東海汽船株式会社 旅客部 企画グループ長 越後宏文氏
2016.09.29
一歩目を踏み出したインバウンド対応
伊豆諸島は東京都心から一番近い島々だ。ビーチリゾートとして夏にはおおいに賑わう。ここ最近、外国人観光客も増えつつあり、伊豆諸島を結ぶ東海汽船は、インバウンドに昨年から本格参入した。地域と一緒にいかにインバウンドを進めているのか現状をうかがった。 <2016年09月29日>1:貴社の概要等を教えてください
現在の私どものミッションは、伊豆諸島への船による定期航路の運航です。 またそれに付随した旅行事業、大島でのホテル事業などがあります。 前身は「東京湾汽船会社」で、1889(明治22) 年11月に営業を開始しています。1942(昭和17)年に合併して、現在の「東海汽船」という名前になりました。120年を超える古い会社です。 伊豆諸島へは、1906(明治39)年に伊東~大島の定期航路がスタートして、翌年には、神津島航路、御蔵島航路、三宅島航路と増えていきました。
2:インバウンドの始まりについて教えてください
インバウンドについて全社的に本格化したのは、昨年の2015年です。 それまでは、外国人観光客が、自然増で推移していたのですが、会社として具体的な取り組みは何もしていませんでした。新島はサーフィンが盛んで、かつて国際大会が開催されたこともあり、外国人客も来られています。その他の島々も夏にはビーチリゾートとして、関東の在住外国人に認知度が高いようです。 さて、インバウンドを本格化するにあたり、「企画グループ」が創設されました。私も現在そこに在籍しております。 外国人の団体客向けの宿泊をセットしたツアー、個人旅行者向けの予約システムを、今年の6月からスタートさせました。 ところで、外国人の自然増ということですが、国別ですと、アンケート結果からフランス人が1位、アメリカが2位、カナダが3位とわかってきました。訪日観光のボリュームゾーンである東アジアからが少ない傾向です。
3:伊豆諸島でのインバウンドの盛り上がりやインバウンドの現状はいかが?
各島では、インバウンドについて、それほど積極的ではないのが、正直なところでしょう。 東京諸島観光連携推進協議会が発足3年目になりましたが、インバウンドについては、まだ議題にあがっていない状況です。 そのなかにあって、やはり、伊豆諸島で大島が実際に外国人客も一番多いせいか、取り組みが進んでいる印象です。看板など、一部で多言語表記も増えつつあります。 ところで、今年の1月に、大島では、自転車の国際大会が開催されました。 「2016年アジア選手権ロード&トラック、パラサイクリング」で、各国の持ち回り方式になっていて、今年は日本の順番でした。そこで、ロードは伊豆大島が会場になったのです。 ロードレースのコースは島の西部、大島空港周辺の一般公道で。スタート・フィニッシュ地点は元町地区中心の大島支庁前。伊豆大島の有名観光地を巡ります。大島はフラットのコースが多く、もともと自転車愛好家から支持されていました。 このときの宿泊先が、ホテルだけでは足りず、民宿も利用されました。アジア各国の選手やスタッフが、泊まったのです。 普段、外国人の受け入れに慣れていない、民宿の方々が、食事を提供するなど、コミュニケーションを図りました。そこでの体験は、自分たちでも何とかなると自信につながったようです。外国人というだけで、遠慮していたのが、大会を通じて積極的に変っていきました。4:今後の展望と直近の取り組みは何でしょうか?
現状、予約サイトがきっかけで個人の外国人旅行者が増えつつあります。 この予約ページへのアクセスに貢献しているのが、「東京アイランズ」という多言語サイトです。伊豆諸島を案内しています。こちらは、もともと別の会社が運営していたものをご一緒させていただくことになったのです。 このサイトでは、東京にある島というコンセプトで、海の美しさと東京からの近さという点を訴求しています。 自然のアクティビティと都心のショッピングの両方を楽しんでもらいたいのです。 今後は、島の魅力をYouTubeで発信したり、ブロガーを招聘たりと、地域と一緒にプロモーションにも力を入れたいと思います。 一方、団体客に関しては、旅行会社とのタイアップにも力を入れ、ツアー商品を売っていきたいです。現在、海外への販路がありませんので、そのあたりを旅行会社に期待しています。 ところで、この夏、「納涼船クルーズ」という企画を、中国や台湾にプロモーションしました。 浴衣を着て乗船すると1,000円の割引になるサービスがあり、今年から浴衣のレンタルサービスも始めました。 やはり、外国人観光客にとっては、海から東京のイルミネーションを楽しめるだけではなく、浴衣を着るという体験も魅力となっています。