インバウンドコラム
10月1日は中国の建国記念日、国慶節です。この日から中国では1週間の連休となるので、毎年世界が「中国のゴールデンウィーク」と呼んで注目します。今年は、中秋節が重り、例年より1日長い8日間の大型連休となりました。
◆中国のゴールデンウィークに欧州のブランドがすべきこととは?
官民共に中国人観光客誘致に積極的な印象があるのがイギリスです。そのイギリスのマーケティング誌Marketing Weekに、「国慶節とその後、ブランドは中国人客にどうアプローチするべきか」という記事が掲載されました。
詳しいデータと、様々なブランドの担当者たちの声が詰まった、興味深い記事です。多くの担当者たちが声を揃えたのは、ヨーロッパのブランドはゴールデンウィーク中に、WeChatなどのソーシャルメディアプラットホームで、広告を打つべきだということです。多言語の情報を提供し、プレゼントやディスカウントを打ち出すことで効果が上がるとしています。また、ショッピングだけでなく、英国のライフスタイルや文化を同時に発信するべきだと語っています。
◆中国市場と向き合う、イギリスのブランド担当者に聞く
ロンドンで中国をターゲットにマーケティングを手がけるQuminが、最近仕掛けたWeChatでのスイス時計のキャンペーンは、初日だけでサイトに2,000ユーザーがアクセスしたそうです。WeChatキャンペーンの成功事例は、日本でも数多くあるので調べてみるのもいいかもしれません。
中国市場で大成功を収めているバッグのブランド、ケンブリッジサッチェルの担当者は、高級ブランドであれば、中国のSNS上でインフルエンサーとして活躍するKOL(key opinion leaders)を活用することで、最も効果が上がるとしています。
中国人客はイギリスの店舗を訪れると、中国の友人とWeChat上で会話し、動画撮影した商品を見せながら、どれをお土産に欲しいか尋ねるのだそうです。WeChat上でお金のやり取りもし、「100ポンド送ってくれたら買って行くよ!」という交渉をするのだとか。その時、中国人KOL達のスタイルが参考にされることも多いと言います。自分の分だけでなく、友人の分として複数購入に繋がるので、効率がいいのだそうです。
靴ブランドのグレンソンの担当者は、中国人客は、彼らの市場で通常は買えないものを好む傾向にあると語っています。中国人に比べると日本人の方が、グレンソンのような小さなニッチブランドをよく知っていて、本物であることや伝統継承にも真の興味を見せる。中国市場が日本市場のように成長するかはわからないが、面白い市場だと思っていると話します。
◆やってきた「爆買い」を超えて、仕掛ける側へ
この記事は、どのブランドも、何が中国人客を動かすかを知ることが、とにかく重要だと締めくくられています。日本は、こちらの準備もままならないままにやってきた「爆買い」に翻弄されました。次はこちらから仕掛けていく番です。欧州ブランドの担当者たちの言葉には、多くのヒントが隠されているのではないでしょうか。
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