インバウンドコラム
コロナ禍でめまぐるしく状況が変化する中、人々はこれまで以上に正確な最新の情報を求めています。そんな中、米マサチューセッツ州に本社を置く、大手旅行プラットフォーム、トリップアドバイザーが、2020年1年間に投稿されたデータを集め「口コミの透明性に関するレポート」を発表しました。
口コミを掲載するプラットフォームが、その信頼性をどう担保しているのかがわかる興味深いレポートの内容を紹介していきます。
2020年口コミガイドラインを変更 4万件以上の口コミを削除
レポートによると2020年、同プラットフォームに、世界中から2600万件以上の口コミが寄せられました。新型コロナウイルスによる影響を情報に反映させるため、同社は口コミガイドラインを変更して対応しています。政府のガイドラインや規制を無視するよう促したり、医療的支援や検査を受けないよう推奨したり、誤った情報を助長したりするコンテンツは削除され、COVID-19を「中国ウイルス」と呼ぶなど、人種差別を示唆するコンテンツも禁止されています。それらの対応で、約25万件の口コミに対し審査が行われ、17.95%にあたる4万6145件の口コミが、削除されました。
独自の分析システムで口コミの5%を追加審査 投稿者への検証も
同プラットフォームへの投稿条件は「12ヶ月以内の体験に関する内容であること」「施設と関わりのある個人や法人、競合施設からでないこと」「宣伝目的、広告を含む内容でないこと」「旅行体験と関連性があること」「実際の体験であること」「他者を尊重すること」です。投稿された全ての口コミは、独自の分析システムで、条件を満たしているかが審査され「掲載」「却下」「人による追加審査」のいずれかに振り分けられます。2020年には、投稿された口コミの3.1%が自動的に却下され、5.1%について審査員による追加審査が行われました。追加調査では28言語に対応した担当者が24時間体制で作業し、時には投稿者に直接連絡をとって状況を検証するなど、自動システムでは判断できない微妙な要素を分析しています。
また、掲載後の口コミに対しても、読者からの申立てにより調査を行うシステムも確立されており、2020年には、口コミ投稿の4%弱が、公開後に削除されました。
金銭の授受を伴う虚偽の口コミ、専門チームを立てて厳重に調査
口コミが削除される主な理由は「口コミがサイト利用者の基準に違反している(コンテンツに関する疑念)」「旅行者をだますための虚偽又は不正な投稿(虚偽の口コミ)」「休業など管理上の理由」の3つだといいます。2020年は「コンテンツに関する疑念」が48.3%と最も多く、次に多かったのは「虚偽の口コミ」で39.7%した。
虚偽の口コミのなかでも、施設が個人や企業に依頼して、肯定的な口コミを投稿させる、金銭の授受を伴う口コミには、専門の調査チームを配備して警戒しています。2020年には、合計372件の金銭授受を伴う口コミがサイトからブロックされました。
偽りの情報が通用しない土壌作りには消費者の意識も重要
レポートは最後に、2020年を「信じられないほど厳しい一年」だったと振り返り、「新しい生活様式」では、質の高い旅の参考情報の確保が重要な優先事項であるとし、口コミに懸念がある場合には報告するよう、協力を呼びかけています。
サイト内の口コミは消費者にとって、施設を選ぶにあたっての、重要な指標になります。パンデミック中の世界では、ちょっとした選択の誤りが、大惨事を引き起こしかねません。金銭の授受を伴う虚偽の口コミの多さに驚くと同時に、偽りの情報を許さないプラットフォームづくりの一端は、消費者が担っていることも知り、能動的に情報に関わっていく感覚を養わねばと思わされるレポートでした。
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