【コロナ:世界の動きまとめ】日本政府、入国規制緩和40カ国以上と協議を進める。PCR検査導入でビジネス渡航再開へ
2020.06.07
日本政府はすでに明らかになっているタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国以外の国と地域に対しても、入国規制緩和に向けた協議を進めている。感染抑制が同じレベルでできている国同士での再開となる見込みだが、互いの出入国の条件を決める中で、日本政府は相手国に対してPCR検査の陰性結果を求める方針だという。往来再開を少しずつ始めている世界、そして日本の動きをお伝えする。
茂木外相が、段階的入国規制緩和を明らかに
日本政府は、入国規制緩和に向けた協議を各国と始めている。茂木外務大臣は5日の記者会見において、1日にベトナム、4日にニュージーランド、5日に豪州の各国外相と電話協議したことを認めた上で、世界全体で見ても感染症がかなり収まっているこれら3カ国に加え、すでに40カ国以上とも協議を進めていることを明らかにした。今後の段階的緩和については、相手国の感染収束状況を見ながら、ビジネス目的の往来から緩和していく方針としている。
渡航希望者へのPCR検査も認める方針
政府では適切な感染症対策についての検討も進めている。日本へ入国を希望する人に対して、相手国でPCR検査の陰性証明書と、日本入国後2週間の行動計画を日本大使館に提出することを求め、審査が通れば、査証(ビザ)を発給。日本到着時も空港でPCR検査を受け陰性であれば、現在、海外からの入国者に対して求めている14日間の行動制限を免除するという緩和策を検討している。日本から相手国への出国も、相手国が日本の入国基準と同等の手続きになる可能性が高いため、産業医らの診断で無症状の渡航希望者へのPCR検査も認める方針。合意すれば夏にも緩和する。
入国拒否、キューバなど加わえ129カ国へ
また、政府は渡航する日本人に向け発している「感染症危険情報」において、キューバなど18カ国を、渡航中止勧告のレベル3に引き上げた。これにより、これらの国は政府が水際対策として実施している、入国拒否の対象国に加わることとなるが、これらの地域はさほど往来が多くないため、適切なタイミングで措置を執るとしている。新たに対象となるのは下記の18カ国。日本が入国拒否の対象は129の国と地域に広がることになる。
(中南米)ガイアナ、キューバ、グアテマラ、グレナダ、コスタリカ、ジャマイカ、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ニカラグア、ハイチ
(欧州・中央アジア)ジョージア
(中東・アフリカ)アルジェリア、イラク、エスワティニ、カメルーン、セネガル、中央アフリカ、モーリタニア、レバノン
航空会社向けガイドラインを国際民間航空機関(ICAO)が発表
国連(UN)の国際民間航空機関(ICAO)は、航空会社が運営する際の指標となるガイドライン「The CART Take-off guidance 」を発表した。同ガイドラインは、空港、搭乗機、搭乗員、貨物の4つのカテゴリー別に、アフターコロナにどう対応していくべきかが記されている。これらのガイドラインは指標であって航空各社に従う義務はないが、新型コロナウイルスの世界的な感染によって、空の旅も様変わりすることは必須だ。
搭乗手続きは、できるだけオンライン、セルフサービスでやることを求められるようになり、空港では出発前に検温と健康証明書の提示を求めるよう、このガイドラインでは指示している。その他、機内でのマスク着用、新聞や雑誌の持ち込み禁止、免税品の販売制限。また、トイレ前に並ぶことも避けるべきとしている。座席を一席ごとに空けるという措置は、経営を脅かすとしてICAOでは推奨していない。
ICAOは、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの影響で、全世界での旅客の利用は今年度末までに最大71%の座席数と最大15億人の乗客が減ると推定している。
関西空港、国際線再開の動き
新型コロナウイルスの感染拡大で国際線旅客便が激減した関西国際空港では、海外との航空便再開の動きが出ている。6月6日は、アムステルダム、ハノイ、ソウル、ホーチミン、台北、香港、ドバイを結ぶ7便の国際便の離発着があり、6月7日はジャカルタ、ホーチミン、アムステルダム、台北を結ぶ4便の離発着が予定されている。ただし国家間の移動制限を受け、旅客数は低調な状態が続く見込みで、関西国際空港内の店舗も閉まっているところが多い。
[caption id="attachment_38722" align="aligncenter" width="583"] ▲人の往来が激減している関西国際空港[/caption]
中国:国際航空便の制限を緩和へ
中国政府が新型コロナウイルスの影響で制限してきた日本人へのビザ発給を緩和していることが明らかになった。経済交流の正常化を加速させるために、5月には湖北省武漢に進出している日系企業の関係者らにビザを発給し、27日には137人の日本人がチャーター便で職場復帰のために武漢に戻ったが、日系企業が多い他都市でも6月から本格的に発給数を増やしていくという。
さらに、中国政府は3月以来、新型コロナウイルスの水際対策として続けてきた外国航空会社に対する、1社、1路線、週1往復までのフライト運行にとどめるという規制を緩和することを発表した。この緩和は、アメリカが中国政府に対しアメリカの航空会社が中国へのフライトを再開できるよう許可されない場合、6月16日より中国からアメリカへの旅客便を禁止するとの強硬な要求の数時間後に発表された。
香港:入境者への強制検疫措置、延長へ
香港政府は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入境者への強制検疫措置を実施しているが、その期間を延長すると発表した。中国本土、マカオ、台湾に対する検疫は1カ月延長して7月7日まで、外国に対する検疫は3カ月延長して9月18日までとした。
イタリア:6月3日より観光客の受け入れ再開
イタリアは6月3日、渡航者に対する入国制限を一部緩和し、EU加盟国とイギリスからの観光客受け入れを開始した。コロッセオやピサの斜塔などの世界的な観光名所や、世界屈指の観光地ベネチアもすでに再開している。しかし一方で、新型コロナウイルス感染症の「ホットスポット」となったイタリアに観光客が戻るのかと疑問を投げかける声もある。イタリアと他国とを結ぶ国際線は未だ再開されておらず、国境を開いた3日も国際空港に人影はまばらだったという。そのため政府は安全性を他国に訴え、復興に向けて立て直しを急いでいる。
ポルトガル:検疫なしで外国人受け入れ再開
ポルトガルでは現在、マデイラ諸島を除くポルトガル全土に外国人が到着する際の検疫を行なっていない。7月1日からはマデイラ島とポルトサント島も同様の措置をとる。ポルトガル政府は同国の観光業にとって重要な市場であるイギリスに対し、両国間の入国規制を緩和する「エアブリッジ」に合意するよう交渉を進めている。現在イギリスは、ポルトガルからの帰国者に対し、14日間の自己隔離を求めている。
カナダ:ニュージーランドの週休3日案をカナダでも検証
ニュージーランドのアーダーン首相は先日、週休3日制を導入することで国内の観光市場を再び活性化させることができると示唆したが、カナダ人にもこの考えが受け入れられているという。カナダではほとんどの州で有給休暇が2週間となっており、欧米22カ国の中で下から2番目に少ない(ちなみに最下位のアメリカには有給休暇制度がない)。エコノミストのグリカ・イワノワ氏は、「多くのカナダ人は他国の基準に気づいていないだけ」と指摘しており、今回のアーダーン首相の発言はカナダ人に気づきを与えたようだ。
(やまとごころ編集部:外島美紀子、深谷昌代)
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】