インバウンドコラム

【人民日報】第84回 ショート動画プラットフォームで「大人気職人」が次々登場

2020.02.28

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中国では今、独創的なアイデアを持つ発明家や巧みな技術を身につけた職人、黙々と伝統を継承する無形文化遺産の伝承人などが、ショート動画の大流行の波に乗り、「ネット上の人気者」となり、インターネット分野における新たなトレンドとなっている。多くの人が中国伝統の手工芸文化を知り、それに触れる機会を作っていると同時に、中国の「草の根職人」であるそうした「ネット有名人」の巧みな創意や活力が海の向こうの世界中の人々にも知られるようになっている。

 

フォロワーの心を掴む匠の技

耿帥さん(31)は河北省の農村に住む普通の溶接工。しかし3年前に、一見何の役にも立たない発明品の動画をネット上に投稿したところ、ショート動画プラットフォームで瞬く間に「時の人」となった。

「『ネット有名人』というのは普通の人と一緒だと思う。僕も『職人』と呼ばれるほどではない。ただ、手を動かして、おもしろいものを自分で作るのが好きなだけ」と耿さん。

余万倫さんもショート動画がきっかけで「時の人」となった。四川省瀘州市の無形文化遺産・油紙傘の伝承人である余さんは2018年、ショート動画プラットフォームのアカウントを作り、そこで油紙傘を製作する様子を撮影した動画や精巧で美しい完成品を紹介する動画をアップした。すると、しばらくして、大勢の若者が店に押し寄せて、油紙傘が全部売り切れるほどの人気になった。

ショート動画アプリ・抖音(Tik Tok)の統計によると、2019年4月の時点で、伝統的な手工芸を含む国が指定する無形文化遺産1372種類のうち、1214種類が同アプリ上で紹介され、カバー率が88%を超えるようになっている。そして、関連の動画が2400万本以上投稿され、1065億回以上再生されている。投稿者の6割以上が「90後(1990年代生まれ)」だ。

ショート動画が大人気となり、「ネット上で大人気の職人」が次々に登場、その人気が海外にも波及するようになっている。

ショート動画を活用して、四川省からスローライフを発信する女性・李子柒さんは、樹皮紙を造ったり、竹を編んで椅子やベッドを造ったりする様子を捉えた動画を投稿しており、そのアンティークな雰囲気漂う動画は世界中のフォロワーの心を虜にしている。李さんは動画共有サイト・ユーチューブ(YouTube)にも動画を投稿しており、海外のネットユーザーが中国文化を知る窓口となっている。

 

伝統手工芸に活力を注入

インターネットコンテンツ分野における先駆者であるショート動画プラットフォームは、多くの職人らがその腕前を披露する機会を生み出している。中国インターネット情報センターの統計によると、2018年12月の時点で、中国のショート動画ユーザーは6億4800万人に達した。つまりネットユーザーの78.2%が利用している計算になる。ショート動画系アプリの使用時間も、モバイルアプリの使用時間全体の8.2%を占めている。

また、ショート動画プラットフォームの特徴も、「ネット上で大人気の職人」が次々に登場するための良い土壌となっており、より多くの人が伝統手工芸の伝承やイノベーションを目にすることができるようになっている。

中国伝媒大学・中国インターネット動画研究センターと抖音が共同で発表した「ショート動画・社会イノベーション研究報告」によると、ショート動画が人気となり、ミニイノベーションを行うより多くの個人が、知られ、記録され、シェアされ、認められる機会を生み出している。このようなあまねく恩恵のあるシェア・共創のスタイルにより、広い範囲から、さらに深みのあるグループイノベーションが効果的に集められ、社会全体のイノベーションが促進されている。

「ネット上で大人気の職人」が登場し、多くの人が伝統技術の魅力を新しい視点で見ることができるようになっていることで、伝統手工芸の継承促進にもつながるという声もある。伝統手工芸が現代の人々の生活に溶け込むようになるにつれて、それらがさらに良い仕方で保存、継承され、「匠の精神」が社会全体で発揚されるようになっている。

しかし、手間暇をかけて精巧なものを作り出すというのが「匠の精神」であって、忍耐強さや磨きに磨きをかけることの価値こそが最も注目されるポイントであって、膨らんでははじける泡のようなものではなく、押し寄せてはすぐに消えていく「ホットマネー」のようなものであってはならない。プラットフォームにとっては、職人の創意をどのように尊重し、匠の心を守り、さらに多くの職人のために腕前をPRする場を作っていくかが、今後も考え続けるべき課題だ。

 

 

 

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