ロンリープラネットが選ぶ2022年の旅行先、地域別で四国が6位に選出。キーワードは「環境保全」「サステナブル」
2021.11.15
世界的に有名な老舗旅行ガイドで、欧米圏の旅行者のバイブルともいえるLonely Planet(ロンリープラネット)が、2022年におすすめの旅行先として「Best in Travel」を発表。国別、地域別、都市別のトップ10が発表されたが、日本からは唯一、四国が地域部門の6位に入った。
ガイドブックの世界シェア25%というロンリープラネットのランキングは、編集部、ライター、ブロガー等が推薦した何百もの候補地から、旅行専門家委員会で議論を重ねて選出され、毎年秋に発表される。その結果はウェブサイトで公表されるほか、書籍としても出版される。四国は2019年の「BEST IN ASIA PACIFIC」(アジア太平洋地域の訪れるべき目的地)に続く選出となった。また、日本国内では過去に地域5位に紀伊半島(2018年)、地域3位に東北(2020年)等が選ばれている。
ロンリープラネットのエクスペリエンス担当副社長のトム・ホールは発表に際し、「旅行断念を余儀なくされたあと、長く棚上げしていた旅行を行動に起こす時期が訪れました。リストに載った素晴らしく魅力に溢れた多様性に富んだ世界を楽しんでください」と話した。
▲国別1位 南太平洋に浮かぶクック諸島
評価ポイントの1つは「持続可能な観光」の実践
それではまずランキング全般を見ていこう。欧米では特にワクチン接種が進んでいることから旅行回帰の動きがでてきており、今回のランキングを含め近い将来の旅行先は注目度が高い。
国別の1位に選ばれたクック諸島については、南太平洋における環境保全を推し進める革新的な戦略が評価されたもので、世界最大の海に囲まれた多様な光景が、アドベンチャー、文化交流、そして食の喜びをもたらすとした。国別2位のノルウェーも、サステナビリティ、グリーンテクノロジー、コミュニティ文化構想の先駆者として評価されている。
また、地域1位の西フィヨルドはアイスランドのなかでも特に人里離れた手つかずの自然が残るエリアで、アウトドアアドベンチャーを好む人に人気とのこと。都市3位のフライブルクはドイツの環境運動の草分けで、世界のエコタウンとも呼ばれる。
こうしてみるとここでのキーワードは環境や自然の保全、サステナブルな生活といえるだろう。実際、選出における評価ポイントも、話題性、ユニークな体験、人を感動させるような要素、そして持続可能な観光実践への取り組み、という4つがあげられている。
地域ランキング6位 四国で取り上げられたエリアは?
地域6位となった四国にもそれはあてはまる。ロンリープラネットは、四国を「あまり知られていない日本の宝」と紹介、イヤーブックには「四国遍路」のほか、過去にやまとごころ.jpでも記事にした「上勝町(ゼロ・ウェイスト・タウン)」「祖谷渓」が取り上げられている。また、ハイライトとして「祖谷渓」(徳島県)、「石鎚山、道後温泉」(愛媛県)、「直島」(香川県)、「大岐の浜」(高知県)が掲載されている。
四国ツーリズム創造機構によれば、「四国遍路における”お接待”文化や環境保全に配慮する地域住民の意識といったコミュニティのつながりが高く評価されたものと考えている」という。これまでに四国ツーリズム創造機構の英語対応窓口「四国コンシェルジュデスク」がロンリープラネットの編集担当者に、四国の様々な情報やリサーチ報告を提供したり、記事提示等を重ねており、パンデミックにおける人類の「癒やし」「新しい世界観」というコンセプトで「四国遍路」が説得力を持ったようだ。
インバウンド客にとっての四国の魅力とは
弊社高知支部でインバウンドを担当する丸谷慶子によると、四国八十八箇所巡りで培われたおもてなしの精神で県民はとてもフレンドリーだという。実際の観光客やお遍路体験をした外国人からも、「道に迷っていたら声を掛けてくれた」「途中で雨が降ってきたけど、家で休ませてくれた」という声がよく聞かれるそうだ。
こうしたおもてなしの精神が外国人のこころを捉える様子がうかがえる。それと同時に、豊かな自然も四国の大きな魅力となっている。
「日本最後の清流四万十川については、Japan’s Best-kept Secret、日本の隠れた秘境としてPRしています。ダムのない四万十川の清流では、日本一多くの種類の生き物が生息していると言われ、洪水の際にわざと沈むように設計されている沈下橋等、人々と自然が共存する様子が魅力的です。
ロンリープラネットで取り上げられた大岐の浜は、メジャーなサーフィンの聖地に負けないくらいのサーフィンに適した海岸ですが、驚くほど静か。また少し潜るだけでウミガメやハリセンボン、色鮮やかなサンゴや魚たちに出会うことができます。サンゴ礁を見ながらサーフィンができるのはここだけかもしれません。サステナブルな滞在にこだわった宿泊施設も人気です」(丸谷談)
また、Visit Kochi Japan (高知県観光公式ウェブサイト)のFacebookでTop10入りしたことを伝えた際には、フォロワーから英語で
「2018年に四国を電車で巡った。美しく、人々もとても優しかった」
「死ぬまでに行きたいリストに入っている」
「渡航が再開されたら行きたい理由がひとつ増えた」
といった声が、よせられた。
▲四国八十八箇所第30番 善楽寺 写真:(公財)高知県観光コンベンション協会
訪日外国人の情報源として近年はSNSや口コミが圧倒的に強いと思われているが、欧米圏では昔から変わらずガイドブックを手にする人たちが多い。現に2019年の訪日外国人動向調査では、旅行前の情報源として旅行ガイドブックを挙げた人が、イタリア2位、フランス3位、イギリス、スペイン各5位と、欧州で多いことがわかっている。近い将来、今回のこのランキングを参考にしたインバウンド客が四国を訪れる姿を見られるかもしれない。