インバウンドコラム
2021年は旅行業界、特にインバウンド事業者にとって、2020年以上に試練の年でした。私自身、100%インバウンドの旅行サービス手配業を生業としていたため、動きたくても動けない日々が長引くにつれ、諦めの気持ちが芽生えることもしばしばでした。そんな時、世界のメディアを見ると、アイディア一つで新ビジネスを展開している事業主、かつてのライバルと手を組んで奮闘している企業の姿に刺激を受けてきました。知ることは力になると、メディアの使命を改めて感じた年でもありました。
そんな2021年を、旅行の専門家はどう振り返ったのか。スペインの航空旅行調査会社ForwardKeysのアナリストのチームが、2021年を振り返り、8つのトレンドを発表しました。完全に止まっていたかのような2021年の旅行業界の動きを知ることのできる興味深い総括をご紹介します。
1.アメリカのレジャー旅行が回復を牽引
旅行者が訪れた世界中の都市を、パンデミック前の2019年と2021年で比較すると、レジャー旅行が回復を牽引していることがわかる。主要な都市のいくつかがランクを下げた一方、レジャーの目的地、特にアメリカからの行楽地が上位につけた。
最もランクを上げたのは、メキシコのカンクンと、アメリカのマイアミで、どちらもアメリカからの行楽地として人気の場所だ。今年初めて下位にランクインした都市は、ヨーロッパからの行楽客を集めた場所である。パンデミック前に人気だったバンコク、東京、ソウル、シンガポール、香港、台北、上海、サウジアラビアのジェッダ、ロスアンゼルス、大阪はランク外となった。
2.最も回復力があるのは、メキシコ、中央アメリカ、カリブ海、アフリカ
国際的な航空移動は、全体としてはパンデミック前のレベルの26%だが、アジア太平洋地域でわずか8%で、ヨーロッパが30%、アフリカと中東が36%、南北アメリカでは40%に達した。
上半期と下半期を比較してみると、世界全体ではパンデミック前の2019年比16%から36%へと2倍以上になっているが、その回復は偏っている。アジア太平洋地域では、5%から10%への増加に留まるが、ヨーロッパでは14%から45%に、中東とアフリカでは24%から48%に、南北アメリカでは30%から52%に増加した。訪問者数を最もよく維持したのは、米国からの観光客を集めた中央アメリカとカリブの国々だった。それらの多くは、年間を通じて2019年のレベルの60%を超える訪問率を維持した。
3.中東が回復を開始
いくつかの中東の都市も、下半期の訪問者が2019年比の60%を超えた。 最も注目すべきは、トルコが下半期67%に、エジプトが72%に達したこと。 ドバイは、「世界中から旅客を集めた都市」のトップの座を維持したが、航空輸送のハブとしてはドーハに追い抜かれた。
4.主に国土の大きな国では、国内旅行が支配的
ブラジル、中国、ロシア、米国など、国土の大きな国では、国内旅行が増加している。 中国では、国内旅行は2020年9月にパンデミック前のレベルに回復した。 ブラジル、ロシア、米国、中国では、2021年下半期の国内旅行が、それぞれパンデミック前と比較して、148%、128%、87%、76%に達している。
5.ヨーロッパの主要航空会社は国境に苦慮
国土の大きな国の航空会社は、短距離海外旅行を主力とする航空会社に比べ、COVID-19の嵐をうまく乗り切ることができた。 これは、2019年と比較した2021年の上位20の航空会社の分析から読み取れる。ヨーロッパの主要な航空会社は全てランクを落とし、中国と米国の航空会社に取って代わられた。
6.長距離旅行の減少
パンデミックによって長距離旅行が減少した。 2019年、地域内旅行と地域外旅行の比率は56%:44%だったが、2021年には、62%:38%に変化した。 特に、ヨーロッパや南北アメリカでは、長距離ではなく地域内を旅行する人の割合が高くなっている。 この傾向は、アジア太平洋地域の事実上の閉鎖、コストの増加、パンデミックでの長距離旅行の難しさ、頻繁に変化する旅行規制など、いくつかの要因が組み合わさっている。
7.ドーハとアムステルダムがハブ空港の戦いで前進
ハブ空港の戦いで、ドーハはドバイを抜き、南アジア、中東、北アメリカ、サハラ以南のアフリカの間の航空交通の中継点となった。 ヨーロッパではアムステルダムが、欧州内の乗り継ぎと北米とへの玄関口としてフランクフルトを抜いた。
8.新しい変異種の脅威
空の旅の回復を示したグラフは、比較的着実な成長を示している。しかし、デルタ株が流行しはじめた3月12日の週以降と、COVID-19新規感染者が急増した10月下旬以降に、落ち込みが見られる。オミクロン株の出現とそれに応じて導入された旅行制限により、クリスマス直前で旅行の需要が抑制される可能性がある。
世界中の調査会社やメディアが、旅行業界の未来を探ろうと、試行錯誤しています。現場では、身動き取れない時期を超え、ようやく回復の兆しが見えたかと思った途端、新たな変異株が出現し、気持ちを挫かれている人も多いのではないでしょうか。少しでも多くの情報に触れることが、暗闇を歩く助けになると信じています。2022年こそは、観光業界に希望の光が見えますように。
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