インバウンドコラム
訪日客向けの体験ツアーが各地で増える中、「直前予約でも参加できる」「気軽にローカルの人々と触れ合える」といった柔軟なツアーが注目を集めています。大阪メトログループが手がけるガイド付きツアーサービス「Osaka JOINER」もその一つ。
同サービスでは複数のツアーを展開していますが、今回はその中でも特に人気の高いフードツアーに参加。実際の体験をもとに、訪日客に支持される理由や満足度の高いツアーを支える運営の仕組みを、紐解いていきます。

直前予約に応える仕組みが、欧米豪の旅ナカ需要をつかむ
大阪・難波を拠点に、朝から晩まで複数のツアーを展開するOsaka JOINER。今回参加したのは、「Osaka: Food Crawl with a local friend」です。地元ならではの飲食店を3軒ほど巡り、参加者の希望に合わせて内容をカスタマイズできるフードツアーです。ツアー代金は、1名6800円。6歳以上は大人料金となります。
1日2回、12時と17時の開催で、いずれも3時間のツアー。特に、17時出発のツアーでは、日本人客が少ない時間帯のため、外国人客をお連れすると店側にも喜ばれるそう。
予約はツアー開始の1時間前まで可能!欧米豪の旅行者は、長期で日本に滞在する人が多く、京都や大阪を訪れることは決めていても、細かな訪問先を事前に決めていない人も少なくありません。
実際の参加者からは「大阪はノープラン」「隙間時間も有効に活用したいと考え、直前に思い立ってOsakaJOINERのフードツアーを申し込みした」というような声があるそう。さらに、「フードやドリンクは決められたものでなく、自分の気分やニーズに合わせて地元をよく知るガイドが選んでくれると言うのも魅力に感じた」という声もあると聞きました。そんなニーズに応える形で、直前でも参加できる仕組みを整えています。
その運営を支えるのが、ガイドのシフト制。直前予約に対応するため、常時2〜3名のガイドがスタンバイしています。また、多くの人が勤務しやすいよう、4〜5時間などから入れるショートタイムのシフト制を採用しています。ガイドは、平均1〜2本ほどツアーを担当し、それ以外の時間は、ツアーレポートのまとめや、新しい飲食店の開拓、旅行者への観光案内などを行っているそうです。また、ガイドの属性は、学生と社会人がおおむね半々で、全国通訳案内士などの有資格者も在籍しています。
紙のヒアリングシートが、受付の混乱と確認漏れを防ぐ

今回のツアーには、アメリカから8人組のグループが参加。同じ職場で働く仲間同士で、1人は東京在住、ほかのメンバーはアメリカ在住です。7人が東京在住の1人を訪ねて訪日し、みんなで旅をしているそう。ほとんどの方が大阪は初めてで、食に関わる仕事をしている人もいることから、このツアーを選んだということでした。
ツアーの開始前に、アレルギーの有無、アルコールを飲みたいか、ツアー代金には食事代が含まれていないことなどが書かれたヒアリングシートを渡して、参加者から必ずサインをもらいます。集合時に口頭で確認するツアーは多いですが、紙で記入してもらう形式は初めてでした。
▲ヒアリングシート
集合時の受付は、慣れているガイドでもバタバタしてしまうポイントの一つです。確認漏れを防ぐだけでなく、初心者のガイドも安心してスムーズに対応できるシステムです。また、記名式でヒアリング内容を残すことで、後のトラブル防止にもつながる点は、他の事業者にとっても参考になりそうです。
今回は、全員がお酒を希望。「アルコールは?もちろんYES!」と楽しそうに記入しており、盛り上がっていました。この日のガイドは、Haruさん。大学4年生で、Osaka JOINER立ち上げの2024年からガイドを務めているそうです。
出発前にヒアリングシートをみて、Haruさんがコースを決めます。ツアーは事前に細かく決められたものではなく、ゲストにヒアリングした上で決定しているそう。今回は、大阪が初めてというメンバーも多いので、大阪のグルメを楽しむ王道コースです。
この日は、最初に3〜4軒の店を巡るという説明がありました。立ち飲み、たこ焼き、串カツ、そして最後はカラオケというコース。「今日は特別なゲストが参加するよ。ゲストのSakiは日本人だから、カラオケで一緒に歌ってくれると思うよ」と、私にも突然の会話を振ります。ゲスト同士が打ち解けるような会話を交えながらツアーは進んでいきます。
JOINERならではの、ローカルの魅力を引き出すガイドスタイル
最初に訪れたのは立ち飲みの居酒屋「岳家」。日本酒の種類の多さに加え、「おばんざい」を楽しむことができるのが特徴です。今回は仲の良い8人組だったため、全員が1種類ずつ日本酒を頼んで、皆で飲み比べていました。甘いものか辛いものか好みだけを聞いて、Haruさんが店主のたけさんにお任せで8種類を注文します。

「おばんざい」がお皿に盛られてでてくると、ゲストがお皿の周りに集まってきます。Osaka JOINERのガイドは一つひとつを細かく説明するのではなく、ゲストの興味や反応に合わせて、必要な情報を端的に伝えるスタイルを取っています。Haruさんも、ゲストの様子を見ながら、質問があったものを中心に説明をしていました。
こうした説明方法は、誰が案内しても旅行者にとって分かりやすく伝えられるよう、ガイド育成の中で仕組み化されているそうです。
▲おばんざいに興味津々の参加者たち
また、日本酒などの専門的な知識は、ガイドがお店の人に聞き、それをそのまま伝えます。ローカルを体験を求めて参加している方が多いため、ガイドがすべてを説明するよりも、お店の人の話を通訳するほうが喜んでくれるそうです。
今回訪問した「岳家」は参加者に好評のお店の一つ。店舗は地下にあり、自分では見つけられないお店であることや、英語は話せない店主のたけさんがニコニコとお迎えしてくれること、また最後にはステッカーをプレゼントしてくれることなどが、人気のお店の秘訣のようです。もちろん、お料理もおいしかったです!
▲出口でたけさんからステッカーをもらいます。英語が話せなくても、ステッカーを通じてコミュニケーションをとることができます
賑やかな道頓堀のメインストリートで人気のたこ焼きと串カツを
その後は賑やかな道頓堀のメインストリートへ。写真を撮りながら、2軒目のたこ焼き屋「あっちち本舗」へ向かいます。
ここでは、8個入りを2つ頼んで、8人で分けて食べました。やや待ち時間はありましたが、いくつもたこ焼き店があるなかで、Haruさんが「ここだよ!」と案内してくれたことで、絶対においしいという期待が生まれ、待ち時間も苦になりません。皆さんたこ焼きは食べたことがあるそうですが、「もっと周りがクリスピーだった!これは別の食べ物みたい」と楽しんでいました。

次に向かったのは串カツ「小鉄」です。この時点で約1時間30分、ちょうど半分の時間で3軒目に到着しました。串カツは食べたことがない方が多く、万人に受ける料理ということで、串カツ店だけは事前に予約していました。
「串カツってなに?」については、「すべてがdeep fryされている食べ物」とHaruさんが回答します。また、彼女が「『すいませーん』って声をかけると店員さんがきてくれるよ」と教え、皆さん「すいませーん」と声をかけることができました。
食べる前には、「ソース二度漬け禁止」の話題で盛り上がりました。「このソースは他の人も使うってこと⁉ 信じられない」とびっくりしながらも、「二度漬け禁止」ルールを守って楽しんでいました。
カラオケ居酒屋で、ローカルとの一体感が最高潮に
最後に向かったのは、一曲100円でカラオケができる居酒屋「あいうえお」です。お店にいる人たち全員に歌を聞かれる状況に、最初はやや尻込みしていましたが、ガイドのHaruさんが先導して歌います。
1曲目の「A Whole New World」(ディズニー映画『アラジン』の主題歌)では、参加者は皆静かにみていましたが、2曲目に世界的にヒットした韓国の人気曲「APT.」を歌うと大盛り上がり。それ以降は、ゲストが好きな歌を入れて楽しみます。

途中、常連さんが踊りに入ってきてくれる場面もありました。盛り上がりが最高潮に達した頃に、ちょうど3時間。やや名残惜しい雰囲気もありましたが、「引き続きカラオケしていってもいいよ」と声をかけ、この日のツアーは終了となりました。
4カ所すべてのお店で、お店の方々や他のお客様との交流があり、おなかもいっぱい。最後に、チップを渡してくれたゲストもいて、とても満足した様子で帰っていきました。
「大阪の日常体験」を支える、地域との関係づくり
ツアーというと、何か特別な場所やものを案内しないといけないと思いがちです。しかし、今回参加してみて、大阪での日常を旅行者に体験してもらうことが大事だなと感じました。
日本で日常を体験したいと感じている訪日客にとって、一番ネックとなるのは言語でしょう。ガイドがいれば、参加者自身の言葉の不安がなくなるため、日常体験へのハードルを一気に下げることができます。また、日本語が話せない訪日客は入店しようとしても門前払いされるケースも多いですが、ガイドツアーであれば訪れることができます。
こうした日常体験を実現するためには、担当ガイドが誰であっても安心してツアーを実施できるよう、日頃から地域の人々とコミュニケーションを取り、関係を築いておくことが重要です。Osaka JOINERでは、観光事業者として地域の方々との関係構築に取り組んでいます。
実際に案内するお店には、Osaka Joinerのメンバーがプライベートでも訪れるようにしているそうです。そうした積み重ねにより、お店の方や常連客と仲良くなり、ツアーの際にもスムーズな案内が可能です。
また、今回のツアー中にも、Haruさんが店に来ている常連客の様子を観察し、カラオケで盛り上がってきたタイミングで「一緒に歌いませんか」と常連客に声をかける場面が見られました。
ツアーベースが支える、ガイドが安心して活動できる環境
Osaka JOINERにはツアーの出発地点となるツアーベースがなんば駅からすぐの場所にあり、マネジメントスタッフ、サポートスタッフなどが常駐しており、ツアーの対応や、ガイドへの教育を日々行っています。こうした運営スタッフがツアーに密に関わることで、ガイドが困ったときに相談ができる体制ができています。また、緊急のトラブルに即座に対応し、ツアーの知見・ナレッジをシェアできるよう、全員でLINEのグループも作っているそうです。
また、ガイドにはランク制度が設けられており、経験やゲストからの評価、チームへの関わり方などに応じて役割や報酬が変わっていく仕組みになっています。ランクが上がるとツアー管理なども任されるようになり、ガイドとしての責任の幅も広がっていきます。
旅行者評価の高いガイドが新人の育成などもしているほか、全国通訳案内士の資格を持つガイドも普段と違ったスタイルのツアーを楽しんでいるそうです。
ツアーベースがあること、そして、ガイド同士が支え合い高め合う環境を整えることは、最終的にはゲストの満足度にもつながるのではと感じました。個人事業主として孤軍奮闘するガイドが多い中で、安心してガイドができる環境が用意されているとも感じました。今後、各地にこのようなツアーベースが増えれば、誰もが安心してガイドとして活動できるのかもしれません。
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