インバウンドコラム

【徹底解説】2022年度観光庁予算、前年比46%減の222億円。前年との違いや新たな施策は?

2022.01.04

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観光庁はこのほど、2022年(令和4年)度の当初予算が決定したことを発表した。2022年度の予算は、前年比46%減の222億5300万円となった。今回の発表からは、国内旅行の新たな新規市場開拓や観光産業の変革など、前年までとは違う言葉が用いられ、観光庁の捉え方の変化なども見えてきた。ここでは前年までと違いを主軸に、主な内訳や、特に注目すべき項目などを詳しく見ていく。

(図出典:令和4年度観光庁関係予算決定概要)

 

一般財源は微減、国際観光旅客税財源は前年度の3分の1

財源別にみてみると、一般財源は前年度148億900万円から4%減の141億5800万円、国際観光旅客税財源は前年度260億円の3分の1となる80億9500万円に縮小となった。そのほかの財源として、2021年(令和3年)度経済対策関係予算から、新たなGo Toトラベル事業に1兆3238億円、Go To以外の緊急対策事業等に1203億円、東日本大震災復興予算に7億7000万円を充てる。復興予算内訳をみると、福島県への支援事業が2021年の3億円から5億円へ増加、加えて新規事業として、海辺の魅力を発信するブルーツーリズム事業に2億7000万円を確保し、合計で前年比2.5倍の7億7000万円となった。

 

交流と変革をキーワードに従来の3本柱から4本柱へ変更 

2021年9月の予算概算要求時は一般財源の3つの柱として
1.観光産業の再生と新たな旅のスタイルの普及・定着に22億2600万円
2.国内外の旅行者を惹きつける滞在コンテンツの造成に22億1500万円
3.受入環境整備やインバウンドの段階的復活に126億3000万円を

要求していたが、決定概要では

1.国内交流の回復・新たな交流市場の開拓に7億7300万円
2.観光産業の変革に23億3100万円
3.交流拡大により豊かさを実感できる地域の実現に9億1400万円
4.国際交流回復に向けた準備と質的な変革に95億1600万円

の4本柱となっており、項目の捉え方が大きく変更された。国際観光旅客税においても同様で、決定概要では3.交流拡大による地域の豊かさの実感に44億800万円、4.国際交流回復に36億8700万円とした。

今回の主要な4本柱をみると、2020年までにないキーワードとして「交流」「新市場開拓」「変革」「地域づくり」といった言葉が挙げられる。長引くコロナ禍で、事業の継続や雇用維持が危機的状況となっている観光業において、観光をレジャー産業、物見遊山的なものだけでなく、地域経済を支える交流産業として捉え直し、地域と一体となって観光業の回復を目指そうとする観光庁の意図が感じられる。

 

ポストコロナを見据え、新コンテンツが3つ予算化

2021年新たに予算が決まった項目は3つある。ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業は4億5000万円の要求に対し満額、持続可能な観光推進モデル事業は4億5000万円の要求に対し、3分の1の1億5000万円、東北復興枠でのブルーツーリズム事業は3億円の要求に対して2億7000万円が確保された。インバウンドが本格的に回復するまでにはまだまだ時間がかかるため、今は国内観光需要をしっかり発掘、促進することに重点を置く姿勢がみてとれる。

 

地域交流を重視する一方、ワーケーションやブレジャーなどの予算は縮小

1.国内交流の回復・新たな交流市場の開拓 一般財源7億7300万円

前年の5億400万円から53%増の7億7300万円となった。増加した要因は新たに今年から予算追加された、ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業の4億5000万円だ。ポストコロナの新コンテンツ支援事業では、地域交流を通じて第二のふるさと化を促進し、中長期滞在者を増やして誘客を目指すDMOや自治体、観光事業者などを支援する。

▲ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業の例

一方、コロナ禍で注目を集めたワーケーションやブレジャーなど新たな旅のスタイル促進事業については前年度の5億円から3億2500万円と縮小された。

 

宿泊業の付加価値向上に前年比5.5倍の予算

2.観光産業の変革 一般財源23億3100万円

前年の20億1400万円から16%増の23億3100万円となった。軒並み前年度より予算額が減少している中で唯一、倍増以上の予算を確保したのが宿泊業に対する付加価値向上支援の5億5000万円だ。予算要求時の7億円には届かなかったものの、前年度の1億円から5.5倍と大きく伸ばした。宿泊業を核に、地域の体験事業者や飲食店など異業種と連携しながら新たなビジネス手法を導入し、その地域に滞在する付加価値向上を目指す。既存サービスの形にとらわれず、宿泊分離による地域全体での食の魅力の向上やバックオフィスのDX化などを支援する。

 

DX推進による観光サービスの変革は必要不可欠、オンラインツアーなどを後押し

同じく観光業の変革において、特にここ数年注目が集まるDX推進事業は2021年度初めて8億円を確保したが、2022年度もほぼ同額の7億8100万円を確保。コロナ禍で新たに生まれた旅行形態の一つであるオンラインツアーなどを活用して来訪意欲の促進やリピーター化を推進するほか、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのデジタル技術を活用し、既存の文化・自然資源を新たな形で体験できる観光コンテンツの創出を目指す。また、予約や購買データを活用し、観光地全体での消費拡大につなげる。

また、ウィズコロナ時代においても観光を日本の基幹産業として再興させるには人材育成が重要と捉え、観光産業の人材確保と育成に1億2600万円、通訳ガイド制度の充実に6600万円、健全な民泊サービスの普及に1億1700万円、ユニバーサルツーリズム促進に1800万円、観光統計の整備に6億7300万円と、ほぼ前年度と同額を充てた。

 

地域全体を支える観光業の役割を重視、持続可能な観光を新規追加

3.交流拡大により豊かさを実感できる地域の実現 一般財源9億1400万円/国際観光旅客税財源44億800万円

一般財源からは今年新たに持続可能な観光推進モデル事業が1億5000万円追加されたことで、前年の7億6500万円から19%増の9億1400万円となった。広域周遊観光事業は前年と同額の7億6500万円を確保した。国際観光旅客税財源は軒並み6割減となっており、特にDMO体制整備は前年の5億4000万円から今年は100万円に縮小。ほかにもスノーリゾート事業や国立公園整備も大幅に減額された。

 

インバウンド回復に向け、まずはMICE誘致に予算増

4.国際交流回復に向けた準備と・質的な変革 一般財源95億1600万円/国際観光旅客税財源36億8700万円

一般財源は前年の109億6300万円から13%減の95億となった。海外からの観光客が消滅した影響で、国際観光旅客税財源をもとにした、入出国円滑化に向けた整備や多言語対応などのインバウンド客受入に直結する予算は、軒並み100万円前後しか割り振りがなく、前年度比で大きく減額となった。訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業も前年度33億円から20%減の27億600万円となったが、観光地や宿泊施設における感染症対策やキャッシュレス決済の導入なども支援対象となっているので、国内客に対しても有効な対策費として活用が見込める。

▲訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業の例

ほかにも訪日外国人旅行者に向けては、戦略的な訪日プロモーションが前年比11%減の65億4000万円となったが、MICE誘致促進には前年比32%増の2億5100万円が充てられた。

令和4年度(2022年度)観光庁関係予算決定概要詳細はこちら

 

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