インバウンドコラム

2022年 海外メディアが報じた観光業界トピックス、宿・交通など業種ごとに紹介

2022.12.22

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新型コロナウィルスの発生から丸3年が経ち、この間、世界の観光業界は未だかつてない試練を耐えてきました。ようやく光が見えてきた2022年の海外メディアの話題で、筆者が注目したものを、業種ごとにピックアップしてみました。過去のコラムで取り上げなかったけれども気になったニュースも番外編としていくつか紹介しています。

 

宿泊業

シンガポールが3月にホテル・サステナビリティ・ロードマップを発表

シンガポールは2022年3月に、政府観光局とシンガポールホテル協会との共同で「ホテル・サステナビリティ・ロードマップ(Hotel Sustainability Roadmap)」を発表しました。これは、2050年までに全てのホテルでネット・ゼロを達成するという目標に向けた包括的で具体的な行程です。2050年までに、ホテル客室数の60%以上が、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会など国際的に認証されたホテルのサステナビリティ認証を取得することと、ホテルは2023年までに排出量の把握を開始し、2030年までには排出量を削減、2050年までに排出量ゼロを達成することが目標に掲げられました。

番外編:ホーム・エクスチェンジの人気高まる

お互いの家を交換し合う「ホーム・エクスチェンジ」が、コロナ禍で注目されているという話題がありました。2006年公開の映画『ホリデイ』で描かれ、当時も注目された、ユニークな旅のスタイルです。コロナ渦では、不特定多数の人々との接触を避けるため、家族で家を専有できるという点から人気が高まっているのだと、3月に米誌Condé Nast Travelerに載っていました。11月のNational Geographic の信頼関係に基づいたシェアリングエコノミーの形態として利用者が増えているという記事も興味深く読みました。

 

交通業

欧州で進む航空と鉄道の協力

4月にフランスで「2時間半範囲内で列車移動が可能な区間の航空機の運行を禁止する法律」が、施行されました。欧州では航空機の飛行による環境負荷を考え、短距離移動を鉄道に切り替える動きが活発です。航空会社自らが先導し、様々な対策を講じています。KLMオランダ航空は4月、高速鉄道Thalys(タリス)と連携し、夏のスケジュールではアムステルダム-ブリュッセル間1日5往復のうち、1往復を鉄道で運行すると発表しました。8月にはドイツ鉄道が航空連合「スターアライアンス」に加盟し航空と鉄道の連携強化が話題となりました。10月にはスイス・インターナショナル・エアラインズも、スイス連邦鉄道(SBB)とのパートナーシップを拡大しています。

番外編:航空機発着さえできる桁外れに豪華なヨット

王や富豪が、富を誇示するために所有するという、スーパーヨットには、ヘリポートを備えたものもあるのだとか。CNN Travelが11月、とんでもないラグジュアリーボートを紹介しました。設計をしたラザリーニ社によると、建造には80億ドルかかるというこのヨットには、港や航空機の発着もできる広場があるそうな。どんな人が注文するのでしょうか。

 

小売業

世界のギフトショップ革命 そこでしか買えないものを

5月のアメリカの旅行誌グローバル・トラベラーに「ギフトショップを新たなステージに引き上げたホテルたち」という記事が掲載され、お土産物屋さんが、地元の職人やアーティストに焦点を当てたラインナップにシフトしていることが報じられました。消費者は、そこに足を運ばなければ出会えなかっただろう品を求めています。

番外編:1杯のお茶が高価なのはなぜ?

なぜこの中国茶は1キロあたり$184,000もするのか」という、CNN Travelの記事がありました。香港のレストランでアフタヌーンティの提供が始まったというところから、なぜ1杯の中国茶がこんなに高価なのかという問いに挑みます。私も台湾でお土産に中国茶を買おうとして、その価格、いや同じに思えるお茶の価格差に戸惑いました。結局のところ、良いものは高価なのだという結論でしたが、その良さをいかに伝えるかが、販売する側にとっての永遠の課題ですね。

 

飲食業

奈良で第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラム開催

12月に奈良県で「Gastronomy Tourism for People and Planet: Innovate, Empower and Preserve(人と地球のためのガストロノミーツーリズム:革新し、活躍を推進して、維持する)」をテーマに、UNWTOのガストロノミーツーリズム世界フォーラムが開催されました。女性と若い才能の活躍促進、文化交流と本物の追求を促し、観光地と食の生産者の地位向上におけるガストロノミーツーリズムの役割に焦点を当て、成功事例の紹介や観光分野での食品ロス問題へのグローバルなロードマップ作成支援を行うとしています。

番外編:意外な食が記事になっていることがある

アジアのベストストリートフード50」というCNN Travelの8月の記事で、日本からはソフトクリームが紹介されていました。5月のBBC Travelでは日本のシンプルなストリートスナックとして焼き芋が記事になっていました。予想外のものが海外メディアの誌面を飾っていて驚きました。

 

観光地

世界の観光地で入場制限の動き

イタリア「水の都」ベネチアは、2023年から訪問税を導入することを決めています。CNN Travelの記事によると、「目的は、街を閉じることではなく、観光客のピークを減らすため事前予約をしてもらうことにあります」「ベネチアは生きている街であり、このままあり続けなければならないのです」と、ベネチア観光局のベンチュリーニ氏は言います。世界で初めて「入場料」が必要な都市となるベネチアのチケットは、3ユーロ(約400円)から10ユーロ(1400円)の間で、定額ではなく、訪問者の人数によって決まります。5月にはTravel Off Pathが、ハワイのマウイ島が入島人数を制限する可能性を報じており、11月にはDutchNews.nlが、アムステルダム市で観光客を2000万人に制限する施策が提案されていると伝えます。また、その動きは都市だけにとどまりません。英国の富裕層向け旅行会社Brown+Hudsonは11月、どの目的地へも送客数を年間50人までとすると発表しました。

番外編:“旅行会社”による古くて新しいビジネス

8月に米女性誌COSMOPOLITANがZ世代などをターゲットに、インターネットがなかった時代の旅行会社のサービスを古くて新しいサービスとして提供を始めたことを面白く読みました。「旅行会社(という存在を覚えてる?)に電話して、行きたい場所を伝えると、完璧な旅行計画が提供されるとい古き良きサービス」という見せ方で、オーダーメイドの旅行を提供しています。

2022年、世界はロシアのウクライナ侵攻という新たな危機に直面し、改めて2019年以前の日々を夢のように感じています。苦しい時も、単純に元に戻ることを望むのではなくより良い未来を目指して努力する人々を、いつも頼もしく見ています。

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