インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】第12回 ホテル界のカリスマが考える「民泊にはできないこと」とは

2017.07.24

清水 陽子

印刷用ページを表示する



前回のコラムでご紹介したように、日本では民泊がいよいよ解禁され、民泊先進国では、持続可能なホームシェアリングのあり方が模索されています。当然、ホテル業界にも変化の波が押し寄せています。

 

ホテル界のカリスマ動く

そんな中、デザイナーズ・ホテルの先駆者イアン・シュレーガー氏が、民泊の脅威に正面から向き合った、新しいホテルをニューヨークにオープンしました。

シュレーガー氏は、かつて宿泊者だけの場所だったロビーを一般の人々にも解放し、ホテルにコミュニティ・スペースという価値を見出したことから、ホテル界の革命児とも呼ばれる人物です。

またニューヨークの伝説のディスコ「Studio 54」の創始者としても知られています。

彼の最新の”作品”「パブリック・ホテル」はズバリ、「民泊にはできないこと」を追求したホテルです。世界で最も影響力のあるデザインメディアDezeenの記事によると、そのホテルは、2つのレストランに、ルーフトップテラスを含む3つのバーに加え、映画上映やダンスパーティーのできるマルチメディア・パフォーマンス・スペースを備えているといいます。

シュレーガー氏の考える「民泊にはできないこと」とは、大勢の人が集う社交の場を提供することです。

しかも「パブリック・ホテル」は、時代に合わない過度なサービスを省き、シンプルな贅沢を目指すことで、それを民泊と変わらない価格帯で実現しました。「アメニティーやサービスの競争は激化しているが、人々にとって本当に必要なものは何かと考え直した」とシュレーガー氏は語ります。

例えば、このホテルにはベルボーイはいません。その理由は簡単です。「みんなタイヤのついたスーツケースを持っているから」。民泊は安価で快適なベッドをどんどん供給していますが、世界一ホテルを知る男は、「ホテルは眠るだけの場所ではないのだから大丈夫」と言わんばかりに勝負に出ます。

 

新しいコンセプトのホテルは日本でも

日本でも新しいコンセプトのホテルは増えており、海外メディアでも話題になっています。

2015年にオープンした、ロボットホテル「変なホテル」と、泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」は、特に注目を集めていました。

最近では、今や営業利益の半分が海外だというMUJIのホテルが2019年に銀座にオープンすることも米コンデナスト・トラベラーなどが報じています。変化は不安も伴いますが、ホテル業界が切磋琢磨することで消費者の選択肢が広がり、旅がもっと楽しくなることを期待します!

 

最新記事