てられる。認証の有効期限は2年で、認定された施設名は全てデータベースに入力される。
韓国:国内観光復興のためのキャンペーンを6月20日から
韓国政府は今年の夏休みに向けて国内観光の復興を目指している。6月20日から7月19日までを「特別な観光期間」として指定し、主要な観光スポットやホテルが割安で利用できるキャンペーンを打ち出すという。文化体育観光部の朴良雨長官は、全国の遊園地では最大60%割引、旅行ツアーは40%割引を実施することを発表。またホテルに対しては、オンラインで予約する際の「事前販売割引」キャンペーンを立ち上げ、国内のオンラインサイトで使用できる最大4万ウォン(約3500円)のクーポンを100万枚発行するという。
(やまとごころ編集部:外島美紀子、深谷昌代)
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】