インバウンドコラム
コロナ禍で世界的に移動が制限され、長距離移動を避けるという観点から、そして「フライトシェイム(飛び恥)」と呼ばれる、温室効果ガス排出量の多い航空機移動を嫌厭するという動きから、列車の旅が注目を集めています。海外メディアでも列車の話題が多く取り上げられています。
ヨーロッパ大陸で見直される長距離列車の価値
6月に『ロンリープラネット』が、「魅力的な新しい路線とともにヨーロッパの線路に寝台車が戻ってきた」という記事を、7月に米紙『コンデナスト・トラベラー』が、「スコットランドへ寝台列車で行く10の理由」という記事をそれぞれ掲載しました。『ロンリープラネット』は、ヨーロッパの都市を結ぶ新しい寝台列車の計画があること、またフランスを初め多くの鉄道会社が寝台列車を復活させることを伝えています。『コンデナスト・トラベラー』は、「列車で旅することは、自然と人間、街、教会や川、つまり暮らしを見ること」と、ロンドンで夕方に列車に乗り、翌朝スコットランドに到着する寝台列車での旅の魅力が書かれています。
世界で最も豪華な11の列車
そんな中、ムンバイを拠点とする、豪華なライフスタイルに注目したインドのウェブサイト『Luxurylaunches』が、「世界で最も豪華な11の観光列車」という記事を掲載し、このリストに日本の列車が3つも登場していたので、ご紹介します。
Palace on Wheels (パレス・オン・ホイールズ) – インド
インド最初の豪華観光列車で、素晴らしい伝統的なインドのサービスが受けられる。ニューデリーから西北インドを廻ってニューデリーに戻る7泊8日の旅。
The Ghan (ザ・ガン)– オーストラリア
その運行の歴史は1878年まで遡る。オーストラリアの伝説的鉄道で、ダーウィンからアデレードまでの2979kmを3泊で縦断する。
Belmond Andean Explorer (ベルモンド アンデアン・エクスプローラー) – ペルー
南米最初の豪華寝台列車は、インカ帝国の首都として栄えたペルーのクスコからプーノにあるチチカカ湖へ、1泊2日で自然と古代遺跡の中を走る。さらにもう1日、世界遺産にも登録されている都市アレキパまで足を伸ばすツアーもある。
Belmond Royal Scotsman (ベルモンド ロイヤル・スコッツマン)– 英国
スコットランドの首都エディンバラを出発し、古い城、豪華な庭園、そして有名なウィスキーの蒸留所などを巡る。1泊2日のツアーから7泊のものまである。
The Transcantabrico Gran Lujo (トランスカンタブリコ・グラン・ルホ)– スペイン
スペイン最古の観光列車で、渓谷や海岸を7日間で巡る。ラウンジやスイートの客室は20世紀初頭のしつらえと現代の利便性が融合していて、線路の上の5つ星ホテルと言える。
Venice Simplon-Orient-Express (ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス)– ヨーロッパ
ロンドン-ベネチア間を1982年から運行している伝統ある観光列車。見事なインテリア、ワールドクラスの食事と素晴らしいヨーロッパの景色を楽しめ、一生の思い出となる旅ができる。この列車でジーンズの着用は認められないのでご注意。
Twilight Express Mizukaze (トワイライトエクスプレス 瑞風) – 日本
定員30名で大阪-下関間を走る。スーパーデラックスな列車が、エメラルドグリーンの田んぼやごつごつとした岩場の海岸線を抜けて古代の神社へも連れて行く。車両の前後には、景色を楽しむためにデザインされた、大きな車窓の「展望車」がある。
Golden Eagle(ゴールデン・イーグル) – ロシア
シベリア鉄道のウラジオストク-モスクワ間を走る列車で15日間の旅をする。6000マイルの大陸を横断し8つのタイムゾーンを超える旅。乗車前に乗客のためのディナーパーティが開かれる。
Rovos Rail Pride of Africa (ロボス・レイル プライド・オブ・アフリカ) – 南アフリカ
1989年に始まったこの豪華列車は、ケープタウンとプレトリア間のルートで、南アフリカの贅沢を体験できる。この列車には複数のルートがあり、人気の3-4泊のものから、ジンバブエ、ザンビア、コンゴ、アンゴラまで旅する15泊のものもある。
Kyushu Seven Stars (ななつ星 in 九州) – 日本
「旅は目的地が全てではなく、旅の半分の楽しみはそこに辿り着くまでの過程だ」というコンセプトを表現した列車。食堂車では、旅をより特別なものにすべく、料理人が丁寧に調理してくれる。
Train Suite Shiki-Shima (トランスイート 四季島)– 日本
東京を拠点に東日本を巡る列車で、世界に類を見ない贅沢さと気品を備えている。2フロアあるスイートには暖炉や檜風呂があり、共用のラウンジにはピアノバーがある。日本は、質の高い列車の旅の先駆者として広く知られているが、四季島は速さと豪華さで、その評判を裏付けた。
お金と時間をしっかりかけて一生の思い出になる旅がしたい
この記事には、サブタイトルがついていて「息をのむようなペルーの風景から、日本の沿岸部の絶景まで、この旅は棺桶リスト(死ぬまでにやるべきことリスト)に入れるべき」、というものです。まさに、この11の列車の旅すべてが一生に一度の旅に相応しいものばかりです。ある日突然、移動ができなくなることがあると知った今、旅はより特別なものとなりました。私自身、次に旅行をするならば、これが最後の旅行になったとしても後悔しないようなものを目指して計画しようと考えています。それはつまり、旅行コンテンツを提供する側の立場で考えると、思い切った提案が、受け入れられる時だということです。そういえば、フランスのデザイナー、ティエリー・ゴーガン氏が先日、製作費3億5000万ドルの「プライベートジェット」ならぬ「プライベート列車」のデザインコンセプトを発表しました。受注はまだないようですが、こんなアイディアが、いま望まれているのではないでしょうか。
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