インバウンドコラム
法務省は6月30日、出入国管理統計年報を発表し、2016年の日本への入国者の国別男女年齢別データが明らかになりました。
年齢に注目すると、20-30代の入国者が約1000万人であるのに対して、50-60代が500万人と、半分ほどしか入国していないことがわかります。
この開きは特にアジアとヨーロッパで顕著で、アジアからは20-30代の入国者約900万人に対して、50-60代が400万人。ヨーロッパからは20-30代の入国者約68万5000人に対して、50-60代が36万人となっています。
アジアについては、世代による日本への感情の違いが影響していると思われます。ヨーロッパに関しては、シニア層が満足できる宿泊施設がないという指摘もありますが、私はゆったり過ごせる旅のイメージができないというのも理由の一つかと考えます。
渋谷の交差点や満員電車の映像が世界に配信され、ごちゃごちゃした国という印象が先行しているのではないでしょうか。見どころも多いので、ツアーもあれもこれもと詰め込みがちになってしまいがちです。日本旅行は「疲れそう」と思われているのかもしれません。
以前、ゆっくりしてもらおうと、40代のドイツ人夫妻を温泉旅館にお連れしたことがあります。「貸切風呂の時間はひと組50分間で予約の時間に遅れないように」「夕食は18時半から」で「朝食は8時か8時半」との時間割に「日本の休暇は忙しいのね」と言われてしまいました。私のゆったりは日本基準だったと気づかされたほろ苦い思い出です。
そんな中、今、注目なのが、豪華寝台列車の旅です。今月初め、イギリスの「テレグラフ」に「豪華列車の新しい時代へようこそ」と言う記事が掲載されました。この「新しい時代」を引っ張るのは日本です。6月17日の一番列車のニュースが記憶に新しい「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」と、5月1日に運行を始めた「TRAIN SUITE 四季島」が、海外のメディアで話題になっています。
5月11日の「Travel+Leisure」は、「日本の最新の豪華列車はお風呂があり暖炉がある。そしてそのチケットは来年まで完売」と言う記事で、「TRAIN SUITE 四季島」を紹介しました。ピアノバーがありピアニストが乗務していること、ロフトやヒノキ風呂のついたスイートルームもあると、贅沢な空間に驚愕しています。
6月19日の「テレグラフ」は、「日本のノスタルジック・モダンな豪華列車」という記事で「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」を紹介しています。クラシックな内装でありつつ、最先端の技術を駆使した展望デッキから迫力の車窓を堪能でき、食堂車ではミュシュラン・シェフの和食が楽しめると、上質な時間を過ごせることが伝えられています。
豪華寝台列車ブームは、2014年に運行を開始した日本最初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」に始まり、2016年のアイルランドの「ベルモンド グランド・ハイバーニアン」や、今年ペルーでデビューした「アンデアン・エクスプローラ」など、世界に広がっています。
日本の列車は信頼度も知名度も高いので、日本のクルーズ列車の旅は、海外のシニア層の心を掴むのではないでしょうか。
インバウンドにも、今後どんどん門戸を開いて行って欲しいです。また、クルーズ列車をお手本に、日本をゆったりと楽しむ旅のスタイルを、もっと提案していきたいところです。
ビーチに寝転んで「何もしない休暇」を過ごしたい層が、「日本にも行ってみようか」と思える提案ができると、ヨーロッパのシニア層の訪日も増えて行くように思います。
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