インバウンドコラム

コロナに観光業が打ち勝つためにも、日本人が「ホリデー」を楽しもう!まずは近場から

2020.05.27

清水 陽子

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ヨーロッパが夏のホリデーシーズンに向けて動き始めています。5月13日にEUが「旅行と移動に関するガイダンス」を発表しました。それによると、「ヨーロッパの人々の多くは、夏に出かけることを強く望んでいるが、同時に安全に移動ができて安全に過ごせるかどうかを気にしている」とのこと。同日13日に英国一般紙「テレグラフ」が「夏はキャンセルされていない。わくわくする新しい機会でいっぱい」という記事で、来月には、イングランド北部カンブリアでのキャンプが可能になることなどが紹介されています。米旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」も12日、「夏の旅行は実際こんな風になりそう」という記事で、この夏は、燃料費の値下がりも手伝って、車の旅が復活するだろうとの見方を示しています。

欧米では、夏に「ホリデー」に出られるのか、みんながヤキモキしているようですが、それは、「ホリデー」が生活の一部になっているからです。働くことと休暇を取ることは表裏一体で、一連が暮らしそのものです。例えばスイスでは、全ての労働者に、1年間に最低4週間の有給休暇があり、そのうちの2週間は連続していなければなりません。そして、その休暇は実際に100%取得され「ホリデー」として消化されます。日本では、有給休暇は、病気や急用などで使う人が多いのではないでしょうか。出かけられる程度に連続して休めるのは、GWなどの国民の祝日、そしてお盆休みに年末年始など、国中が休んでいる時期だけというのが一般的です。そうすると必然的に、その時期はどこも混雑し、移動代も宿泊代も高騰します。休みはほぼ渋滞の車内で過ごし、疲弊して終わるという事も多いのも現実です。みんなが同じ時期に休むと、休みが有効利用されないことが残念です。

労働生産性の国際比較 2019」によれば、就業者1人当たりの労働生産性はOECD加盟国中、日本が21位なのに対して、スイスは5位です。休みが多いことで生産性が下がる訳ではなさそうなので、日本の休暇文化が変わっていくことを期待します。

日本人の休暇への意識が変われば、日本の観光地は潤い、魅力も更に増すでしょう。有給休暇がきちんと取れて「ホリデー」に使われるようになれば、日本の観光業は随分救われるのではないでしょうか。日本でも2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。この夏はひとまず、5日間の休暇をとって、近場で「ホリデー」を過ごしてみませんか。

ところで、欧米でよく使われるこの「ホリデー」という言葉は、日本語に訳すと何だろうとよく考えます。辞書を引くと「休日」と出てきますが、それでは自宅でテレビを見て過ごす1日も「休日」なので当てはまりません。「旅行へ行く」が一番近いのかなと思うのですが、その表現だと、遠くへ出かけて、観光をしなければならないような印象を受けます。

私は、スイスのお客さんの言う「ホリデー」とは、好きな場所へ行って好きなように過ごすことと理解するようになりました。彼らは、疲れていれば朝寝坊して時間をかけて朝食をとるし、カフェの居心地がよかったら好きなだけのんびりします。「せっかく遥々日本に旅行に来たのに、観光しなくていいの?」と急かすと「ゆっくりしようよ、ホリデーなんだから!」と返ってきます。

旅行サイト「エクスペディア」の「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」の結果によると、日本では有給休暇を取得する事に罪悪感がある人が多いようです。コロナを機に、在宅勤務への抵抗感は随分減ったと聞きます。「無駄を省く」も「楽しむ」も「怠ける」と同義ではありません。コロナショックが意識改革に繋がり、休暇に対するの偏見もなくなると、日本の観光はもっと面白くなるのではないでしょうか。日本でも、観光業界のコロナウイルス対応ガイドラインが5月14日に出揃い、お客様を迎える準備は始まっています。

 

 

清水陽子
スイス訪日旅行手配 Hase & T 代表
早稲田大学で哲学とチアリーディングを学んだのち、日本航空に客室乗務員として入社する。退社までの6年間、与えられた乗務を休んだことがない花マル健康優良児。行った事があるのは37の国と地域。暮らしたことがあるのは、カナダの小麦畑に囲まれた街、スイスの湖水のほとり、台湾の焼き餃子屋台裏のアパート。2010年からやまとごころでインバウンドニュース配信を担当しつつ、現在は故郷ヨコスカを拠点に、スイス富裕層向け訪日旅行手配業を営む。自らの海外経験から「地元の人との触れ合いこそ旅の醍醐味!」と信じて、誰かに会いに行く旅づくりを目指している。英語とドイツ語を話す一児の母

 

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