インバウンドコラム
コロナの間のロボットの賢い使い方
「世界大学ランキング」が日本でも毎年話題に上る、英国の世界大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds)のランキングに、「ホスピタリティー&レジャー経営大学部門」が存在するのをご存知でしょうか。このランキングで、2019年と2020年連続で首位についたのがスイスの「エコール・オテリエール・ド・ローザンヌ(EHL – Ecole hôtelière de Lausanne)」です。現在もトップを走るEHLは、1893年に世界初のホスピタリティ・マネージメントの学校として創業した、ホスピタリティ教育の先駆者でもあります。
パリの大学病院で活躍するペッパー
さて、そのEHLが、ホスピタリティ、ビジネスと教育についてのニュースを配信するサイト「Hospitality News & Business Insights by EHL」に、「コロナの間のロボットの賢い使い方(The clever use of robots during COVID-19)」という記事が掲載されており、ソフトバンクのロボットPepper(ペッパー)が登場しています。「ペッパーは可愛いだけでなく、人間と相互に交流できるようデザインされている」「パリの大学病院に4体のペッパーが貸し出され、このロボットのおかげで、患者たちが家族との交流を続けることができた。ペッパーは、孤立している患者たちに、前向きで喜びに溢れた経験を届ける。このロボットと交流することは楽しい。ダンスだってできる」「ペッパーを使えば、ホテルやライブイベント、スーパーマーケットや空港で、人々が自分自身と周囲の人々を感染リスクに晒す不安から解放される」と、ペッパーの仕事ぶりが絶賛されています。
懸念される点として、「自主的に臨機応変な対応ができないこと」や「プライバシーとデータ保護の問題」、「責任の所在」を含む6つが挙げられていますが、私がこの記事を新鮮に感じたのは、ヨーロッパでペッパーの「可愛らしさ」と「親しみやすさ」が認知されているからです。
ドイツの高齢者施設のスタッフが、日本の施設を見学する際のお手伝いをしたとき「日本の施設では、ロボットが高齢者世話をすると聞くがどういうことか」という質問がありました。いわゆる「癒しロボット」が、高齢者施設でマスコット的に可愛がられているような例についての話だったのですが、ドイツでは「高齢者の相手を機械にさせている」といった、否定的な文脈で語られていたのでした。
日本と欧米のロボットに対する眼差しの違い
ロボット工学を学ぶ日本人の学生さんにそんな話をしたところ、日本と欧米のロボットに対する眼差しの違いを教えてくれました。「例えば、『リンゴ収穫ロボット』を作ろうと考えた場合、日本人の頭には、手のようなものでリンゴを一つ一つ摘み取る人型ロボットがまず頭に浮かぶ。それに対してアメリカでは、りんごの木をゆさゆさ揺らして実を落とし、それを一気に回収する、トラクターのようなロボットをまず考える」とのことでした。日本人が「ロボット」と聞いてまず、人型を想定してしまうのには、鉄腕アトムやドラえもんの影響が少なからずあるそうです。ソフトバンクの社長である孫氏は実際、鉄腕アトムを見て、感情機能を持ったロボットの開発を志したと言います。
「友達になれるロボットがいたらいいな」という夢がつまったロボットが、コロナの時代に「絶対に病気にならない友達」として、人と人とをつなぐ楽しく頼もしい存在として世界で活躍していると思うと、日本の漫画文化の影響力の大きさに改めて感動します。
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