インバウンドコラム

【体験レポ】新宿のバーホッピングツアーが、交流を求めるミレニアル世代からの評価が高い3つのポイント

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東京都渋谷区を中心にインバウンドビジネスを行っている株式会社ジェイノベーションズ代表の大森峻太です。渋谷ハチ公前の観光案内所の運営や都内を中心にウォーキングツアーを運営する一方で、インバウンドの専門家として行政関連のアドバイザーや関東学院大学で客員准教授も務めています。

今回、新宿で特に若い世代人気のツアーに参加してきました。自身もインバウンド向けのツアーを運営する経営者、そしてインバウンドの専門家の目線で人気のツアーの内容や特徴、工夫しているポイントを紹介していきます。

 

3時間で3店舗はしごする、新宿バーホッピングツアーの中身

今回私が参加したのは新宿で人気のバーホッピングツアー「Tokyo: Shinjuku Local Bar and Izakaya Guided Walking Tour」です。ツアーの所要時間は約3時間で、居酒屋やバーを3店舗訪れます。

料金は税込で6,000円。とても安く思えますが、ガイド料金のみで飲食代は含まれていません。どのくらい飲食するかによって料金は変動しますが、事前に飲食費の実費として5,000円〜7,000円ほどかかるので、現金を持ってくるよう連絡がきます。

ツアーの集合場所は新宿の思い出横丁です。参加者全員が集まるまでの間にガイドの方が1組1組に挨拶と自己紹介をしていて、予定通り20時にツアーが開始しました。

参加者はアメリカ人の2人組、カナダ人と韓国人の3人組、ドイツ人の2人組、イギリス人とアイルランド人の2人組、トルコ人の2人組、アメリカ人1人に私と私の会社のメンバーの合計14人です。最初にガイドの方からツアーの説明や注意点などの話があり、全員で集合写真を撮りました。

まずは思い出横丁に入ってぐるっと一周しました。思い出横丁のお店から開始なのかと思いましたが、お店の中には入らず外から雰囲気だけ楽しんで、歌舞伎町に向かいました。

入り口で歌舞伎町について説明を受けた後に、焼き鳥のチェーン店に入りました。今回はガイド含めて15人の参加者がいたこともあり、1テーブルでは座れず2テーブルに分かれて座りました。それぞれの参加者が注文用のQRコードを読み込んで、好きなドリンクを注文しました。全員のドリンクが揃った後に皆で乾杯して、テーブルごとに自己紹介をして、そのあとは交流を楽しみました。食事はガイドの方がおすすめを全員分注文してくれました。


▲焼き鳥チェーンでご飯を食べながらテーブルごとに自己紹介

次は歌舞伎町にあるゴールデン街に向かいました。向かう途中に、日本のホストクラブの説明がありました。

2店舗目はゴールデン街にある日本酒のお店です。お店は貸切で、おちょこに入ったおすすめの日本酒が次々と出てきます。1杯ごとにガイドの方から日本酒の説明があり、指名された参加者が「カンパイ!」と大声で叫び、全員で乾杯して飲みました。ツアーの最初にガイドの方から「今日は英語で”Cheers!”は禁止で、必ず”カンパイ!”と言いましょう!」という話があったのですが、これも一つのローカル体験で盛り上がるポイントです。

最終的におちょこ8杯飲みました。お酒があまり飲めない参加者は途中スキップしながら飲んでいました。お水もたくさん用意してくれるので、お酒が強くなくても自分のペースで飲むことができます。


▲日本酒を片手に参加者全員で「カンパーイ!」

3店舗目はカラオケバーに行きました。スナックのような形式で一般のお客さんもいるので、順番に歌を歌っていくのですが、そこで常連さんたちとの交流もあります。英語が話せない一般のお客さんともカラオケを通してノリで交流することができます。

バックストリート・ボーイズの「I Want It That Way」など世界的に有名な曲を入れると皆大盛り上がり。お酒が入ってきたということで皆で大合唱しました。

こうしてツアーは大盛り上がりで終了。別料金にはなるものの、そのままカラオケバーに滞在したい参加者は残ることができるため、私が参加したツアーでは半分ほどの参加者が残っていました。


▲参加者同士の距離が一気に縮まるカラオケで大盛り上がり

 

インバウンド旅行者に人気の3つのポイント

今回参加したのは、株式会社ヤトラが主催するツアーです。2023年に、20代の起業家2人組が創業したばかりの会社ですが、関東と関西を中心に多くの人気ツアーを運営しており、いま急成長を遂げています。その理由について、考察しました。

1. 交流ができる

私の会社で運営するツアーでもガイドやお店の人、参加者同士、地元の人との交流を楽しみにツアーを申し込んでいる方が多いです。

日本人の感覚からすると他の参加者がいない場合、貸切ツアーになってラッキーと思う方も多いと思いますが、欧米豪向けのツアーではむしろ他の参加者がいない場合は別日にしたいという要望があったり、他の旅行者が既に予約しているところから予約が埋まっていく傾向にあります。

今回のツアーでも1店舗目では主に参加者同士の交流、2店舗目ではお店の方との交流、3店舗目では地元の人々と交流することができるなど、さまざまな交流ができるように設計されていました。

2. 旅行者だけではたどり着けない場所に行ける

旅行者が自分たちだけでは行けない、または行きづらい場所が入っていると満足度は上がります。

今回のツアーでは2店舗目はゴールデン街なので自分たちだけでも行けるものの、店員さんは基本的に日本語のみの対応なので、ガイドがいることで注文がスムーズにでき、日本酒の説明も詳しく聞くことができます。

3店舗目は雑居ビルに入っているので、自分たちで見つけることは難しいですし、カラオケバーやスナックの暗黙のルール等(カラオケの順番など)も知らないのでハードルが高いと思います。

逆にいうと自分たちだけでも行ける場所をツアーに入れる場合は工夫が必要で、工夫がない場合は満足度が下がるので、今後ツアーをつくろうと思っている方は要注意です。


▲ガイドがいることで交流が生まれ、自分たちだけではできない体験ができる

3. 直前予約が可能

欧米豪からの旅行者はツアーや体験を直前に予約する傾向にあります。

私の会社で運営する渋谷のウォーキングツアーでも最も予約が多いのが当日です。つまり、旅行者は日本に来てから今日や明日の予定を決めることが多いのですが、一方で前日や当日などまで予約を受け付けてくれるツアーは多くはありません。

そんな中で、今回のツアーは枠さえ空いていれば当日も予約を受け付けてくれるのが人気の理由になっているのでしょう。

 

主催者が語る「交流」を求める参加者の満足度アップのための工夫

今回参加したツアーの主催者である株式会社ヤトラの代表取締役Co-CEOである黄健輔さんに話を伺いました。

–バーホッピングツアーを始めたきっかけは。

過去にイギリス滞在中、自身にとってすごく思い出に残るツアーに参加したことを機に、日本を訪れる外国人に対しても同じような体験を提供したいと考えました。2022年10月の入国規制緩和を受けてビジネスチャンスが広がると考え、11月に会社員をしながら副業でツアーを開始しました。バーホッピングツアーにしたのは、特にナイトタイムエコノミーの可能性を感じ、参入の余地があると考えたからです。

—何から始めたのでしょうか。

既存のフードツアーのTripAdvisorのレビューを読みながら、ゲストが感じた価値や不満を研究したうえでツアーを開発しました。ただ、実行してみないと分からないので深く考えたり研究したりするより先に事業を開始し、顧客からのFBをもらい、都度改善しながら進めています。

—主催側として打ち出している特徴、工夫しているポイントを教えてください。

イギリスで参加したツアーの要素を分析しながら、以下の4点を特徴として打ち出しており、参加者からも高い評価をいただいています。

1. ローカルなツアーガイドが友達のようにガイドすること
2. 自分たちだとなかなか行きにくいお店に行けること
3. 世界中から来た他の旅行者と仲良くなれること
4. ガイドが話す飲食物や場所のストーリー

—どのような参加者が多いですか。

欧米豪からの25~35歳の方の参加が多く、1~2人で参加いただくことが多いです。

—主な予約経路は何ですか。

OTA、自社、提携事業者経由の順で多く、OTAでは特にAirbnbとGetYourGuideが多いです。

—収益も考えるとOTAだけに頼らず自社集客することが大きな課題だと思いますが、そのために取り組んでいることはありますか。

自社集客はInstagramtとTikiTokに力を入れており、ツアーの予約という導線に繋げたいので、自分たちのファンになってもらうようなコンテンツの投稿と、コンバージョンレートが高まるようなプロフィール画面遷移設計に力を入れています。

—6,000円という料金設定の理由を教えてください。

2,000〜8,000円で数回ずつテストしてみた結果、収益性と顧客満足度の観点で均衡が取れた価格が6,000円でした。

—多くのフードドリンクツアーやバーホッピングツアーでは飲食物も含んだ料金になっていますが、飲食を別料金にしたのはなぜでしょうか。

飲食代を含んでいるツアーだと、お客様が飲まない・食べない場合に割高になってしまうので、自分の飲食する分量によって料金に柔軟性があった方が良いと思いガイド料金のみにしました。

 

インバウンド向けのツアー会社として今後注目の企業ですので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。

▼株式会社ヤトラが提供するツアー「Travel Japan Together」はこちら

 

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