インバウンドビジネスに取り組む目的・意義は?地方創生との高い親和性

2021.04.01

更新




インバウンドに取り組む意義

ここからはインバウンドに取り組む意義について考えていきます。簡単にまとめると、以下の3つが挙げられるでしょう。

1 日本の人口減少と国内市場の限界

2 急成長する世界の旅行市場

3 地方創生との高い親和性

日本の人口減少と国内市場の限界

日本の人口は2008年をピークに減少期に入りました。今後、長期の人口減少が続き、2048年には1億人を切って、2060年には8674万人になると予想されています。生産年齢人口(15〜64歳)も総人口に沿うように減少していく様子はグラフからもわかるでしょう。つまり、人口減少に伴い、国内のみの事業展開では減収が目に見えているのです。

日本の人口推移

急成長する世界の旅行市場

一方で、世界の旅行市場は拡大を続けています。2010年の世界の観光客は9億5500万人でした。UNWTOはその後10年ごとの伸びを予測し、2020年には14億人との予測値を出しましたが、2018年には2年も早くその数を達成しました。その陰には2010年〜2019年の平均伸び率が最も高かったアジア・太平洋地域の成長があります。アジア・太平洋に住む人たちの多くはまず最初の海外旅行で近隣の国々へ向かう傾向がありますが、そのなかには当然日本も含まれていました。

また、2019年の世界の旅行者14億6000万人のシェアを見ると、2人に1人はヨーロッパ、4人に1人はアジア・太平洋に住んでいますが、伸び率では中東の8.3%が群を抜いています。今後はアフリカからの旅行者も伸びると予想されています。将来的にはこうした成長する市場と取り組んでいくといいでしょう。

世界の観光客数と成長予測

UNWTOによれば、2019年の国際観光輸出額(国際観光収入+旅客輸送)も1兆7420億米ドル(約188兆8800億円)に増加し、世界の輸出区分で、観光は、燃料、化学に次ぐ第3位に入っており、自動車関連を上回ります。

UNWTOのポロリカシュヴィリ事務局長は、観光産業は「より多く、より良質な雇用創出を促進し、イノベーションや起業の触媒としての役割を担い、経済成長及び発展を促すものとして、真の国際的な影響力を持ちました。要するに、観光は数百万人の人々のより良い生活の形成を支援し、コミュニティー全体を変革させているのです」と述べました。これはそのまま、インバウンドに取り組む意義に置き換えることができるでしょう。

世界の輸出区分で観光は3位

地方創生との高い親和性

インバウンドはまた、地方創生とも高い親和性をもっています。その理由としては、冒頭に挙げた人口減少によって国内市場が縮小していることや、新規市場であるため顧客を獲得しやすく、地域全体で連携して取り組む旗印となりやすいこと、さらに、地方への旅行と相性の良い個人旅行者の増加が挙げられます。

そうは言っても自分たちの地域には何もないと思うかもしれません。ですが、案外自分たちの視線では見えないところに魅力が潜んでいるものです。それをいかにして発見して、稼げるようにしていくか。「ここにしかないもの」が見えてくれば、ターゲットを絞りやすくなり、デメリットがメリットにもなり得ます。また、異なる文化を持つ訪日外国人を受け入れるために改めて自分たちの魅力を学び直すなかで、地域の連携も進み、地元に対する住民の誇りが醸成される。そうなれば、転出者も少なくなり、来訪者の中から定住を希望する人も出てくるでしょう。

人気の観光地ではオーバーツーリズムが問題になることもありますが、海外の旅行社にとっても飽和状態にあるエリアの商品は売りにくいため、まだ誰も手につけていない地方の観光資源の発掘を求める傾向にあります。インバウンド初期のモノ消費から、体験アクティビティなどのコト消費が重視されるようになって、各種のスポーツツーリズム、ロケ地巡り、農泊など、テーマ観光を通じた地域の活性化も期待できます。

また、表を見るとわかりますが、週末を利用しての短期間の旅行が多い日本人と比べて、訪日外国人は滞在が長い分、地方へ足を伸ばすことをいといません。そのため宿泊や観光施設などで繁忙期と閑散期の差が大きい地域ではとくに、インバウンドの存在感が高まっています。

平均泊数の比較

日本との距離が遠くなればなるほど、滞在日数は長くなる傾向にあります。今は東アジアのシェアがもっとも多く、ついで東南アジアですが、欧米豪をターゲットにすると地域がより稼げると言われるのは、滞在日数が長くなれば、消費額が増えるからなのです。

訪日外国人の平均泊数

 

次は「インバウンドビジネスを始めるための7つのステップ」について