インバウンドコラム
アメリカの旅行業界誌TRAVELPULSE が、8月に「日本:誰にとってもアクセシブルな目的地(Japan: An Accessible Destination for All)」という記事を掲載しました。
「2020パラリンピックの開催地である東京は、同大会のホストは2回目で、2006年から東京中の移動のバリアフリーとアクセシブル化に取り組んできた」と始まります。
2020を目標に進んだ世界に誇れるユニバーサルデザインの街づくり
記事によると、2006年に施行された「バリアフリー法」が、東京のアクセシブル化を促進したといいます。「バリアフリー法」とは、正式名称を「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 」といい、高齢者や障害者がより負担なく移動ができるようバリアフリー化を進める目的で施行されました。2013年に、オリンピック・パラリンピックの2020年東京開催が決まると、世界に誇れるユニバーサルデザインの街づくりへ動きがより活発になっていきます。2016年には、駅やその他公共移動手段のインフラ改善に向けて、ユニバーサルデザインへの具体的な議論が開始。2017年に、第一回ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議が設置され「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が取りまとめられました。
日本の都市で増えているノンステップバスの外国人が驚く機能
同記事において、日本政府観光局理事の蔵持京治氏は「例えば、東京にある約700の駅のうち、95%に、段差のない通路と誰にとっても利用やすいようにデザインされたトイレがある。そして、東京の公共バスの94%は車椅子での乗降が可能。この広域な公共交通網によって、事実上、全ての人が、東京のほぼあらゆる場所へいくことを可能にしている」と語っています。「床が低く、誰にとっても乗り降りしやすいデザインのノンステップバスが日本中の都市で増えている。東京の公共都営バスのほとんどがノンステップバス」と加えました。
ここに登場するノンステップバスですが、中には、乗降の際にバスが傾いて降りやすくするニーイングという機能がついているものもあります。この機能には、私が以前案内していたスイス人観光客も「今の動きは何? もしかして乗降しやすくするためなのか」と、とても驚くと同時に感動していました。中国メディアの情報を日本語で多く発信するサイト、サーチナでも2017年、中国のニュースアプリ今日頭条が、ニーイングするバスについての記事を掲載したことを伝えていました。
移動だけでなく楽しむ場面もバリアフリー
また、TRAVELPULSEの記事は、バリアフリーが進んでいるのは東京だけではないこと、日本の多くの地域で、アクセシブル・スポーツ・アクティビティが提供されていることを伝えています。例えば滋賀県では、特別にデザインされたハーネスを使って、車椅子で琵琶湖の上をパラグライディングできます。奄美大島のゼログラヴィティ清水ヴィラではダイビングにスノーケリング、カヤックなどの体験がバリアフリーで提供されています。
記事は最後に、日本には、日本で旅をしようと思っている障害を持つ人々への多種多様のリソースがあるとし、観光庁によるアクセシブルなレストランの地域別リストや、JNTOのAccessible Japan を紹介しています。
現実的に使いやすくする努力を忘れずに
今年は、家族が車椅子を利用した時期があり、様々な場所に車椅子が用意されていることを知りました。しかしながら、台数が少なく予約もできず、実際に利用しようとすると、全て使用中ということもありました。東京などの大都市は、駅も広くて利用客も多いですが、その割にはエレベーターの数が少ないため、場所を予め正確に把握していないと無駄な動きをしてヘトヘトになるというのが現実ではないでしょうか。今のところ、車椅子を利用していたり、目や耳が不自由であっても、安心して自由に移動できるのは、まだまだ相当動き慣れた人に限られるように思います。
東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに加速した努力を続けていくことで、今後、多くの都市が、使い勝手の良いユニバーサルデザインに磨き上げられていくことを期待します。
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