株式会社81(ハチワン)代表取締役社長 矢作嘉男氏
2012.03.27
中国人の共感を呼ぶプロモーションの極意あり
現地のウェブメディアを通じて中国へのプロモーションを支援する株式会社81(ハチワン)。FIT向けクーポンサイトの運営から中国のソーシャルメディアを活用した大学や専門学校の中国人留学生獲得支援まで、幅広く日本のファンを増やす活動をしている同社の業務内容について、代表取締役社長の矢作嘉男氏にお話を伺いました。
目次:
インバウンドとの出会い
中国へのプロモーション
結果につなげる取り組み
中国インバウンドの展望
インバウンドに関わるビジネスを始めた経緯はどのようなものだったのでしょうか。
会社を設立した2008年7月当初は、自分達で企画開発をして、いろいろなウェブメディアを運営していました。業績は順調でしたが、一方で「我々は何のために事業をやっているのか」という会社としての存在意義をなかなか明確にできない時期が続きました。そこで一回立ち止まって考えた結果が観光だったんです。
特に、外国から来るお客様に対しての観光のウェブサイトは当時「ここだ」というものがなかったんですね。それに、日本が観光立国を目指していることや、マーケットとして非常に伸びることが明確だったので、僕らの強みであるウェブを使った集客サービスを活かせる領域だと思いました。
以前から運営している「東京サービスアパートメント」という外国人向け家具付き賃貸マンションのサイトでも十分な集客ができていたので、2011年4月にインバウンドとグローバルという今の事業を明確にして社名も変えました。
中国でのプロモーション活動で、大切なことをお聞かせください。
中国では例えばウェブサイトを開設するだけでもライセンスが必要で、その中でも"eコマース"は中国の内資の会社でそれなりの規模がないと開設できないというルールがあります。そのため、適宜個別の事業やサービスを行う上で、それぞれ必要条件を持っている会社と協力しながら事業展開しています。
また、よく知られた話ですが中国にはネットコンテンツに対して検閲があるなど、中国のインターネット環境の特殊さを知っておかないと商売は上手くいかないと実感しています。また、ビジネスをするのですから中国側のパートナー企業にも具体的なメリットをしっかり提示することが大切だと思います。
プロモーションに関してはいろいろなことをやっていますが、何かひとつやっただけで売り上げが伸びるということはないんですね。
百貨店など商業施設から旧正月や国慶節の時期に集客をしたいという依頼をよく受けますが、ピンポイントでその時期だけプロモーションをやっても、それ以前からそこに興味を感じさせる仕掛けをやっていないとあまり意味がないと思います。
中国へ進出する企業、中国から日本に来て欲しい企業は、まずは中国の方々に知ってもらうことが大切で、例えばそのお店にはどういう商品があって、他店と比べてどこが優れていて、いつ頃きたら何がお得かということなどを常に発信していかなくてはいけません。
そのサポートをするために、ハチワンでは『ウェイボー』の運用代行をしています。
なぜ『ウェイボー』かというと、中国のポータルサイトなど大手メディアに"広告"として出稿するのは、今では日本よりも価格が高騰し、費用対効果には疑問を感じます。そこで、我々は自分達で発信するとか、人気のあるブロガー、マイクロブロガーに書いてもらったり体験してもらったりするなど、媒体費という形で払わない方法で大手メディアに掲載されるプロモーションをしています。
そのひとつが中国メディアとのネットワークを活かした「中国4大ポータル記事掲載保証PR」です。日本の企業からいただいた情報をもとに私たちで切り口を考え、中国側のスタッフと話し合って新鮮な時事性のある情報に構成し、記事として取り上げてもらい、口コミ誘発の起点としています。
具体的な成功事例を教えてください。
中国で10店舗以上展開していて5万人のフォロワーがいる日本のアパレルのウェイボー運用代行をやっています。
お店からは洋服やセールの情報をいただき我々はその情報を適正にアップし、店舗集客につなげていきます。
また、ウェイボー上でフランチャイズの受付もやっています。
商品やアルバイトに関する質問などがフォロワーから来たら、この情報に関してはこの人に聞くというのを予め決めて対応しています。
一方弊社からの情報として、最新ファッション情報や、店員の着こなしなどをアップし、良質なフォロワーを生み出す仕掛けを日々行っています。
上海店オープンの際に日本からタレントを呼んでイベントをしたときには、ウェイボーのフォロワーを抽選で何名か招待して、イベント終了後にはその様子をウェイボーで伝えました。
また、中国人留学生が欲しい日本の大学や専門学校へのウェイボー運用代行をすることで、「留学斡旋会社」に頼らない中国人留学生の獲得が可能になっています。
学校に関連するトピックスだけをつぶやいては宣伝だけになるので、例えばアニメーターを目指す専門学校では、まずは日本のアニメとかサブカルチャーを発信することによって、そもそもそういう日本のカルチャーが好きな子たちが集まるアカウントにします。
それと同時に、毎月1回フォロワーを増やすためにやるキャンペーンでは、学生が作った高いクオリティのアニメ作品をプレゼントします。
そうすると、アニメとしても見て楽しめるし、「この学校で2年間学べばこれだけのアニメを作れるようになる」という間接的な宣伝にもなるんですね。
また、フォロワーに対してオンライン上で資料を送ることが出来るので、資料送付コストの削減にもなっています。
上海や北京など、いろんな場所で説明会を開催して、実際に日本の学校に願書が届いています。
今後の中国インバウンドの展望についてお聞かせください。
中国マーケットのインバウンドでは、これからFITが中心になってくると思います。FITが増えると今まであったゴールデンルートのようなものは崩れてくると思っていて、その時に我々としては、ウェブメディアとしてB to Cのサービスをやっていきたいと思っています。
ハチワンでは現在、中国インバウンドの事業責任者候補を募集しています(2012年7月末現在)。インターネットの広告やプロモーションをやっていた方であれば、弊社で活躍していただけるんじゃないかと思います。数値データを読み解き、課題抽出力のある方を求めています。1年後には事業責任者になりたいというモチベーションを持っている方、是非をお待ちしております。
株式会社81:http://www.813.co.jp
株式会社81採用特設ページ:http://www.813.co.jp/recruit/
取材:Kanako Morishita